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夢の図書館新館

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-- 2005年03月01日(火) --

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☆ピーター・パンゲラン!その2「ネバーランド」

みなさんの中には、ピーターが 一ばん好きな人もいるでしょう。 ウェンディーが一ばん好きな人もいるでしょう。 でも、わたしは、おかあさんが、一ばん好きです。(引用)

と、サー・ジェームズ・バリは『ピーター・パン』で おおらかに告白している。

これに限らず、『ピーター・パン』は この、ものうげでやさしくてどこか頼りない、 ダーリング家のお母さんに捧げられているようなものだ。

なぜなんだろう。 数年前に読んで以来、ずっと不思議だった。 バリの人生についてはくわしくなかったし、 また、それほどくわしく知りたいわけでもなかったが。

ただ、気に掛かっていた。 その疑問は、『ネバーランド』の映画を見て、 ストンと納得できた、というのは言い過ぎだろうか。

ピーターのモデルになった子も含めて、 幼い子どもたちを抱えた貧しい未亡人と、売れっ子劇作家の出会い。 バリ自身の家庭は壊れてしまったけれど、 その一家を見守りつづけ、未亡人が病に倒れたあとも、 子どもたちの保護者でありつづけた。

映画でバリを主演したのは、ジョニー・デップ。 最後まで英国紳士にはとうとう見えなかったが、 定評あるコメディアンのセンスをしのぐほどの、 「静」の演技に感嘆した。 空想の場面で当たり役の海賊を熱演したり、 いつものデップらしさもあるのだが、基本は アクションのない演技がつづく。 お互いの気持ちを伝えあうわけでもなく、 ましてやそんなことが許される状況でもなく。 ただじっと愛する女性を、そばにいて見つめるまなざしが、 切なかった。

それは、ジプシー役で見せる、情熱を秘めたまなざしともちがう。 一方的ですらあるような、相手のすべてを受け入れる愛。 その想いが、はっきりと、動きのない演技から伝わる。

「あなたは疲れすぎている。休まなくては」 というようなことをシルヴィアに言っていたが、 どんな情熱的なことばより、それがしみこむあたり、 我が身が情けないのである。

ジョニー・デップも、いってみればピーター・パン的な 俳優である。その彼が見せた、大人の顔。 「大人」というのが結婚とか家庭を意味するものだけでは ないとわかっていても、ジョニー・デップがそのどちらをも 経験していると、わかっていても。

私がケンジントン公園のピーター・パン像をたずねたのは、 はじめてのロンドン旅行だった。 あの公園で、彼らは出会ったのだ。 養育係の犬、ナナのモデルを連れた小柄で少年のような劇作家と、 育ちざかりの子どもを抱え、生活に疲れた若い母親。

誰の心にもあるはずの「ネバーランド」。 大切な人が夢見る「ネバーランド」へ、ともに行きたいと願う。 そのチケットは、「幸せ」ではないのかもしれない。 それでも、ジョニーのまなざしは、何かをくれた。

胸のなかで、おとぎの島のロスト・ボーイズが叫んでいる。 皆インディアンの格好をして、火のそばで踊りながら。
「パンゲラン、ジョニー!パンゲラン!」

(マーズ)


映画「ネバーランド」 監督:マーク・フォースター / 主演:ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレット、フレディ・ハイモア / 2004アメリカ・イギリス

2003年03月01日(土) アカデミー賞 [作品賞]受賞リスト
2002年03月01日(金) 『ザ・ホテル』
2001年03月01日(木) 『ディズニー7つの法則』

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