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ドリトル先生シリーズ第2巻。
航海記、というので、全編船で世界を巡るお話かと思うと、 そうでもない。前半は裁判で世捨て人の友人の弁護をしたり、 先生の日常生活の様子が描かれ、シギ丸に乗って旅を始めるのは 後半になってから。 それでも、先生たちの冒険は始まればさすがのスケールで、 第一作の登場人物たちもほとんどが再び登場する。
たとえば、物知りのオウム、ポリネシア。 このオウムは、ドリトル先生を深く尊敬しているとはいえ、 先生の行動を裏で操っているといっても過言ではない。 次回作以降もそうなのかどうかわからないが、 特に今回は明らかにポリネシアが舵を取っている。
アヒルのダブダブは、今回はずっと留守番をつとめていた。 前回も家計のやりくりに精を出していたが、何年も 先生の家の動物たちの世話を引き受けてくれた、 頼れる家政婦である。
金の首輪をはめた犬のジップは、相変わらず鼻を効かせて 先生の周辺を守っている。航海にも同行。
猿のチーチーも、故郷アフリカからふたたび 先生の住む、「沼のほとりのパドルビー」へと戻ってくる。
猫肉屋のマシュー・マグ、彼もまた先生の生活には 欠かせない、憎めない人物である。
そうそう、アフリカからイギリスに留学してきた王子様、 バンポも先生の旅について回る。
そして、今回から語り部となったのが、靴屋の子ども、 トビー・スタビンズ少年。 いつか船に乗って故郷を出る日を夢見、博物学者をめざして、 ドリトル先生の助手となったトビーの目で、 先生一行の旅が描かれるのだった。 そのせいか、前作よりもいっそう、動物好きの先生のやさしさが 細やかに描かれている。 こう言ってはなんだが、そのおかげで、ドリトル先生のことを、 チビ・デブ・ハゲと三拍子そろった独身の貧乏(がちな)中年医者とは、 とても見られないのだ。
「クモサル島」をめざし、シギ丸はついに出航する。 数々の冒険を経て、先生たちが遠い南米からイギリスへ帰ってきた方法は、 なんともまあ、SF的だった!ノーチラス号のネモ艦長もびっくりである。
一作目では未開の黒人部族への偏見めいた描写が やはり気になった。今回も多少その傾向はあったとはいえ、 バンポの再登場による『おかしな』キャラクターの深まりと、 インディアンの孤高の博物学者、ロング・アローに対する ドリトル先生の友情と信頼が、この物語に後世への普遍性を もたらし始めたといえるのではないだろうか。 (マーズ)
『ドリトル先生航海記』 著者・絵:ヒュー・ロフティング / 訳:井伏鱒二 / 出版社:岩波少年文庫(新版)2000
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管理者:お天気猫や
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