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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年06月28日(金) --

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『DIVE!!』

☆醍醐味は、つまづいた、その後の飛躍。

高飛び込みというのは、非常に優雅で、 非常に勇敢なスポーツだと、思った。 優雅さと勇敢さ。 静と動。 相反するものが拮抗している。 だから、見ている方も、緊張に固唾を呑む。 身近なスポーツではないけれど、 ずいぶん前のオリンピックで、高飛び込みの試合を見て以来、 いつでもヴィジュアルは鮮明で、心をうたれた。 とても美しく、繊細なスポーツだ。

世にはいろんなスポ根小説、青春小説があるけれど、 『DIVE!!』は、メジャーな野球でもなく、 サッカーでもなく、バスケでもなく、 マイナーな高飛び込みを続ける少年たちを描いている。 けれど、スポーツのジャンルは違えど、 『バッテリー』の中学生 原田巧(あさのあつこ作)もそうだし、 この『DIVE!!』の中学生 坂井知季もそう。 いろいろな壁にぶつかりながら成長していく。 つまづいた、その後の飛躍。 成長し続ける、柔らかな少年たちの魅力が、 びしばしと、伝わってくる。 中学生が主人公とはいえ、泣いたり、怒ったり、落ち込んだり、 もがきながらも、一歩一歩前進していく。 少年たちの成長の物語には、カタルシスがある。

『DIVE!!』の主人公・坂井知季も、 高飛び込みを続けていく中で、得られる物だけではなく、 失う物、あきらめなければならない物が たくさんあることを知る。 けれど、自分が選ばなかった物の大切さを知ることで、 今度は、その代わりに自分が目指そうとしている物の 重さ、かけがえのなさも知るようになる。 それが、知季の「世界」への挑戦の始まりであった…

これは、少年たちだけの専売特許かと、 頭をめぐらせてみると、主人公が少女なら、 たとえば、バレエ。 バレエも、れっきとしたスポ根である。 大好きなルーマ・ゴッデンの『バレエダンサー』や 『トゥシューズ』だってそうだ。 バレエには、バレエの世界の優雅さがあるけれど、 大きな骨子は、才能が有ろうが無かろうが、 結局は、血のにじむような努力を積み重ねながら、 バレリーナとしてだけでなく、 人間としても成長していく物語だ。

厳しい練習やさまざまな迷い・苦しみ。 いろんな障害。それを必死に越えていこうとするひたむきな姿。 それこそがスポーツ根性物の王道。

日頃スポーツと無縁の私も、 このひとときは、 汗と埃にまみれた気分になって(笑)、 時には涙もこぼしながら、 何かをうち破り、越えていこうとする少年たちと 心を一つにしている。(シィアル)


『DIVE!!(1)前宙返り3回半抱え型』 著者:森 絵都 / 出版社:講談社
※『DIVE!!(2)スワンダイブ』『DIVE!!(3)SSスペシャル’99』とさらに少年たちの挑戦は続く。

2001年06月28日(木) ☆大江健三郎体験。

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