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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年09月25日(水) --

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『子どもの本の森へ』

詩人の長田弘さんと、臨床心理学者河合隼雄さんの 児童文学をめぐる対談集。

児童文学、絵本、子どもと大人をめぐる社会について、 ふたりの「ねっからの子どもの本好き」が語るのを 読んでいると、こちらも大きくうなずいたり、 そういうこともあるのだ、とうなったり。

この本のなかで、意識的にかどうかはわからないが、 ひとり宮澤賢治だけが「天才」と呼ばれている。 ことあるごとに言っているが、これまで読んだ日本語のなかで、 私が感性として「天才」を感じられるのは、彼ひとりである。

しかし、他の多くの文学者や詩人は、天才ではなくても、 幼いころから身に付けてきた独自の世界を見る眼を通じて、 私たちに、「ほんとうのこと」を教えてくれる。 枝の葉をゆするかすかな風のように、 私たちの存在を付け根から揺らせる力。

そういうものが、絵本や児童文学と呼ばれる 「小さなウソ」からもっとも遠い世界にはある。

長田さんのひらめくような思考には、 ときどきうっとりさせられた。 対談相手の河合さんにしても、そうだったのではないか。

もっとも、長田さんは本当に量を読んでいるのだが、 量からだけでは測れないエッセンスを、 ワンダーな視点でおしげなくさらしてくれる。 読みながら、「ああ、だから私たちは救われる」と、 網に残ったものが持つような安心感を覚えていた。

当然ながら本書は、読むことで人生が変わる 「とうてい忘れられない」名作の、わかりやすい 推薦書としても、貴重な対談である。 (マーズ)


『子どもの本の森へ』 著者:河合隼雄・長田弘 / 出版社:岩波書店

2001年09月25日(火) ☆古本を買う
2000年09月25日(月) 『小さな生活』

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