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夢の図書館新館

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-- 2006年01月19日(木) --

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☆ヴィクトリアン逍遙。(その3)

『お茶においでになった女王さま』は、 1901年、ヴィクトリア女王が逝去したところから始まる。

1月22日、冬のさなかのその日を境に、新しい時代が、 ほんとうに久しぶりに始まったのだ。 国中が喪に服し、やがてエドワード7世とデンマークのアレクサンドラ王女が跡を継ぐ。

即位後マンチェスターを訪問した国王夫妻は、 主人公の一家をはじめ、街中を興奮に沸き立たせる。

そしてなんとアレクサンドラ女王は、 「私」の家へ、お茶に招かれてやってくる! この場面が本書のタイトルのゆえんで、いくら上流階級の家とはいえ、 「国民と近い」と言われるデンマーク王室のオープンな雰囲気をも伝えているように思われる。

メアリ叔母さんに、国王陛下の好きなヨークシャープディングの作り方を教わって 帰ってゆく女王様。 残念ながら「私」は、午後のお茶の後眠ってしまって、 女王様には会えなかったけれど。

「私」たちの日常は、叔母さんたちが婦人参政権運動に参加したり、 流行の髪型を試したり、移動遊園地へ行ったり。生活を彩るイベントの様子が 街の風景とともにていねいに描かれる。

男の人たちは、老いも若きも自動車に熱をあげ始める、 そんな時代だ。

随所に出てくる「ミスカーター」は、流行に敏感なベストドレッサー。 未婚のお嬢様だが、主人公の女の子にとっては親類のような存在らしく、 よく家に出入りしていて、ピンクの服がトレードマーク。 この若い女性のお茶目な雰囲気が、全体の隠し味となっている。

そして、やがて時は移り、最後のページでは、 アレクサンドラ女王の息子が新しい国王、ジョージ5世に即位したと告げられている。 皆に愛されたアレクサンドラ女王への追慕の念とともに、「私」は記している。

そういえば、 かの名探偵シャーロック・ホームズが活躍したロンドンも、 すっぽりとヴィクトリア朝の輝きと霧におおわれている。 ベーカーストリートにあるホームズ博物館のインテリアは、 思い起こせば確かにヴィクトリアンだった。(マーズ)


『お茶においでになった女王さま』(絵本)著者(文・絵):ヘレン・ブラッドレイ / 訳:暮らしの手帖翻訳グループ / 出版社:暮らしの手帖社1984

2005年01月19日(水) 『イルカの家』(その1)
2004年01月19日(月) 『死体が多すぎる』その1
2001年01月19日(金) 『ガラスの城』

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