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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年09月09日(月) --

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『花豆の煮えるまで』

副題は、『小夜の物語』。 感受性ゆたかな女の子、小夜を主人公にした短編集。 家族は、山あいの村で宝温泉を営む おばあさんとお父さん。 お母さんは、小夜が生まれてすぐ家を出た。 温泉には、小さいけれど宿もあって、春と秋にはいそがしい。 きょうだいのいない小夜は、いつもひとりで遊んでいる。 そんな暮らしのなかで、小夜と 森に住む不思議の住人たちとの 季節感ゆたかな交歓が、 しっとりと、抑えた叙情の筆で描かれている。

図書館で借りた本で、 本のなかに、子どもの忘れ物があった。 小夜が風になって奇妙な赤い服の小びとに 出会うページには、 『おもしろくて楽しいところ』というフセン。 鬼の子と一緒に山道を歩くページでは、 『ふしぎ』というフセン。 きっと夏休みの読書感想文を書いていたのだろう。 小夜ちゃんみたいな女の子、だったのかな。

第一話の「花豆の煮えるまで」は、 雨に退屈した小夜が、おばあさんが手づくりしている 名物の花豆が煮えあがるまで、お話をせがむ物語。 小夜のお母さんとお父さんの出会いと別れが、 山の不思議な話となって語られる。

読みながら、私のなかにも、 ふっくらと花豆が煮あがっていくようで、 湯気とも霧ともつかない白い蒸気につつまれた 山あいの宝温泉での暮らしが、自分の過去にも あったような思いがするのだった。 (マーズ)


『花豆の煮えるまで』 著者:安房直子 / 絵:味戸ケイコ / 出版社:偕成社

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