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夢の図書館新館

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-- 2005年09月01日(木) --

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『ハイランドの霧に抱かれて』

☆タイムスリップロマンスの原点、それは…。

そもそも読後の思いというのは、非常に個人的なものであるけれど、私の好きな要素がぎっしりつまった大当たりの物語であった。

ずいぶん「タイムスリップ・ロマンス」を読み重ねてきたけれど、妖精王の嫉妬心によってヒロインが20世紀から時を遡り、16世紀のスコットランドにタイムスリップさせられるというのは、新しいパターン。確かにいろんな強引な形でヒーローやヒロインが時を越え、そして互いに艱難辛苦を乗り越え、ロマンスを成就させていくが、妖精王によって、時を越えるというのは、これはちょっと、どうなんだろうと、恐る恐るページを開いたのだけれど。

当然ながら、何があろうと、どんなに二人が反目し合い、どうしようもないような困難が二人を待ち受けていようと、かならずハッピーエンドになるというのがお約束だから、いまさら、二人の愛の行方にはハラハラしたりはしない。私がハラハラしていたのは、ヒロインが20世紀に残してきた愛猫の処遇。このラブ・ロマンスは、かなり濃厚でなかなかに執拗であった。しかし、読み進めば進むほどに、この物語の底にはさりげなく、かつ明確に(!)『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン / ハヤカワ文庫)が潜んでいる。

最近、メールでのやりとりで、私自身のタイムスリップロマンスの原点が『夏への扉』であることに気づき、同じような読書体験の方の存在に嬉しくなったばかりだった。ヒロインの愛猫のことは、確かに物語の目まぐるしい展開からいえば、ささやかなエピソードなんだけど、確かにカレン・マリー・モニングは『夏への扉』のファンであると、私はそう確信している。

物語は、妖精たちが深く関わってくる。妖精の女王すら虜にする魅力を持つ男ホーク卿への復讐として、ホークのような美しい男には絶対に恋をしない女性エイドリアンが現代から、16世紀へと連れ去られる。邪悪な妖精の執拗な妨害が芽生え始めた二人の信頼や愛情をことごとく打ち砕いていく。

この大胆な設定に、最初はどうかなと、違和感を持ちつつ読み始めたが、もともとケルトの妖精物語が大好きなこともあって、すぐに物語に没頭し、大いに楽しんで物語を読み終わった。他のケルトの妖精譚でも、妖精とは時に邪悪で理不尽なことを平気でやってのけるのだから、確かにそれくらいのことはやるだろうと、納得してしまう。

奥付を見ると、7月20日初版第1刷、8月5日第2刷発行となっている。不覚にも、この本のことは全く知らなかった。いくつかの偶然の積み重ねで、先日、ショッピングモールの本屋さんの中で出会うことができた。多分、あの気まぐれがなかったら、この本にはまだまだ出会ってなかっただろうと思う。さらには、あの本屋さんで本を探すことなんてほとんどないのだから、やはり、あの時の急な気まぐれは、本に引かれたのかなと、そんな気もしている。

あるいは、出会うべき本には、どんな形であっても、やはり出会うのだと。私にとっては、そう思えるような、特別の本であった。

付記;これはベスト・ヒストリカル・タイムトラベル賞を受賞していて、すでにアメリカでは6作目が刊行されている人気シリーズだということです。翻訳予定もあるようで、楽しみです。
あ。取って付けたように言いますが(笑)、ヒロインもヒーローも魅力的でしたし、ヒーローのお母さんも素敵でした。(シィアル)


『ハイランドの霧に抱かれて』 著:カレン・マリー・モニング / 訳:上條ひろみ / 出版社:ヴィレッジブックス2005

2004年09月01日(水) 『仲世朝子・のんちゃんジャーナル』
2003年09月01日(月) 『バルザックと小さな中国のお針子』

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