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夢の図書館新館

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-- 2006年02月10日(金) --

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『ひと月の夏』その2

若さを振り返る気分ほど、老いるために必要なものがあるだろうか。

若さゆえか、その時の空気ゆえか、一歩踏み出すことのなかった 「恋」ですらも、長い時が過ぎてみれば、踏み出して消えた恋に 劣るものではないのだろう。

戦場から解放された主人公が、ヨークシャーの小さな村、オクスゴドビーに 身を寄せる夏の数十日。

そこで20代の私が味わったのは、村人たちの日常にまぎれこむ ことで癒される時間と、消えないものと、後では二度と巡ってこない出会い。

夏休みの物語をなぜか真冬に読んでしまったのだけれど、 読後の切なさは、どこかよき時代の日本でもあった。

どんなに時がたっても、記憶のなかのオクスゴドビーや村の人々は 変わることをしない。それだけが確かなことなのだろう。

甘さよりもほろ苦さが、胸にながくとどまる。

何をしたかではなく、何をしなかったかを、 ずっと人は思い続けるのだから。

そして、そういう時、胸をしめつけられるような思いをする者がきっといるのだ ――かけがえのない時は過去となり、自分たちはそこにいないことを思って。(引用)

(マーズ)

『ひと月の夏』


『ひと月の夏』その2 著者:J・L・カー / 訳:小野寺 健 / 出版社:白水Uブックス1993

2005年02月10日(木) 『チャングム』
2004年02月10日(火) ☆1800年代の後半。
2003年02月10日(月) 『ひかりの国のタッシンダ』
2001年02月10日(土) 『夏草の記憶』

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