unsteady diary
riko



 丸の内で会いましょう

世間では休日と言われる日まで仕事していたりすると、何がなにやら判らなくなってくる。
やらされているのではなく、能動的に楽しまないと。
と言われるけれども、ちっとも楽しめない私が悪いのか。

そんなわけで土曜日も朝から都内で研修という名の仕事だった。
丸の内が近かったので、陽もとっぷりと暮れた頃、ようやく開放されて新丸ビルをふらついてみる。
人、また人。何をするにも列をなさねばならない。
ここは大人のディズニーランドかと思うほど。

喉が乾いたので、ゴディバでショコリキサーを注文。
お値段630円也。
思ったより濃くはなく、クラッシュされたチョコが時々喉に触れて、なんとも爽快。たっぷりとのっていた生クリームもスタバに比べるとやわらかいミルクの味がして美味しかった。
記念に携帯で写真に収めてみたり。
すっかりおのぼりさんな気分で、ひとり悦に入る。


丸ビルに比べてどこでも買えるような画一的高級ブランド店は少なく、センスのよいセレクトショップが揃っている印象を受けた。
ただ見て歩くだけでも、目に楽しい趣味のよさ。
日頃めったに気に入るものがないアイテムでも、素敵だなと思ったものが幾つかあった。
たとえば日傘。思わず「これは日傘のお値段ですか?」と問いただしたくなる程に高価なので買えませんけど。もともと靴のお店だけれど、アクセサリーも日傘もとても素敵だった。

あとはカンペールの靴。最寄の高島屋にも店舗があるが、商品が少なくて全く興味の沸かなかったブランド。

先日首を痛めて、その1週間後には何度目かの腰を痛め、真面目に整形外科に通って電気をかけていたのだけれども、さすがにパンプスを履く気がしなくて、クラークスのバレーシューズっぽいスニーカーを履いて仕事してるのだ。(これでも接客もする営業事務社員…)

何も履いていないみたいな軽やかさに慣れてしまうと、久しぶりに履いたパンプスが痛くて辛くてしょうがない。そんな事情もあって、履きやすいというカンペールに釘付け。
でも、どうしてもカジュアルな靴って似合わないんだ。
好きなものと似合うものは違う。
本当にそうだ。
それに。パンプスなら許せる値段が、カンペールには許せないというか。やっぱり歩きやすい靴より、自分を苦しめるパンプスがよいのか?
そうなの?>自分。


好きなものと似合うもの、で思い出した。

そのあと、好きなアクセサリー作家さんが期間限定でお店を出しているというので、池袋まで足を伸ばした。
どうでもいいけど、都内ってびっくりするほど近く繋がってる。
丸の内と池袋がたったの15分程度なんだね。
うちから最寄駅までより近い。
フットワークも軽くなろうというもの。

で、見に行ったら、いかにもアート系のお兄さんが店番をしていて、ちらりちらりとこちらを伺ってくる。
そりゃあそうだろうな。
「装苑」とか見そうもない格好をしている私が、グロテスクなほど美しい蝶をモチーフにした、いかにもなアクセサリーに見入ってたりするんだから。

あ、お目当ては蝶じゃなく、レースとかアンティークパーツを上手く使ってデコラティブなアクセサリーを作る人の方だったのだけれど、昆虫モチーフも見るだけなら大好きな世界観。
蝶が群がる様子をシルバーで繊細に表現したリングだとか。
そこにはなかったけれど、ネットか雑誌だったかで、毛虫や蜂をモチーフにしたものを見たこともある。
トルクアータ、というアクセサリーブランド。
りょうかさんが好きそう?


そういえば、「装苑」は好きな雑誌の一つだ。
毎号買うわけじゃないけど、特集が面白そうだったら買うこともある。「マリーアントワネット」特集しかり、「ティアラ」特集しかり。「アールヌーボー」とか「アクセサリー」特集だったら間違いなく買う。
つけられなくても、着られなくても、アート作品として見ることが楽しい。

天然石や金属を叩いて伸ばしたり加工するのもいいけれど、紙や樹脂を使うのも好き。
しばらく前の装苑で、伸びる特殊な紙素材を使って服やコサージュを作る特集があって、それも面白かった。


そうやって見つけた幾つかのブランドは、今も大好きで。
季節のたびチェックしてしまうTomoko Furusawaの少女めいたアクセサリーとか。
レースやアンティークパーツを組み合わせたレトロでカッコいいCORNUとか。この間なくしてしまったネックレスのブランド、recipeとか。

「キリストの骸」っていう意味のコルプス・クリスティというブランドも、初めて装苑でアトリエを見て、好きになった。
スカルと十字架と花、そういうモチーフの組み合わせ方が、毒があってあどけなくて、祈りが込められている気がしてたまらない。
よく「異素材を組み合わせたものが好きだよね」と言われるのだけれど。
本来合わされるべきじゃない素材たちを強引に引き合わせるところに、惹かれる。
そういうひねくれた作り手が好きだ、と思う。


もちろん直球勝負で綺麗なものも好きですが。


子供の頃にきらきらした金平糖を見ていて飽きなかった、それと同じく、なんとなく持っているだけで嬉しいアイテムなんだと思う。

自分で作れたらもっと楽しいんだろうけれど。
真似することは出来ても、創造することはできない。
そういう自分をよく知っているから、あえて手を出そうとは思わない。
でもちょっとだけ、樹脂が気になる。
思いっきり自分好みのドライフラワーとかレースとか英字新聞とかに樹脂加工してみたい。
でも作ったとして、似合わないものをどこにつけていくんだか。



そういえば、地下鉄の中吊りポスターでちょっと素敵な詩を見かけた。
思わず携帯のメモに入力。
携帯で短いメールをするにも苦労する自分がそんなことをしてしまったくらい、不思議に胸に沁みた。


「ブックエンド」

抑揚のない毎日を路線沿いに歩けば
中野駅で襲われるまぶしさ
前が見えない

誰か――
倒れないように
ブックエンドを立ててほしい

もたれるかもしれない
踏み台にするかもしれない
何かをぶつけるかもしれない

そんなふうにしか
明日にわけ入れないけれど
日常と言う本の列に僕を
織り込んでくれないか

(大島 忠幸さん 22歳)

たぶん本の中で出会ったらそこまで惹かれなかっただろう
日常の中で ふと目をあげたらそこにあった
そういう言葉だったから しみこんでいった

あとで調べたら、東京メトロが「車内に癒しの空間を…」ということで詩を募集してポスターにしているらしい。
ふと目を上げたらそこに詩がある。
いいな、そういうのって。


2007年06月03日(日)
初日 最新 目次 MAIL HOME


My追加