恋のさじかげん
れのん



 「食べてしまいたい、それぐらい、好き。」

彼は私の胸に顔を埋めながら、つぶやく。
いっそのこと、食べられてしまいたいって思った。
そうしたら、もう、離れている時間の切なさも、
不倫を犯しているという罪の意識もなくなる。
彼の躰の一部になれたらなら、
ずっと彼の躰の中で生きていられるのなら、
きっと、それが一番幸せだと思った。。。
どうして二人は別々に生まれてしまったのだろうと思う。
気持ちで求めあっても、
お互いを大切に思っても、
一緒に居たいって、二人で思っても、
その引力に歯止めを効かさないと、みんなが不幸になってしまう、
そんな風に生まれついてしまうなんて。
気持ちに線を引くことは、断腸の思い。
いずれ別れるんだって思いながら、抱きしめられる時の腕の確かさは、
残酷なものでしかない。
どうしてこんなにしっくりと、こんなに安心させてくれるのに、
別れることが前提で、そのことを、お互い否定し切れないんだろう。
どんな可能性があって、どんな未来があると言うのだろう、、、。
でも、私は彼に会えたことを喜びに変えたいって思う。
出会いは別れの始まりかもしれない。
不倫はどんな理由を付けても、正しいこととは言えないのかもしれない。
それでも、私は、この出会いを喜びに変えたい。
彼に出会えて、私は恋をして、その恋は辛くて、切なくて、
時に別れを決意するほど、痛みを伴ったけれど、
出会えなかったよりも、幸せで、濃い時間だったと思うから。


2001年07月11日(水)
初日 最新 目次 MAIL


My追加