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もしこの短編集を10年前に読んでいたら、 きっと、一番ひかれたのは「雪むすめ」だろう。 幼い兄弟が雪の日につくった雪人形が、 北風によって命を得、北の白い宮殿の王女となる。 でも、自分を創ってくれた少年が忘れられなくて・・・
今、私がひかれるのは、 「鋳かけ屋の宝もの」や「幻のスパイス売り」である。 正直者は報われる、とでも言えばいいのか、 日々のまじめな労働が報われるお話。
スパイス売りのおばあさんの歌声は、 どこからただよってくるのだろう。
ナツメグに シナモン
ジンジャーに キャラウェイ
インディーズ諸国の スパイス
さあ 買いにおいで
作者のアトリーが、心にためこんで大切に慈しんで きたであろう英国やスコットランド、アイルランドの昔話が、 こんなふうに熟されて、オリジナルのお酒になる。 誰でも飲めて、誰でも楽しめるけれど、 同じ命をもったお話は、異文化の私たちには創れない。
そして、こういう物語を読むときの楽しみが、 訳注としてまとめられた巻末の付録である。 それが豊かであるほど、 異なる文化の宝を味わう楽しみもまた深まるように 思えるのだ。 読み流していたら気づかないような、言葉の裏にあるもの。 そのためには、翻訳者の奔走もまた必要なのだけれど。 (マーズ)
『西風のくれた鍵』 著者:アリソン・アトリー / 訳:石井桃子・中川季枝子 / 出版社:岩波少年文庫
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管理者:お天気猫や
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