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『寒玉楼』は、クラシックな大河恋愛物語である。
作者・瓊瑤(チョンヤオ)は、台湾・中国で、 爆発的な人気を誇る作家で、 恋愛賛歌・恋愛至上主義・波瀾万丈の物語が、 この作家の人気の理由だという。 で、この『寒玉楼』であるが、 見事に恋愛至上主義を貫いている。
1910年(清国・宣統2年)、北京。 皇帝の親族たる頤(イー)親王の娘・雪珂(シュエコー)と、 その乳母の息子・亜蒙(ヤーモン)との身分違いの愛が 生み出す悲劇。
「楓は霜を経て紅葉し、梅は雪を経て香る! 雪の中の玉は、きっと寒さに耐える!」 それが、身分違いで引き裂かれる 恋人・亜蒙の別れの言葉であった。
恋愛至上主義小説といっても、 ハーレクインとはまた違って、 格調の高さや、はしばしに繊細な美しさが見られる。 「雪珂」は、「雪の中の玉」という意味だそうだ。 美しい名前だ。 恋人の名を織り込み、 悲しみに耐えよと、雪珂を力づけようとする、 亜蒙の別れの言葉もまた、切なく美しい。 封建主義時代の純愛物語なのだ。 だが、純愛は、どうしようもなく、 残酷で、引き裂かれた恋人たちだけでなく、 周囲の者たちをも、容赦なく苦しめる。 恋人と引き離された雪珂は、 親が決めた婚約者のもとに嫁ぐが、 亜蒙への愛を貫くために、 結局は、婚約者を傷つけ、 憎しみの淵へと突き落としてしまう。
確かに、純粋すぎるともいえる雪珂たちには、 あまり、感情移入はできなかった。 どうして、そうなるの?と、 ため息をつきたくもなった。 しみじみと、 愛は「奪う」ものだとも感じさせられる。
時代がかった物語であり、 共感できない面も多々あるが、 それでも、とても興味深く面白く読めた。 図書館で借りた本であるが、 平成6年に購入されたこの本は、 まだ4回しか借り出されていない。 しかも、そのうちの2回が私である。 (前回平成6年に読まずに返却した。) やはり『寒玉楼』という、 美しい題名にひかれて借りたのだった。 表紙の、赤い服を着た雪珂の絵も目をひくのだが、 それでもやはり、地味な印象だ。 読んでみると、「クラシック」は新鮮である。 馴染みのなかった「世界」が、 ページをめくるたびに、眼前に現れるのだ。 地味であるが、私にとっては価値ある一冊であった。
こういう、図書館の中で埋もれている 読むべき本に出会えることほど、嬉しいことはない。(シィアル)
『寒玉楼』 著者:瓊瑤(チョン・ヤオ) / 訳者:近藤直子 / 出版社:文藝春秋
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管理者:お天気猫や
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