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■ 桜の樹の下には。
たとえば、 横断歩道の白黒の白の部分だけ踏まないと死ぬ、 と考える。
あの遊びはなんなのでしょう。なんで、そんなことを始めたのかなんて、今となっては想像も出来ません。でも、多くの人が考え付いて、それと似たようなことを体験している。もしかしたら、人間の成長プログラムかなんかに入りこんでいるのかしら。自分に恐怖を与えて、それを避けて、有頂天。何が楽しかったんでしょう。しかも、思いこむうちにそれが真理のように思えてきます。
しかし、不思議なことがおこります。 何の変哲もないあの横断歩道の白の部分が、白く白く、とても白く、神秘的なものなって、浮き出してくるのです。あの時は、気づかなかったけれど、あの横断歩道ほど、真実に近い横断歩道はなかった。
梶井基次郎の「桜の樹の下には」を読みました。文庫本にして4P。短い短いお話です。家族もなく、女もなく、友人もなく、「俺」と「お前」と「桜」がいるだけのお話です。4Pで完成される小説を私は今まで読んだことがありませんでした。しかし、この4Pの中には、濃密な空気と広くてとても狭い空間、そして、桜の樹の下には死体が埋まっているという発想から生まれた、とてつもなく神々しい桜がありました。
私は、こんなにきれいな桜を見たことがないような気がします。
2002年05月31日(金)
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