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あの有名な、ホルマリン漬けの死体プールで アルバイトする学生の話が 『死者の奢り』だということは 知っていたけれど、読んだのは初めて。 これが、誰それの小説にあった、というよりも、 誰かに聞いた"ちょっと怖い話"として流布している怪談の もとネタである。 どの短編もセンセーショナルで、 体臭と恥辱と肩すかし(或いは裏切り)に満ちている。
当然、一冊しか読んでいないのだから、 現在の大江健三郎を知らないし、 (顔は一時よくテレビで見たが) 何を語れるわけでもない。
もともとこの文庫本は、弟の置いていった 本のなかから拾い出したもの。 古今東西の名作本を漁った時期があったらしく、 一冊だけ大江健三郎があった。
これらの作品が発表されたとき、 どれほど文壇や世間をどよめかせたかは 想像に余りある。
けれども大江健三郎の芯は、センセーショナルな 状況設定や描写ではなくて、樹木の皮に擬態しながら そっと息をしている蛾のように、 短編のところどころにクリップで留められたかのような、 どこか心弱いため息のような、 いくつかの一文のかもし出す力なのだろう。(マーズ)
『死者の奢り・飼育』 著者:大江健三郎 / 出版社:新潮文庫
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管理者:お天気猫や
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