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映画『ロード・オブ・ザ・リング』の公開に合わせて、 原作本と指輪物語関連本が書店の一画に 堆く積み上げられました。 その中に、いかにも映画便乗本のような体裁で、 同じ本がハードカバーと文庫の両方で出ています。 ん?著書 リン・カーター?SF作家の? 訳者 荒俣宏?‥‥ 慌てて扉裏のコピーライトを見ます。 1969年。 と、いう事は。 55年に英国で出版された指輪物語が、 10年後アメリカで安価なペイパーバックとなって 爆発的ブームを起こした時期にかかれた本!
この本は『指輪物語』成立に関する研究本であり、 「みてみて、ドワーフの名前がみんな 古エッダ(詩エッダ)の中にあるのみつけたよ!」 というような(その嬉しさはすごーく良く分る) ネタ元探しも楽しいファン本でもあります。
リン・カーターは長らく人々に顧みられる事のなかった 往年の名作ファンタジー作品をアメリカで復刊して、 多くの若者をファンタジーに目覚めさせた 現代ファンタジー隆盛の一功労者であったそうです。 ええー、ダンセイニ卿って60年代には絶版だったの? 稲垣足穂が心酔していた頃から現在まで世界中で 途切れる事なく愛読されていると思っていましたよ、 そうだったんですか。リン・カーターさん、えらい。
そういう訳で古典叙事詩から中世ロマンスを経て 『指輪物語』に至るファンタジーの系譜を語る後半部分は 格好の古典ファンタジーの手引きになっています。 『中世ロマンス』の項は他の部分と違って 現在簡単に読む事のできない作品ばかりですが、 ここの紹介がまた面白い。 これがまるで現代のコミック雑誌もかくやという 物語のインフレーションを起こしていて、 当時の読者はさぞかしはらはらしながら続きを待った事でしょうねえ。
もう一人えらいのは翻訳の団精二、いやいや我らがアラマタ荒俣宏先生。 御自身が日本のファンタジー復興に果たされた大役には触れず、 愛情をこめた解説を書かれています。 願わくばこの本が書かれてから後30年、 指輪ビッグ・バン以後の膨張するファンタジー宇宙の 指針と成る読本を書いていただけないでしょうか? リン・カーター氏は亡くなってしまったので、荒俣先生、なにとぞ。(ナルシア)
『「指輪物語」 完全読本』 著者:リン・カーター / 訳者:荒俣宏 / 出版社:角川文庫
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管理者:お天気猫や
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