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「持主に力と同時に破滅をもたらす指輪」といえば 『指輪物語』の「ひとつの指輪」と言う人より ワーグナーのオペラ『ニーベルングの指輪』と 答える人のほうが映画以前は多かったでしょうね。
そういえば『ニーベルングの指輪』の名前は 聞いた事あるけど曲は聞いた事がないという方。 ほら、大音量のクラッシック音楽にのってヘリコプターが ベトナムの戦場を飛ぶ、映画『地獄の黙示録』で有名になった 「ワルキューレの騎行」、あれがその中のひとつです。
上演に四日、総演奏時間が15時間にも及ぶ重くて長い楽劇ですが、 私はときどき徹夜作業の時などにビデオで通して流しています。 なんだかどんどん脳が危険な領域に近付いていくような 高揚感と陶酔感が生まれます。(←近寄らない様に)
では、こちらも長い『ニーベルングの指輪』の物語の中から 『指輪物語』と関連のある部分を。
醜い小人ニーベルング族のアルベリッヒが ライン川の乙女達から奪い取った黄金で力の指輪を作る。 神々の王ヴォータンがその指輪をだまし取ったため、 アルベリッヒが指輪に呪をかける:『序夜・ラインの黄金』
天駆ける戦場乙女ワルキューレの一人が 父神のいいつけに背いたため罰として眠りに入る:『第一夜・ワルキューレ』
若い英雄ジークフリートが折れた剣を鍛え直し、 森の洞窟で宝を守る大蛇(ヴォータンに指輪を 報酬として貰った巨人の変身した姿)を倒して 姿を変える兜と指輪を手に入れる:『第二夜・ジークフリート』
指輪を欲する人間の策略にかかって英雄は暗殺され、 衰退の様相を現していた神々の世界は燃え盛る炎の中に滅び、 指輪はラインの水底に還される:『第三夜・神々の黄昏』
ごらんの通り。『指輪物語』の「ひとつの指輪」は 北欧神話の神々と名高い英雄ジークフリートを ワーグナー作品の中で殺し、世界を滅ぼした 「呪いの指輪」の生まれ変わりです。
最終夜『神々の黄昏』の最後、 地上と天上の世界の終焉の中で、死せる英雄の指から抜き取られ ラインの乙女のもとに返され黄金に戻ったはずの指輪は、 長い歳月の後に冥王サウロンの手によって指輪に鋳直され 再び世界を危機に陥れるのかもしれません。
なんと恐ろしい宝でしょう。 ニーベルングの指輪をめぐって、 巨人は欲に凝り固まって仲間を殺し洞窟に隠れた、 その力を知る妖精達は持つ事を恐れる。 人間は身の程知らずにも指輪が欲しくてたまらない、 神々ですら指輪の呪いに蝕まれ滅びてしまった。 指輪の価値も恐ろしさも知らない屈託のない英雄だけは 無事であるかのように見えたけれど、やがて。 全ての者を陥れる指輪にまたもや世界は滅ぼされるのでしょうか。
そうはさせない。 人間よりも心の清く、人間よりも力を望まない、 質朴で勇敢な小さな人が、初めて歴史に登場してきたのです。 今度こそ世界を救うために。(ナルシア)
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管理者:お天気猫や
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