恋のさじかげん
れのん



 痛み

尋常でない雰囲気を読み取って、同級生の彼が電話をよこした。
「どうした?元気してる?」
一瞬、すがりたい、と思ってしまった。
でも、私にはその腕にすがる権利はないと思った。
誰かを忘れるために、別れの辛さをごまかすために、
誰かを頼ってはいけないのだと、そう思った。
「なんでもないよー。ちょっとね、情緒不安定なの。」
「今から会う?出てこれる?それとも、こっちから行こうか?」
「・・・大丈夫、、、。こんなのいつものことだから。」
「あんまり無理すんな。できることがあったら言ってくれ。」
彼はそういって電話を切った。
根掘り葉掘り聞こうとしないところが、好きだ。
今、色々なことを話したら、私が壊れてしまうと思った。
私は案外、強くなかった。
私の辛い時代、不遇の時代を知っている、彼と別れたこと、
その別れが確実なものとなって、
合鍵の話にまで及んでしまって、
私はもう、その現実の重さに耐え切れなくなっていた。
いつかは、分かれる人だった。
いつかは、家庭に帰る人だった。
そう何度思い返しても、やっぱり辛かった。
一人で耐え切れる痛みではないって思った。
でも、耐え切れない痛みなんてありえないと励ました。


2002年07月27日(土)
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