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ファージョンの短編を集めた『ムギと王さま』に 収録されている短いお話。 そしてこれも、私をとりこにする 「おもちゃ文学」のひとつ。
『ムギと王さま』は夢図書本館にも収蔵されているが、 個別の作品については触れてないので、 やはり、おもちゃ(人形をも含めて)ものの 愛好者を自任する私としては、この作品を忘れるわけには いかないのだった…といいたいが、忘れていて、 『子どもの本の森へ』を読んでいて思い出した。
友達の女の子と別れ別れになるお人形は、 「サン・フェアリー・アン」 (フランス語のサ・ネ・フェ・リアン:それだけのこと! という意味から転じたイギリスの俗語) と呼ばれている。
ふしぎな、なつかしい美しさに満ちたことば。 魔法のつばさを持った、妖精のような。 おまじないのように、その名を呼びつづける女の子。 いつか、いつかきっと、その名がしあわせを 運んでくるのだから。
サン・フェアリー・アンは、 たったひとり、ずうっと眠っていた─暗い池のなかで。 陶器の顔を泥にうずめて、太陽を見ることもなく。 そう、『親子ネズミの冒険』(ラッセル・ホーバン)でも 映画『A・I』でも、 人形たちはそうして待ったのだ。 待つことにかけて、彼らの忍耐力は生まれつきである。
両親をなくしたみなしごのキャシーは、 ついに、母から受けついだ愛らしい人形を取り戻し、 その結果、さらに大切なものを得る。
みずから動くことのできない人形たちは、 ずっと家のなかにいても、人間たちに呼びかけているだろうか。 「わたしを忘れちゃったの?」と 首をかしげながら。 (マーズ)
『ムギと王さま』 著者:エリナー・ファージョン / 訳:石井桃子 / 出版社:岩波書店
2001年09月26日(水) 『星の海のミッキー』
2000年09月26日(火) 『柿の種』
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管理者:お天気猫や
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