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■ ほんとうのそら。
すり鉢上の盆地のまん中に、不自然に立つ信夫山。家々は、その周辺から外へいくほどまばらになり、北に蔵王、東に霊山、南に安達太良、西に吾妻山。 東南から市の中心を望む私の家は、盆地の淵部分にあたる高台にあり、吾妻山をちょうど真正面に見る。 春。雪解けの白兎を残す吾妻小富士のうえには、うすく白く清浄な青空。 夏。雄々しい屏風の形をした尾根に、入道雲がたつ。 秋。市を抱き込むようにつづく稜線、すべて赤。深い青空が茜色になる頃、とんぼが降りてくる。 冬。すべて白にくるまれた山の上の空は凍てついて、ただただ無垢。 見た目はなにもかわらない。おそらく以前と今と写真を並べられても区別はつかない。 でも、このすり鉢の形をした町には、今、確かに重くじっとりとしたよどみが横たわっている。 日々、伝えられる測定量と南の産地がでかでかと張り出されたスーパーの表示。増幅していく不安の一方で感じる、雪の道をたんたんと歩くときのような諦め。 離れたくても、離れられない。 忘れたくても、忘れられない。 私のふるさとは、ほんとうのそらは、「福島」だから。
2012年03月09日(金)
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