恋のさじかげん
れのん



 内定

来年度からの仕事の内定をもらった。
私は、関東へ就職する。移り住む。
何となく、分かっていたことであり、
何となく、覚悟をしなければならなかったこと。
私はようやく、彼と別れる絶好の機会と、理由を得たことになる。
これで、私は会えない日曜のこと、日常に潜む家族の匂いに
おびえることが無くなる。
罪の意識から、逃れられる。
けど、彼が前に言った、「ついていく」と言った一言を、
真に受けてしまっていた自分を、情けなく思ったり、
ついてきてなんて欲しくないって、思ってみたり。
この内定が、二人の人生を分かつことになる。
そして、それは確実。
仕事をしたいと望んだのは私。
誰の代わりでもない、たったひとりの「私」になりたいっておもった。
彼の妻になりたいとは望まなかった私。
それは、略奪であり、彼の家庭の崩壊を意味するから。
誰かに恨まれたり、後ろ指刺されるような生き方はしたくない。
それは、きれい事ではなく、本当にそう思っていること。
だから、今回の内定は神様がくださった、最良のプレゼントなのだ。
唯一無二の自分を手に入れ、後ろめたさからも解放される、
彼との別れも、距離と忙しさのせいにしてしまえる。
これほどのよい条件なんて無い。
なのに、少しだけ胸が空虚で、風がわたっていくのを感じる。
大丈夫、私は強いから。
大丈夫、一人きりの日曜日は、きっと
すてきな時間になるから。
すてきな一人きりになるから。


2001年11月06日(火)
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