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最期の源平の戦が終わり、捕虜が都を引き回されます。
平家の家長となった宗盛は『平家』では全くの無能者として情けなく描かれていますが、平家が滅びたのは別にこの人のせいではないですよね。人格者の兄、優秀な武人の弟二人に挟まれた損な役です。
他の武将達のように入水し損なったのは、碇とか鎧とか、オモリをちゃんと準備しておかなかったから。
可愛い息子を残して死ねなかったというのもあって、リーダーとしては不適格でも大層優しいパパではあったのです。八歳と十七歳の息子ともども斬首。
一の谷で捕虜になった重衡は南都を焼き払った罪があるので奈良の僧兵に引き渡されて斬首。この人を悼んで奥さんの輔子はもちろん、知り合いの美女達がぞろぞろ尼になったという。
「此一門にあらざらむ人は、皆人非人なるべし」と抜かした、時子の弟・時忠は能登国に流罪。清盛と血はつながっていないから命は助けられたのでしょうか。
一方、宗盛達を護送してきた義経は、頼朝に疑われて鎌倉に入れて貰えません。
義経に遺恨のある梶原景時の讒言、頼朝に向って、義経に謀反心ありと吹き込んだのです。
ここで義経が涙ながらに無情な兄上に訴える手紙が有名な「腰越状」。
けれど京都に帰った義経に刺客が放たれます。「堀川夜討」。
ついに兄弟は全面決裂、都を落ち、西国に逃れようとして失敗した義経のその後は『平家』では北陸から奥州に行った、と簡単に終ってます。非業の最期については語られていません。
『平家物語』は平家の物語ですから。物足りない義経ファンは『義経記』のほうへどうぞ。
謎の無計画親爺・行家おじさんは義経についたので、頼朝への賞金首になりました。『平家』では最期はなかなか豪快に戦って討たれます。
都では北条時政(北条政子の父)主導の平家狩りが始まります。懸賞金に目のくらんだ者達が、幼い子供達を平家縁りの者と称して処刑させる。
本物の清盛の直系、維盛の息子・六代が捕われるのですが、この子がなにしろ都に聞こえた美男美女の子供ですから、人間とも思えない程美しい。時政も死なせたくなくて処刑を引き延ばし、あわやというところで、例の、髑髏坊主・文覚上人が頼朝の許可を得て弟子に引き受けます。文覚に逆らっては神仏の加護はないぞ、等と頼朝を脅迫したらしい。
ところが、文覚は後鳥羽天皇を批判して、頼朝の死後謀反の罪で八十過ぎで隠岐に流されます。
後鳥羽天皇と言えば、承久の乱で隠岐に流されましたよね。文覚の呪いなんですって。
それはさておき。
「さる人の子なり、さる人の弟子なり」
と、このとんでもない師匠のせいで静かに修行していた六代も斬られてしまいます。
それよりしてこそ、平家の子孫はながくたえにけれ。
(ナルシア)
『平家物語(一)〜(四)』 校注:梶原正昭・山下宏明 / 岩波文庫
2001年11月30日(金) 『クリスマス人形のねがい』
2000年11月30日(木) 『裏庭』
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管理者:お天気猫や
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