あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
夏色 2003年08月24日(日)


三角形の頂点には
溢れそうな光が瞬いている

リリ、リリ、真夏という色という色は喪われた

貴方は頑なに名を拒み
「わたくしの事はただ、セピアと」
呼ばれる事すら喜びはしない

セピア、僕のセピア、けれど語らなければ

貴方からここへ繋がるはずの
まっすぐな線分
それは蒸発してゆく夏の水のように
儚いのだろうか
辿ろうとしても
焼け付いた空には何も描かれていない

セピア、それは平面の上の一点の染み
あらかじめ喪われていたのだと
拒み続ける鋭角の頂点

「繋がらないのなら、その方が良いのです」

セピア、セピア、壊れてしまうよ

セピア、そのままでは


 2003年08月06日(水)

君の骨は
桜の色をしていて

  夜の街を
  歩いている

  歩いている

昨日の夜は高橋さんの家の前で
踊っていたんだって?
骨壷にも入らずに、まあ
笑われたさ、僕は甲斐性無しだと

 ねえ君
 桜色のその眼窩から
 見上げる夜の色はどんななの?

  たとえば
  街灯が幾つも並ぶ、この路地の間の空には
  グラウンドの水銀灯の白とか
  信号機の赤青黄色とか
  工場の常夜灯のオレンジ色が滲んでいて
  夜
  なんて色はどこにも見つからないのだけれど
  その桜色の穴を通せば
  見えるのかな

   墓穴は
   君を納めるために口をあけているのに
   歩いている
   君は
   踊っている

ほら、夜
ほら、ふけてゆくよ    

 2003年08月04日(月)


かぞえて六度目の 夏

ひかりは留まり
けれど地表は暖まらず
じれた貴方の足は
わたくしの腹を蹴破った

土塀に影を残しながら
這って行く青色の皮膚に
わたくしの声は優しかっただろうか



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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe