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翌日の戦で四国を平定した義経軍は周防に渡ります。
熊野、伊予の水軍が味方して、船戦の出来なかった源氏もこれで大丈夫。
決戦前にまた義経と景時が大喧嘩して、後の遺恨を残します。
さて。いくさは今日をかぎる、と颯爽と平家を指揮するは清盛の四男・新中納言知盛卿。
開戦時、源氏は潮に押し戻され、平家は潮に乗る有利なポジション。
当初は平家が有利に戦を進めていたのですが、やがて平家方から裏切りが続出。
戦に利なく、平家の世はこれで終わり、と見てとった知盛は帝の船に渡って
はいたり、のごうたり、塵ひろひ、手づから掃除せられけり。
この場面、好きなんですよ。最期を悟り、落ち着き払ってせっせと舟をおそうじする新中納言。
怯える女官達には、ダークなジョークを言って覚悟を促す。
その様子を見て二位殿も心を決め、幼い主上を抱き上げ舷に歩み出ます。
「尼ぜ、われをばいづちへ具してゆかむとするぞ」
「極楽浄土とて、めでたき処へ具しまゐらせさぶらふぞ」
二人に続き、次々平家の人々が水に飛び込みます。
最後まで大暴れするのは能登守教経、
清盛の甥で平家一の猛将、ものすごく強くて『平家』では嗣信を射たのもこの人。
もう戦の趨勢は決まった事を知る知盛は、暴れまくる従兄弟の教経に「もうあんまり殺すなよ、たいした相手じゃないだろ」と伝言します。それを教経は、「おお、つまり大物を狙えという事だな!」と解釈して源氏の指揮官・義経に勝負を挑む。
ドラマでは出ていませんでしたが、知盛の配役が阿部寛なのを見て、壇の浦ではきっと知盛がこの勇者・教経の役を兼ねるからに違いない、‥‥と、思った通り。
義経の前に立ちはだかり、八双飛びで逃げられる有名な場面の相手は『平家』では教経なのです。
その教経も壮絶な最期を遂げます。
最後に「見るべき程の事は見つ」という至言を残し、ついに総司令官・知盛が入水。
壮絶を極めた源平の合戦はここに決したのです。
海面を覆うのは、敗れた平家の赤旗。
みぎはによするしら浪も、うすぐれないにぞなりにける。
主もなきむなしき舟は、塩にひかれ、風に従ッて、
いづくをさすともなくゆられゆくこそ悲しけれ。
(ナルシア)
『平家物語(一)〜(四)』 校注:梶原正昭・山下宏明 / 岩波文庫
2001年11月29日(木) 『青蛙堂鬼談』
2000年11月29日(水) ☆ Web書店
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管理者:お天気猫や
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