ジョージ・エルスの日記...ジョージ・エルス

 

 

JWマリオット - 2002年09月25日(水)

僕の3歳になる息子があるパーティーの招待を
受けた。

ミーシャという名のクラスメートのバースデー
パーティー。

会場はJWマリオットの会議場。ビジネス客を
相手にし、高級ブティック中心のショッピング・
モールが隣接する 高級ホテル。

どう考えても大人の世界だ。3〜4歳の子供の
バースデー・パーティーにはふさわしくない。

きっと彼は大会社の社長か高級官僚の子だろう。


80人くらいが入れる会場。100個以上の風船
がぷかぷかと天井に浮いている。

奥の舞台にはピエロ風のインド人司会者が風船
で動物や剣を作って 子供達に手渡してる。

その脇では、小さな手に花や動物のペイントをし
てくれるのを待つ子供の列。

40人ぐらいの子供が会場狭しと走り回ってる。

完全に子供の世界。息子も一緒になって走りだ
した。



ミーシャが現れた。もちろん 普通の4歳の男の子。

驚いた。なんと彼は現首相、マハティールの孫だ
という。


この国のお金持ち達は子供をインターナショナル・
スクールに入学させる事が多い。

僕は日本では決してお金持ちではない。日本円に
換算した給与は日本の普通のサラリーマンと同じ
ぐらいだ。

しかしここマレーシアでは高給取りになる。

少し無理をすれば子供をインターナショナル・スク
ールに通わせることも可能だ。

それだけ日本の "円" が強いという事なのだ。


そして 決して忘れてはいけない。


父の世代の無数の男達が 家族との時間をないが
しろにしてまで がむしゃらに働いて 日本の国を
豊かにし、世界に通用する "円" を作り上げた
という事を。

数え切れないほどたくさんの母の世代の女性達が
彼らを支え続けた事を。

僕達は その恩恵を受けているにすぎない事を。



会場を後にした。車の後部座席には久しぶりに外
出した妻、会場でたっぷり遊んだ息子。十分に楽し
んだ様子だ。

前を走る車。さっきのパーティーに出席した人達だ
ろう。車中にさっき会場にあった風船を積んでいる
のが見える。

「さっきは楽しかったね。」という声が今にも聞こえ
てきそうだ。

その風船達は 車内の天井にぷかぷかと浮いて
ゆらゆらと楽しげに揺れていた。










...

ツインタワー - 2002年09月19日(木)

首都クアラルンプール(KL)中心部に聳(そび)
え立つ銀色に光り輝く2つのビル。

ペトロナス・ツインタワー。

オフィスビル。国営石油会社ペトロナス社所有。
88階建て。高さ452m。高さ世界一。

タワー建設はこの国の一大プロジェクトであった。

左のタワーは日本のゼネコン、右のタワーは韓国
の建設会社が競うように建てた。

ルック・イースト政策(東の先進国を見習おう)
を基本政策としてきたマハティール首相の計らい
に違いない。

国家、建設業界など様々な人の利権が絡んでいる。


観光名所になるほど外観は個性的で美しい。

ショーン・コネリー、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ出演
の「エントラップメント」にも登場したという。

タワー間には巨大ショッピングモール。地元の人、
観光客でいつも賑わっている。

マレーシア繁栄の象徴といわれる所以(ゆえん)だ。



KLで評判の日本料理店「大関」。 会社の上司、
彼の友人、そして僕の家族、計5人での夕食。

彼らの昔話は心地よかったが、僕の3歳になる息
子には退屈だったようだ。

外へ行こう と催促される。仕方なく 妻を残して外
に出た。


店を出ると 左手に 照明で青白く輝くツインタワー。
昼間とは違う美しい姿に 改めて圧倒される。

右手にはもう一つのシンボル KLタワー。

イスラム建築に影響受けた独特の姿に感嘆する。

ここに赴任してまだ1年。いまだに観光客の視点で
街を見てしまう。何度見ても飽きない。


美しい風景をもう少し、という僕を尻目に 彼は前
をひとりで歩いていく。何度も見てるせいか、この
風景にほとんど興味を示さない。

日本から遠く離れた国に住んでる事を理解していな
い彼にとって この風景は 地元の人達と同様、単に
ごく普通の日常。


僕よりも先に 彼はこの国に溶け込んだということだ。










...

