2003年07月12日(土)
なくしてしまいました、と影が言うので 二丁目の角の 自販機のところから 三丁目の高橋さんの 犬小屋の脇まで 下を向き向き 歩いたのでした しめしめと湿り気の舌なめずりする日で 空の青さよりは汗の青さのほうが気になって ごめんなさいと謝ったのに 許しませんよと言うのです 影 ああああ ほら零れてしまいます あなたは粗忽に歩きすぎです 一足ごとに駄々漏れのその頭の螺子をなんとかなさい ほら おかげで私まで薄く薄まる薄々と どこかで聞いた声 ではありませんかと 問いましたら いいえ 私は常にあなたの後ろにおりましたから と言い張るもので 振り向いて私はおやまあ 忘れていたのでした 道々残す、足跡を 2003年07月11日(金) その最初のひとひらは あお い 色ではなかったか あなた おぼえてはいませんか 夏の日 染みわたる蝉の声も 白壁に塗りこまれてゆく あなたの影も あの光の中で 繰り返されています 何度も なんども あお から落ちてきたその声は 祈りなどではなく けれども確かに まもりたいと 願う言葉であったと 言い訳のようにきかされて そうですか と わたしは答えたのです あなたの 影はまだ擦り切れぬのに |
|||||||||
過去 | 一覧 | 未来 |