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『グレイ・ラビット』シリーズや『時の旅人』で おなじみの、アリソン・アトリーの絵本。
淡々と自然や動物たちの世界をつづる抑制のきいた イギリス人らしいアトリーの文章と、 エネルギッシュな片山健の絵が、好対照。
夏のゆうべ、田舎に住むハリネズミが、 夜の麦畑を見る楽しみを味わうために、 ノウサギのジャックじいさんやカワネズミと一緒に、 てくてくと歩いてゆく。 おなかを満たすごちそうのためでなく。 けれどもそれは、魂のごちそう。 美しいもの、すばらしい何かを想わせるもの。 夜のムギばたけを見るという目的を果たしたハリネズミたちは、 こころから満足して帰る、というお話。
そのとき、いちばんしたいこと。 ハリネズミにとっては、麦畑を見ること。 そのゆれる穂の波を見て、麦達のうたを聞くこと。
彼らだって、食べ物の心配はあるだろう。 敵だって、そこらにたくさんいるはずだ。 でも、それでも、彼らには、 自分のために、したいことをする自由がある。 ささやかで、なんでもないことのようで、 私たちには、なかなか手を出せない領域の幸せ。
麦畑のなかに、本当にそうあるように、 赤いケシの花が数本描き込まれているのがうれしい。 全体を流れる夜の空気、澄んだ青さとともに、 忘れがたい絵本である。
この絵本を、十人十色の画家の絵で、 楽しんでみたいと思う。 (マーズ)
『むぎばたけ』著者:アリソン・アトリー / 訳:矢川澄子 絵:片山健 / 出版社:福音館書店1989
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管理者:お天気猫や
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