2004年11月29日(月)
ひたひたと水 水面には細波 波間には呼び声 声の主は、誰? 鱗がみている夢 夢路の果ての忘却 去り行くのは魂 その王国に 貴女はかつて魚だった 鱗には水の上の空が映り 青、あお、あおい色を様々に 語るよりも雄弁に数えながら 目指していたのだ 果て を 彼方に日が沈む場所があるという 信じていたのだろうか 海が果てるその場所に 「終わり」という言葉があるのだと 果てるのは日々 日々は巡り続け 続けられぬのは想い 想うことは尽きず 声が尽きるまで、呼ぶ 枝を刈る 2004年11月21日(日) 僕には、切ることしかできないんだ 植木屋になった息子が笑う 日焼けしたその顔 土に汚れた腕 いつのまにお前は 木を植える男になったのだろう 違うよ、母さん 僕は切るんだ 鋸を鋏をチェーンソーを手に 切っても切っても伸びてくる枝を 切り落とすのが仕事なんだ 冬が終わるたびに 夏が来るたびに 空へ向かって伸ばされる腕を 蕾をつけた恥じらいを 切り落として失わせて お前は小さい頃から やさしい子だったから 愛されているでしょうよ ほら、なんて見事な庭だこと 息子は笑う 笑いながら鋏を取り出す そうだね母さん 僕は優しいから 切り落とさなければならないんだ この家がうつくしく育つように 切り落とす、 そうげんの種のおはなし 2004年11月17日(水) ここに一粒の種があります 種を割れば 水があふれ出るでしょう 種を飲み込むのは 鳥だけではありません 獣たちは季節になれば木の下に集い 待つのです 満ちてくるのを 朝のひかり 日中の風に 枝はふるえ ときおり種は鳴るのです ゆるるん、ゆるるん、と それはいつか生き物の腹に入り 種が奏でる鐘の音です 一足ごとにひろがり いつか力尽きた獣が 翼をたたんだ鳥が 大地に落ちたその後に あふれ出る水の音なのです 夜が来ました 今日はもう、種が落ちることはないでしょう |
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