unsteady diary
riko



 ロング・バケーション

「躁鬱」って。
本を読んでも、ネット検索しても、やっぱりよくわからない。
わかるのはただ、自分のよく知っている、元気で明るい“彼女”が、そうなってしまったということだけ。


以前数ヶ月居候した、とある支社の1歳年上の女性社員。
かなり面白くて明るくて、とっても好きだった。
少し脆いところのある人だなあと思うこともあったけれども、合コンを繰り返したりして、パワフルで素敵な人だった。
けっこう仲が良かったと思う。
それが最近、電話で色々お願いごとをしても、やたら取り込んでいるとか、電話を取り次いでもらえなかったり、何日も折り返しの連絡が来ないとか、何かがずれている気がした。
それでも深く考え込まず、笑いながら「疲れてるんじゃない?」なんて言ってみたりしてた。
そのとき、電話越しの彼女がどんな風だったかなんて、想像も出来ずに。


それからしばらくして、ひっそりと彼女は長いお休みに入った。
健康管理室から「勤務不可能」という診断が下ったわけ。


その支社は今年から体制が替わり、新しいボスは彼女に対して「おまえ嫌い」と言ってはばからなかった。
確かに彼女は賑やかで、馬鹿がつくほど正直で、多少トラブルを起こしたりもしたようだけれども。
そんなところも愛されるキャラクターだったはずなのに。
支社長命令で、毎日終電まで残って慣れない業務に追われていたらしい。


彼女ひとりいなくなっても、会社は痛くも痒くもない。
またひとり「傷病休暇中」の社員が増えたというだけ。
彼女が休暇に入ってから何ヶ月も未処理の案件を溜め込んでいたのが発覚したために、残された事務社員がそれをかぶることになって。
彼女たちもまた、ストレス耐性の限界を試される。
その中で生き残らなければ、第二の彼女になるだけだから。


以前一緒にお茶をした同期の女の子も、心を病んで以来ずっと「傷病休暇」に入っている。会社に復帰することはないかもしれない。


ごく普通に隣にいたひと。
明るく笑いあったひと。
自分と、彼女たちと、何が違うというのか。
ただ少し、ほんの少し何かが違っただけ。
薄氷を踏んで歩いている。
あと一歩、また一歩。
割れるだろう「重さ」まで、あとどれだけの余裕があるのだろう。



2005年11月12日(土)
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