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人間の子どもに忘れられたおもちゃたちが
集まって住むサンクチュアリがあった。
サンタクロース通りに住んでいた黄色いテディベア「くまくん」は、
ある日、外が見たくて、子どものバケツにしのびこむ。
でも、子どもたちは、公園の砂場で、くまくんに気づかず
帰っていってしまった。
途方にくれるくまくんを、木のうろのなかの家に迎え入れるのは、
同じ黄色いくまの、大くまさん。
その快適な家には、たくさんの、忘れられたおもちゃたちが
暮らしていたのだった。
おもちゃ文学の多くは、家をなくしたぬいぐるみやおもちゃたちが、
新しい家族を探して放浪する。
でも、くまくんたちは、もとの子どもたちにこだわりはするけれど、
新しい人間の家族は、どうやら求めていないらしい。
落ち葉の季節に新入りとなったくまくんは温かく迎えられ、
やがて冬になる。
大くまさんの家はとても住み心地がいいのだけれど、
でも、ときどきは、公園の近くへソリ遊びにくる子どもたちを見に行く。
だって、そこには、くまくんのもとの家族も来ているのだから。
人間の子どもたちは、まさか、いなくなった
おもちゃが、こっそり物陰から自分たちを見ているなんて
思いもしない。子どもたちを責めることもなく、
いつか迎えに来てくれると信じているなんて。
ひとつの家族に見放されても、新しい人間の家族が
またあらわれる、というのが、おもちゃたちのハッピーエンド
とされる結末だとしたら、この物語は、
そこに救いを求めないという意味で、
より「人間的」なのかもしれない。
文章も絵も著者の作。おもちゃたちの暮らしぶりが
絵のなかに生き生きと細部まで描かれている。
彼らは、世のなかのことを新聞で拾い読みしているし、
食べるものや日用品を集めて、冬に備える。
聖ルシアのお祭りをしたり、クリスマスを祝ったり。
泣き虫のサンタクロース、カバさん、
スヌーピー、あひるちゃん、ビロードねずみさん。
どの仲間もみな、過去との決別を強いられている。
口に出そうと、出すまいと。
「プーさん」の絵本がクライマックスで果たす役割を知ったら、
作者のミルンも思いがけないことだろう。
(マーズ)
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管理者:お天気猫や
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