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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年08月15日(金) --

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『レイチェルと魔導師の誓い』

重い色調の前2冊に比べると、表紙も希望に満ちたブルー系で、 レイチェルの姿がどんどん(?)小さくなっている。 シリーズの完結編だが、今回の主役は弟のエリック。

そのせいか、表紙のレイチェルを見比べると、 第1巻の『レイチェルと滅びの呪文』では 表紙いっぱいにレイチェルの上半身が描かれているのに、 2巻の『レイチェルと魔法の匂い』では、レイチェルの全身が 表紙の半分以下になり、さらに今回はたった3cmで他の登場人物と同等。 レイチェルの重要度というか主人公度によって変化している かのようだ。

1巻では、魔女と戦うレイチェルの内面の成長にスポットが当てられる。 2巻では、少女ハイキと未知の力を秘めた赤ん坊イェミの登場、地球の目ざめ。 この3巻では、エリックの内なる戦いや、力をもつことの意味が主翼となる。

舞台となるのは大魔女たちの住んでいた惑星、ウールと、 魔導師の星といわれる謎のオリン・フェン。 そして、魔女達の創造した怪物グリダが敵となり、 地球を護るレイチェルたちの周辺にも新しい能力にめざめた 子どもたちがあらわれてくる。 遠く離れた3つの惑星を往き来するけれど、これはSFではなく ファンタジーで、宇宙船は登場しない。必要ないのだ。

前半では、子どもたちの魔法によって世界がいかに変わったかが 子どもたちの遊ぶ姿を通して描かれる。 もはや国境のなくなった地球の姿。そしてレイチェルは 瞬間移動しながら、「東京」にまでやってくるのだった! 銀座を飛んで、焼き鳥とアイスクリームを買うレイチェル!

2巻につづいて登場するチョウをつれた赤ん坊、イェミの 成長にともなう真相も柱ではあるが、まだまだ謎が多いし、 さすがに1年ではそれほど成長していないと見るべきか、 赤ん坊の1年はもっと大きいはずだと見るべきか。 今回グリダにさらわれてしまったりするイェミに対して、 飛躍的な展開があるのではと期待していたが、そうはならなかった。 他の点では、飛躍的な展開があったのだが。

魔導師も変化を見せる。これまでの圧倒的強さというより、 やさしさや、時に弱さになる思いやりも露呈される。 ラープスケンジャやサーパンサら魔導師たちが、 より踏み込んだ深い関わりを果たしているのだ。

グリダたちに支配されていた惑星ウールの神話的存在たちには、 ひきつけられるキャラクターが多かった。 それは私達人間が支配している地球の自然の声かもしれない。

最後になったけれど、特筆すべきは、グリダのなかの異端子、 弱気なジェイリアスの登場と、魔女カレンの人間的な側面が、 魔導師に対してあらわされた点だろう。

クーンツの『ザ・ウォッチャーズ』に通じる悪役の切なさは、 最終巻ならではのシリーズ的到達点とも読めて、深い。 (マーズ)


『レイチェルと魔導師の誓い』 著者:クリフ・マクニッシュ / 訳:金原瑞人・松山美保 / 出版社:理論社2002

2002年08月15日(木) 『マッケンジーの山』
2001年08月15日(水) 『鼻のこびと』

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