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私はマリリン・モンローのファンで、 熱心に彼女について書かれた本を読んだ時期がある。 セクシーなブロンド美女ゆえ、頭も軽ーい、ただのセックスシンボルとして 見られ、扱われる現実と、内面のナイーブな豊かさのギャップ。 そのギャップに苦しみ続けたことも、 彼女の人生の破綻の原因の大きな部分を占めるだろう。
ライトでコミカルなサクセスストリー。 いかにも“南カリフォルニア”の健康的な天然ブロンドの娘・エル。 彼女は、ブロンド過ぎるというだけで、軽く見られ、 大学時代の恋人に捨てられてしまう。 バービー人形のようなパーフェクトな外見のエルにだって、 豊かな才能も知性もあり、このままでは終わらせたくないという意地もある。 決して、オツムがからっぽなわけじゃない。 なのに、ブロンドだというだけで、中味がないと決めつけられる偏見。
モンローの場合は、それがどんどんとシリアスになり、 コンプレックスとなって、ナイーブすぎた心をやがて蝕んでいくのだが。 この本の主人公・エルはそんなことにはひるまない。
自分を捨てた恋人ワーナーを追いかけ、 必死で勉強をして、ワーナーと同じ、スタンフォードのロースクールに 見事入学することになる。
「バービー人形」と揶揄されるエルにとって、 スタンフォードでは、カルチャーショックと、 意地の悪いエリート達の敵意が待っている日々。 そのスタンフォードでのエルの奮闘記であり、 決して屈せず、自分らしさを失わず、 「PINK THINK(エル流ポジティブシンキング)」を忘れない。 ワーナーを取り戻すために、ロースクールで弁護士を目指すことになるのだが、そこでエルが見つけ取り戻すのは、いうまでもなく、自分自身である。
明るくポジティブなこの本は、読んでいて元気が出てくる一冊。 同名の映画『キューティ・ブロンド』の原作である。 表紙を見ると、映画のスチール写真を使っているので、 ただの映画のノベライズ版で、すかすかしてそうな印象だが、 意外とちゃんとした裏付けのある、オリジナルの原作である。 著者自身の、スタンフォードのロースクールにいた頃の経験に基づいたもので、授業シーンなども割と丁寧に書き込まれている。(飛ばして読んじゃったけど。)
惜しむらくは、題材もいいし、明るくめげないサクセスストリーなのに、 著者のデビュー作で、ストーリー展開がこなれていない。 ときどき、シーンが変わる場面で、急に流れや状況が分かりにくくなくなることもちょっとあって、ストーリーテリングは、女王リンダ・ハワードには遠く及ばない。 (※女王リンダのロマンス小説と違って、まっとうで健康的で、ロマンス小説というよりは、失恋から自己実現をしていくサクセスストーリー。) ストーリーの流れの悪さと、ストーリーに「ため」がないのが、 「物語自体」は面白いけれど、「小説」としては、少し面白味に欠ける。 やはり、エルの成長、心の葛藤など、心理描写が甘い点が残念。
そういう意味では、うまくこなれている(という)映画が楽しみなのだが、 見るチャンスもなかったし、オフィシャルサイトで見ると、 ストーリーの本質は変わってないが、人物設定や場所など、 わりと大胆に変わっていたのが、ちょっと残念。
処女作に当たるということで、確かに弱点もあるけれど、 エルの頑張る姿から、前向きな元気が伝わってくるいい本だと思う。
シリアスに悩むことより、自分らしくぶつかっていくこと。 傷も負うけれど、ぶつかって開かない扉もないのだ。 そういうポジティブでハッピーな気分で、最後まで読み終えた。
※本質的な流れは残しながらも、原作とは、ずいぶんキャラクタや設定が変えられた映画は、ラストも本より、もうちょっと先が描かれているとのこと。 低予算映画にもかかわらず、人気を博したこの映画は続編もつくられるらしい。(まだ本編も見ていないが、)続編がすごく楽しみである。(シィアル)
『キューティ・ブロンド』 著者:アマンダ・ブラウン/ 訳:鹿田昌美 / 出版社:ヴィレッジブックス
映画『キューティ・ブロンド』(2002年公開)
原題:Legally Blonde
監督・ロバート・ルケティック
出演:リーズ・ウィザースプーン/ルーク・ウィルソン/セルマ・ブレアー
公式HP[ http://www.foxjapan.com/movies/cutieblonde/ ]
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管理者:お天気猫や
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