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私の周辺に、本物のジャーナリストはいない。 しかし、内側には、ニューヨークで孤高に暮らす一人の ジャーナリストが生きている。
20代で友人(シィアル)にすすめられて読んだ当時、 なかなか千葉流の時間管理・仕事術を実践するには いたらなかった。ある意味、とてもシビアで厳しい生き方に見えたものだ。
ただ、そのエッセンスだけを少し自分の生活に写し取って、 はたから見ればどこにもその影すらないかもしれないが、 今に至っているつもりである。
そのころは人に雇われていたから、20代後半でフリーになったとき、 もっときちんと読んでおくべきだったろうか。 確かそのころ、シィアルが『ニュー・ウーマン』を プレゼントしてくれたのだが、他の本はしばらく読み返していなかった。
本書が書かれてから、20年。
これは私たちにとってかなり長い時間である。 そのとおり、何と私たちの社会環境は変わったことだろう。 私自身の仕事環境も変わった。 そこにはもちろん、インターネットが関わっている。
今では私もジャーナリストでこそないものの、フリーで食べてゆく者の ひとりとして、もしどこかで出会えば話ができるかもしれないような相手として、 あえて言えば自分の身に置き換えながら、千葉敦子を読むことができる。 とても不思議な感覚だ。 かつては、そんな日が来ようとは想像にも余ったというのに。
本書の執筆は1985-86年頃。彼女がニューヨークに(猫とともに!)移住してからなので、 40歳を過ぎてから。再発する癌との闘いをも作品として世に問い続け、 1987年、46歳で他界した。
しかしこの20年、彼女の本を読んでからこれまでの、その間の隔たりの無さにしばし呆然としてしまう。 ここに書かれていることのほとんどは、今現在も十分に通用する。
コンピュータやインターネット、膨大な情報データベースを 日本はアメリカに20年近く遅れて実用化したのだった。 SOHOと呼ばれている(本書にはその名前は出てこない)ワークスタイルが 当時すでに定着しかけていたことも、再認識した。 まるで未来を予報し、ニューヨークから日本の未来の読者へ、 彼女は訴えているかのようだ。
内容は簡単にしか書かないが、一日をいくつかの時間帯に分け、 そのなかでどのような仕事や生活の割り振りをしながら NYで生活しているか、という構成になっている。
改めて読むと、自分も同じようにしていることもあれば、 違った方法をとっているところもあったり。 アメリカ礼賛をするわけではないが、社会の基盤となるものについて 考えずには読めない一冊である。 仕事柄共通する悩みもあって、時折口許がゆるんでしまうと同時に、 これから自分にできることは何か、思わざるを得ない。
時間やお金や意に添わない人の奴隷になってはいけない、という メッセージは、彼女がそれをたゆみなく実践していたからこそ、 強く輝いているのだ。 (マーズ)
『ニューヨークの24時間』著者:千葉敦子 / 出版社:文春文庫1990
2004年02月18日(水) 『ギリシア 風の島のカテリーナ』(世界の子どもたち14)
2003年02月18日(火) 『幸せなフランス雑貨』
2002年02月18日(月) 『ふしぎをのせたアリエル号』
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管理者:お天気猫や
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