マハティール - 2002年09月13日(金)

ゴムと錫(すず)しかなかったこの国を 東南ア
ジア屈指の工業国に育て上げたのが首相の
マハティールだ。

先住民族であるマレー人。前職は医者。マラヤ大
学(日本なら東大)成績トップで卒業。

在職21年。来年10月 引退予定。

マハティール後のマレーシアを心配する声も多い。
それほど彼は 国民から絶大な信頼を得ている。


彼の示唆に富む発言にいつも注目が集まる。


「多様性は人生のスパイスだ。しかし、我々がヒ
 ルトン・ホテルに泊まり、マクドナルド・ハン
 バーガーを食べ、フォードの車に乗り、お金を
 シティバンクに預け、生活用品をカルフールで
 買うことにより、そのスパイスは急速に失われ
 つつある。」


巨大企業の世界市場支配によりこの国の中小企業
がなくなれば世の中は画一的で面白みがなくなる、
という事だ。

先住民であるマレー人(60%)の他、中国人(30%)
インド人(10%)の共存を可能にしたのはまさしく
彼の”多様性”に対する寛容さだ。



僕の3歳になる息子がインターナショナルスクール
に通い始める。入学式に出席した。

色々な国籍を持つ子供達と接して欲しいと願い 学
費面 少々無理をして通わせる。

外見、文化的背景、多種多様な子供達と接すること
で 多様性を理解できる能力を身につけてほしい。



でも何も心配いらないようだ。初めて会ったという
のに、もう皆と一緒に遊んでる。



きっと 彼ら子供の世界は 底無しの湖のように
どんな多様性をも受け入れられるのだろう。










...

タイ - 2002年09月09日(月)

クアラルンプール国際空港から飛行機で1時間40分。
隣国 タイの首都バンコックへ。部下のマレー人、
MR.ムハマドとのビジネス・トリップだ。

バンコックでは車の渋滞が一日中続く。緑も少なく
電信柱も普通に立っている。景観があまりよくない。

ホテルや空港以外では英語がほとんど通じない。

これまでタイへの出張は乗り気ではなかった。ただ
し今回を除いては。

担当のタクシードライバーが非常に優秀だった。

MR.リック。中国系タイ人。66歳。

安全運転でブレーキの効かせ具合が程よい。長時間
のドライブでも疲れない。滞在期間3日間とも彼に
運転を依頼した。

中国語は話せないがタイ語と英語が話せる。タクシ
ードライバーにしておくのはもったないぐらいだ。



台湾系タイ法人顧客への訪問。台湾人社長、MR.リエン
は中国語しか話せない。”サンキュー”の意味すら知ら
ない。

リエン社長の部下、MR.チャンチャイは中国語とタイ語
を話せる。

あとはタイ語と英語を話せる人がいれば話ができる。

タクシードライバーのリックに通訳を頼んだ。きけば
前にサウジアラビアでオイルビジネスに携わったこと
があるという。何の問題もない。

先方はリエン社長、部下のチャンチャイ、こちらは僕、
部下のムハマド、タクシードライバーのリック。

5人でテーブルを囲む。商談が始まった。


まず僕の隣に座っているムハマドに日本語で用件を伝え
る。彼は日本語と英語が話せる。

ムハマドはその隣に座っているリックに流暢な英語で僕
の言った用件を訳す。

そしてリックは席の向こうにいるチャンチャイにタイ語
で話しかける。この時点で彼が何を言ってるのか、僕と
ムハマドにはさっぱりわからない。

さらにチャンチャイは隣のリエン社長に中国語で説明し
ている。

話し終ると彼は僕をみてうなずく。用件はちゃんと伝わ
ってる様だ。

リエン社長の発言も 長い経路でこちらに伝わる。僕も
うなずく。まるで伝言ゲームだ。

時間をかけたやりとりが相手を和(なご)ませ、商談は
終始おだやかなものであった。


隣国で言語や文化が全く違うアジア。

国の違いを体感できる醍醐味。



バンコックに照りつける太陽が 今、僕が日本から遠く離
れた 人種のるつぼ 東南アジアにいることを 改めて教え
てくれる。















...




My追加

 

 

 

 

INDEX
past  will

Mail