スナックおのれ
毛。



 過去の私、過日の私、言葉の前で。

これまでで一番ショックだった言葉は、彼氏に別れ際いわれた「最初から好きじゃなかったのかもしれない」。あのときは、なんでショックなのか言葉にできず、あの人が去った後、ただ天井を眺めて思い浮かぶ単語を全部口に出してみた。
最近、それがやっとわかった。多分、私は、毎晩、あの人のところにウキウキ自転車を走らせていた自分、それを笑って迎え入れてくれたあの人、それまでとその後の時間経過を全部否定されたことがショックだったんだな。「ムリになった」とか「好きな子できた」とか、なんだったら「俺、実は結婚してるんだよね−」の方が、なんぼかマシ。今となっては、あの人が、並外れた正直者なのか希代の阿呆なのか判断しかねる。そして、この言葉を思い出すたび、胸のなかが苦くなって、もはや笑える。
過日、とあるセンセイに「俺の教えたことは全部忘れろ」といわれた。一瞬、くらくらした。意味がわからなかった。後から考えて、思い出したのは前述の彼氏の言葉。似たようなにおい。似たような苦味。似たような否定感。センセイの指導を受け止めて、自分なりに懸命にやってきたことを全部否定されたと感じた。センセイにとっては、何気ない言葉だったかもしれないけれど、とても哀しかった。うなだれた。混乱した。でも、過去の私と違って、次に怒りが出てきた。「あとから否定するようなこと教えてるんじゃないよ!」と思った。そして、私、ずいぶん図太くなったもんだな、と痛感。年齡を経て、変わっちゃったんだな、と苦笑い。ガッカリ半分、たのもしさ半分。後々、センセイとは和解したけれど、いつか絶対説教してやる!と思っている。(いや、すでに「そんな変なこと教えてきたんですか?」くらいはいっちゃったな…)

2019年03月18日(月)
初日 最新 目次


My追加