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若さを振り返る気分ほど、老いるために必要なものがあるだろうか。
若さゆえか、その時の空気ゆえか、一歩踏み出すことのなかった 「恋」ですらも、長い時が過ぎてみれば、踏み出して消えた恋に 劣るものではないのだろう。
戦場から解放された主人公が、ヨークシャーの小さな村、オクスゴドビーに 身を寄せる夏の数十日。
そこで20代の私が味わったのは、村人たちの日常にまぎれこむ ことで癒される時間と、消えないものと、後では二度と巡ってこない出会い。
夏休みの物語をなぜか真冬に読んでしまったのだけれど、 読後の切なさは、どこかよき時代の日本でもあった。
どんなに時がたっても、記憶のなかのオクスゴドビーや村の人々は 変わることをしない。それだけが確かなことなのだろう。
甘さよりもほろ苦さが、胸にながくとどまる。
何をしたかではなく、何をしなかったかを、 ずっと人は思い続けるのだから。
そして、そういう時、胸をしめつけられるような思いをする者がきっといるのだ ――かけがえのない時は過去となり、自分たちはそこにいないことを思って。(引用)
(マーズ)
『ひと月の夏』その2 著者:J・L・カー / 訳:小野寺 健 / 出版社:白水Uブックス1993
2005年02月10日(木) 『チャングム』
2004年02月10日(火) ☆1800年代の後半。
2003年02月10日(月) 『ひかりの国のタッシンダ』
2001年02月10日(土) 『夏草の記憶』
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