HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館
ある冬の寒い夜、 貧しいおじいさんの家にやってくるお客さま、 それは一匹の黒ねこ。
野良らしいけれど、人間に飼われていたのか、 人なつっこい黒ねこは、 おじいさんの世話になって、元気をとりもどす。
「野良にエサをやって、居ついたらどうしよう」
「飼えるわけでもないのに、エサをやったらいけないよ」
「もといたところに捨てておけばいい」
…というようなおじいさんではない。
残り少ない自分の食べものを与え、
暖炉であっためてあげる。
ねこもまた、次々と要求する。 家のなかに入れてもらったら、次は食べもの。 ささやかなごちそうのありかをちゃんと知っていて、 「まだぺこぺこ、もっと欲しい、どうしてくれないの?」 とばかりに鳴いて催促する。 ああ、うちのねこみたい。
お話もいいけれど、絵もねこ上手というか、 ねこのしぐさや表情がリアルに描かれている。 きっとねこ好きな画家なんだろう。 そして、おじいさんの表情のやさしさにふれると、 黒ねこでなくても、寄りつきたくなる。
ほのぼのとしたお話なのだが、 この話のおじいさんもねこも、 「飢える」ということがどういうことか、 わかっている。 一度の食事が、何日先の未来を意味するのかも。
だからこそ、 黒ねこは、おじいさんに泊めてもらえたのだ。 ずっと先の安楽のためではなく、 いまここで飢え、尽きかけている生命に 手をのばすことは、やはり「やさしさ」だと 私は思っている。 (マーズ)
『黒ねこのおきゃくさま』 著者:ルース・エインズワース / 絵:山内ふじ江 / 訳:荒このみ / 出版社:福音館書店
>> 前の本 | 蔵書一覧 (TOP Page) | 次の本 <<
管理者:お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]