unsteady diary
riko



 ヨイトマケの歌

美輪明宏さんの「ヨイトマケの歌」をテレビで聴いた。
すごい迫力で、ひとり芝居のようだった。
ブラウン管を通してでさえも、コトバにこめられている感情に飲み込まれそうになる、絶唱だった。

「ヨイトマケの歌」は、部落解放問題なんかで揺れていた当時、
どうやら放送禁止になったことがあるらしい。
労働者の歌、さらには差別の歌、と言えないことはないから。
でも歌全体を聴けば、そんな風には思えないのだけれど、
でも一方で、それは自分にとって他人ごとであり、甘ちゃんだからなのかも、と思ったりもする。

上野千鶴子の論文に、「わたしは女性とは一度も性関係を持ったことはない。ええ、わたしの体はきれいです」という美輪さんの言葉が引用されていて、それを読んだときは正直むっとした。
文学で人間(男)の堕落を描こうとしたとき、かなりの確率で、そこには“椿姫”がいるような気がする。色欲に溺れて、男としての使命を忘れ堕落するという筋書き。そうした女性嫌悪ゆえに、三島のように同性愛を美化する方向性も、私には完全に認められるものではなかった。

しかし、そういう部分を嫌悪して尚、
美輪さんの言葉や歌には力があるように思える。
「ヨイトマケの歌」も、今ならきっと立身出世は流行らない、
親も子供のためではなく自分のために生きるべきだ、という批判を受けるかもしれない。
ただ、確かに家族のために生きることが美学とされていた時代があったのだし、「豊かさとは何か」なんてことが語られる以前は、ただ貧しさと豊かさという単純な図式があって、誰もが高みを目指していたのだろう。

ただ過去の遺物と排除はできない、考えさせられる歌だった。


2002年02月08日(金)
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