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ゴッデンの「四つの人形のお話」シリーズその第2作。
うれしいことに、古書店で¥105にて状態の良いのを入手。 原題は『The Fairy Doll』。 いつも失敗ばかりしている四人きょうだいの末っ子、 外見も他の子とはちがう、いわゆる「みそっかす」のエリザベスが、 クリスマスツリーの飾りについている妖精の人形に助けられ、 少しずつグラウンディング(という感じなのだ)してゆくお話。
地に足がつく、というのは、世の中になじむということなんだろう。 上の兄や姉三人は、もうとっくに世渡りをおぼえている。 それなのに、エリザベスだけは、何をやってもつまずいてばかり。 物によらず、人間関係によらず、大事にしようとしたものさえ、壊してしまう。
けれど、導いてくれる人形のことだけは、大事にできた。 そのことが、きょうだいたちにも一目置かれるステップになる。 妖精の人形が教えてくれる正しい選択の声を信じられたのは、 エリザベス本来の心の底にあった答えと同じ方向を向いていたから。
幼いエリザベスのことを私たちは笑えない。 いい大人の私も決して地に足がついているわけではないから、 イライラして大事なものを壊してしまったり、 心の声に従う勇気がもてなかったりする。 そして、人形ではないにしても、よりどころに頼りきってしまう。 それはシンクロ信仰であったり、過去の体験であったり。 ほんとうのことは、いま、目の前にあることのなかに 感じられるはずなのに、希望が信じられなかったりする。
妖精人形は、自分の意志でエリザベスを守ろうとしたのだろうか。 それとも、エリザベスの心の声が、人形を生かしたのだろうか。 彼女の幸せは、周囲の大人たちが、彼女のことを 理解しようとしていたことだろう。
本作はどちらかといえば、シリーズのなかでも『ゆうえんちのわたあめちゃん』の ような非日常の物語や、「小鬼のジェーン」と呼ばれた人形のような個性に比べると 人形そのものの魅力には欠けるかもしれない。 しかしやはりそこには共通して、未熟な幼いものを見守る、 ゴッデンのまなざしをたたえている。
カヴァーに印刷されたゴッデンのポートレートは、まるで妖精のゴッドマザー!そして、妖精の家づくりは『台所のマリアさま』にも似て芸術的。
(マーズ)
『クリスマスのようせい』著:ルーマー・ゴッデン / 訳:久慈美貴 / ベネッセ(福武書店)1989
2003年09月09日(火) 『紙の町のおはなし』
2002年09月09日(月) 『花豆の煮えるまで』
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管理者:お天気猫や
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