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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2006年06月26日(月) --

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『かもめ食堂』

まず、サチエがフィンランドへ行く。 そこへミドリがあらわれる。 やがて、マサコが加わる。 そんな順番で、ヘルシンキの街に、 日本人による「かもめ食堂」ができた。

そこはサチエが始めたサチエの店なのだけど、 他の二人にとっても、居場所になった。 そして、フィンの人たちにも、少しずつ じわじわと、かもめ食堂がなじんでいく。

書き下ろしで同名映画の原作。 映画はまだ観ていないが、 こんな風合いの映画ができたことは、単純にうれしい。 願わくば、日本を舞台にして、こんな風合いの映画を ぱらぱらとつくってほしい。

3人それぞれがフィンランドへ脱出するまでの人生模様も、 現地での生活にひけを取らない面白さだった。 面白いというのは言い過ぎかもしれないが、 ガンガン仕事をしたとか、家族が増えたとかいうアップダウンのない 地図をもっている女性たちの、「どうすれば」という ぼんやりとした進路に共感する人は多いだろう。

きまじめさというのは、何なのだろうと思う。 モラル的にはまったく悪くないし、そこに自分の世界があれば けっこうやっていけるものだけれど、往々にして孤独が伴侶となる きまじめな生き方。

そういう生き方があまり素敵に見えないように作られた国、 そういう場所にはもういたくない、と思わされる国から どこかへ飛んで行っても、たとえ人生の半分を見ていたとしても、 もう許されるはずなのだ。

もう、ここまでやったんだから、好きにしよう。 人目を気にしたり、これまでのことにこだわったりせず。 残りの人生は、きまじめすぎない生き方をしても 自分自身を許せるのではないだろうか。 その感覚は、サチエたちの年齢を孤独に迎えずしては わからないものだと思う。

誰といても孤独、という嘆きは、 きまじめな生き方とは相容れない、と思っている。 孤独はすでに長い付き合いの友なのだから、 一緒にいて孤独の邪魔になるような相手を選ぶはずもない。 (マーズ)


『かもめ食堂』著者:群ようこ / 絵:牧野伊三夫 / 出版社:幻冬舎2006

2003年06月26日(木) 「TEA with MILK」
2002年06月26日(水) 『イギリスとアイルランドの昔話』
2001年06月26日(火) ☆ネットの中身になる。

お天気猫や

-- 2006年06月15日(木) --

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『わたしを愛した狼』

猫やのサポーターさんからのおすすめ。
原題は『Bitten』。 そう、これは人狼に噛まれて狼女になってしまった美女エレナがヒロインの、狼系ロマンス小説。

タイトルの『わたしを愛した狼』ことクレイトン(クレイ)とエレナ、そして彼らが属するジェレミー率いる人狼の「群れ」が、敵対する「はぐれ狼」と決死の戦いを生き抜くストーリー。

エレナの一人称で語られるハードな情況はかなりロマンティック。 三角関係のジレンマや、父と娘のすれ違いなど、さまざまな要素で飽きさせない。 もちろん、彼らが人狼である以上、ホラーやバイオレンスもしっかり付随する。
「狩り」もまた。

この世界には、狼女はエレナしかいない、という設定もなかなかすごい。 すべてにおいて驚異的なほど徹底し、ナイーブなクレイの言動には胸を打たれてしまう。 人狼たちは皆それぞれに才能豊かで、クレイは人類学者、エレナはジャーナリストとして人間界で生きることもできるのだ。

一度は群れと決別し、人間界で恋人と暮らしていたエレナが、 群れへ回帰する過程には、心ゆさぶられる。 結局、理屈ではないのだ。人は自分に似た本質を相手のなかに認めた瞬間、 無意識のうちに感情の橋をかけてしまう。 それがどんなに手強いか、気付くのはずっと後になってからだ。

わたしはふたたび花火を見上げ、目を閉じて願い事をした。
自分の求めているものがわかりますように。(引用)

ほんとうに、それさえわかれば恐いものはない。 あとは求めているものを手に入れるか、あきらめるかなのだから。

ところで、現代人が無神経に付けているいろんな香りのミックスされた匂いは、 エレベーターで一緒になったりしようものなら、さしもの人狼たちも、 しばらく鼻が使い物にならなくなるそうだ(笑)。

本書は作家のデビュー作で、続編も書かれている。 アンジェリーナ・ジョリー主演で映画化されるというから、それも楽しみ。 そこにはきっと、ジェレミーの手になるロマンティック・ホラーな名画も登場するだろう。(マーズ)


『わたしを愛した狼』(上・下)著者:ケリー・アームストロング / 訳:山口 緑 / 出版社:扶桑社ミステリー2006

2004年06月15日(火) 『スコットランドの早春』
2001年06月15日(金) ☆『小説家を見つけたら』

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