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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年07月18日(木) --

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『デパ地下仕掛人』+(新書ブームに思うこと)

☆女性たちのパラダイスは、デパ地下に。

デパートの地下というのは、ちょっとした迷宮である。 方向音痴の私は、デパートのフロアーマップを持っていても、 何度、足を運んでも、なかなか、思う場所に行き着けない。 さらには、待つこと、並ぶことが苦手なせっかちときているので、 これまたなかなか、話題の「あれこれ」を口にすることは難しい。 それでも、デパ地下というのは、さほど食べることに「貪欲」ではない 私までを強力に引き寄せる、求心力を持っている。 本書は、そんなデパ地下の秘密に迫る本である。

季節の移り変わりは、今や、デパ地下からではないだろうか。 シーズンごとに、話題のデザートがテレビや雑誌に取り上げられ、 まるで風物詩のようである。 「これからは、○○がはやりますよ。」 「1日限定△個の、××は絶対並んでも食べたいですね。」 次から次へ、食べるのがもったいないようなケーキやプリン、 さまざまなデザートが紹介されている。

・・・流行る。
・・・流行りそう。
デザートの移り変わり、流行は早い。 流行というのは、私たちに受け入れられていって、流行になるのではなく、 「流行る」ものがあって、私たちがそれを後から受け入れていく、 そんな風だ。
そう、流行は、作られている。
じゃあ、誰が作っているの?

さて、デパ地下デザートの流行の発信源は、「プランタン銀座」の地下、 「プラ地下」だという。 そのプラ地下のカリスマ的「バイヤー」が加園幸男さん。 加園さんこそが、「デザートの流行発信基地」ということで、 デパ地下デザートの戦略、流行を生み出すためのさまざまの仕掛けが語られている。

第1章 デザートブームはデパートから
第2章 「プラ地下」と「カリスマバイヤー」
第3章 仕掛人の発想
第4章 流行のデザートはこうして作られる
第5章 プランタン銀座の発想
第6章 仕掛人・発想の原点
第7章 デパ地下の未来、デザートの未来

流行したデザートのエピソードも楽しく、つらつらと、あっという間に 読み終わってしまう。 デザートが好きな人には、さらにおやつを楽しむための薀蓄となるし、 そうでない人にとっても、新しいものを生み出すためのアプローチ・発想法は、 興味深い。

※付記 「新書ブームに物申す(笑)」
さて。 まだまだ続いている、新書ブームについてである。 この本や「映画は予告篇が面白い」を読んでいてしみじみ感じたことであるが、今や新書というのは飽和状態ではないだろうか。 それぞれの出版社でのパイの奪い合いで、じっくりと本を作り上げている暇がないのでは。 しみじみ、そう、思わされる。

これら二冊は、新しく刊行された光文社の新書である。 刊行されたばかりの新書の新刊だからか、力の入ったラインナップだと思う。 どれもこれも背表紙を見る限り、面白そうだ。 実際、なかなか興味深い。 『映画は予告篇が面白い』『デパ地下デザート』どれも「素材」がいいから、 興味深いし、面白く読める。でも、「本」としては、作りが荒い、 雑な印象を受ける。 その道のプロの方に、ちょと専門について書いてもらいました。 あるいは、プロの方へのインタビューをまとめてみました。 そんなふうに思えてしまう。

『映画は予告篇が面白い』は、確かに作家やライターが書いたものではないから、「本」「読み物」としての完成度を求めるのは酷かもしれない。 『デパ地下仕掛人』は、読んでいると、「まったく同じ文章」が 何ページか後に繰り返されていたりして、パソコンで書いていて 「コピペ(copy & paste)」でもしたのかと、ちょっと興ざめをしたのだが、 目くじらを立てるほどのことではないかもしれない。 どんどんと新しい本を世に送り出すために、 注目される面白い「素材」「ネタ」を見つけることに 追われているのかもしれない。

けれど、「素材」さえ、よければいい、そういうものではないだろう。 読み手は、本としての「質」だって求めているのだ。 雑誌の特集記事やロングインタビューの「拡大版」的な新書本じゃあつまらない。『デパ地下仕掛人』も『映画は予告篇が面白い』ともに面白い本だっただけに、もっと丁寧に作ってくれていたらよかったのにと、もったいなく思った。
(※少なくとも、光文社新書については。)

いろいろ述べたが、『映画は予告篇が面白い』『デパ地下デザート』も お勧めの本であることには変わりない。 ただ、厳しいことを言えば、内容はいいが、本としては、 ちょと雑な印象(やっつけ仕事のような)を受けたのも、事実である。 ほんとうに、もったいない。(シィアル)


『デパ地下仕掛人』 / 著者:加園幸男・釼持佳苗 / 出版社:光文社新書

2001年07月18日(水) 『魔法のカクテル』

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