落葉松の稜線は燃え 2002年11月24日(日)
/ しらじらと凍りし空を雁の飛びゆく ◇ ◇ ◇ 進みません。 進みませんったら進みません。 ………(涙) ◇ ◇ ◇ 林檎を頂く。新米を頂く。日本画を頂く。 こういう仕事先が連続して続くと、怖くなる。 塞翁の故事ではないが、次は嫌な客にあたるんじゃないかって(苦笑) 自分のやるべき事を、ただやるだけ。 ──であるのは変わらないのだけれど、今の私にとって精一杯の事であっても、貴方を満足させるには至らないかもしれない。 そんな不安。 いや、そもそもこの道で一生を終えようという気持ちがないのに、 出来上がった物が本当に精一杯の代物であるのか、という問い。 椅子に腰掛けたままで、高みに手は届かない。 ◇ ◇ ◇ 冬来 2002年11月13日(水) 聞かなかった言葉が 耳の後ろにたまっている こんなにも ながく、と 潔く落ちる柿の葉を数えながら 日に日に短くなってゆく温度計の 先端の色を 伝えられないかと 指を差し出してみた 笑う よね 拾いもしないのに だけど うん 木蓮の花芽が もう一つ向こうの季節を 待っているから 繋いで かたちを真似る 閉ざしていれば いつか溢れて わかるかもしれない 聞かなかった いくつかの季節 が 三日月に切り落とされた足爪の 2002年11月11日(月) / 踏みし大地の今朝の固さよ 山が白いのは嬉しい。 だけど11月の頭でアイスバーンが出現するってのは……。 死にかけました。マジで。 ◇ ◇ ◇ 「人は人の間にあってこそ人間として生きていける」 うん。確かにそうかもしれない。 ちょっと見、美しい言葉だ。真実だと信仰したくなる常識だ。 だけど、そこまで辿り着けない人間も、存在する。 言葉は、とても不完全な道具だ。 人間の脳も、不完全で不安定な装置だ。 全ての隣人と理解し合える、平和で穏やかな社会は、夢であるからこそ美しい。 ◇ ◇ ◇ けれど、君に「しあわせ」があるように。 僕と違うことばを使い、僕と違う世界を見る君の心が、しあわせを知るように。 僕は心から、祈っている。 2002年11月09日(土) 寂しさをわざわざ確認しにゆく。 馬鹿だと思う。 そんな感情には蓋をして、隠しておいたほうが良い。 魂の一番深いところには、寂しさがあるのだと言った人がいる。 自由であると言う事は、孤独であるという事だ。 その孤独を抜け出すために必要なのは、「自分」という個に固執する意識を捨てることだ、とも。 しかしどうだろう。 心の底から幸福で、しかし孤独ではない、そんな存在の形などあるのだろうか。 そんなもの、無いと思う。 個であることを放棄した状態、粘菌のような集合体の一部分である事が、幸せだとはとうてい思えない。 貴方の全てが私の全てであり、私の全てが貴方の全てである状態? ──すなわち、貴方と言葉を交わす必要が、全くない状態という事? ごめん、私にはわからない。 そこにある幸せは。 note断章 / N, E, ナビゲーター 2002年11月06日(水) 幸せって奴は、一体なんだとおもう? それは別に、誰かと一緒にいられる事ではない。 おなか一杯食事が出来ることでもない。 健康で長生きが出来ることでもなければ、戦争の無い平和な国に生まれることでもない。 裕福であることでも、貧乏だけれど家族に愛されていることでもない。 君が頭に思い浮かべる幸福の形、その全てが「しあわせ」とはほど遠いものだ。 咲き誇る薔薇の花を見て、あるひとは「うつくしい」と思うだろう。 またある人は、「良い香りだ」と思うだろう。 あるいはその薔薇を手折り、誰かの部屋に活けなければならないために、「刺がなければ良いのに」と考える人もいるだろう。 なにか一つの事象を見て、人のうちに去来する感情は全く人それぞれだ。 同じように豊かで平和な村に生まれたとして、その平穏さを疎ましく思う人間とているだろう。 世界は、事象は、見る人間と同じ数だけの様相を持つのだ。 だとしたら、明確な形のある「幸せ」など、どこにも無いのだとは思わないか? 俺は思う。 しあわせって奴は、そう感じる心を持っているかどうか、なんじゃないかと。 幸せだと思う心の働きを、有しているかどうかなんだと。 美しくも無い、優秀でもない女が隣にいて、そいつとずっと生きていく。 それを「しあわせだ」と思うことができるなら、それは幸せなんだ。 戦いばかりの世界に生まれて、誰かを殺すためにしか生きられないとする。 それでも、誰かを、何かを守るために自分の命が役立って幸せだと思えるなら、 そいつは「しあわせ」なんだ。 なあ、お前は、どうだ。 理不尽なこの環境に生まれ、しあわせだと思えるか? 今この瞬間に俺に殺されたとして、自分の人生は幸せなものだったと、そう思えるか? 求めずば空は今より青からん 2002年11月04日(月) / 遠く野分よ駆け抜けてゆけ ◇ ◇ ◇ へこんでます。 しかし独り芝居です。はは。 いっそもっと左下のほうだったなら。 世間体とか後から与えられた常識とか観念に降りまわされずに済むのですがねえ。 あと十年、いや、十五年早く、知っていたかった。 無知であることは、不幸だ。 「上見て暮らすな下見て暮らせ」とはある宗教の言葉です。 ──大っきらいです。 その言葉を無意識のうちに実践してたりする、自意識が嫌いです。 何かとの対比でしか確認できない足場なら、ないほうがマシ。 それは、自分自身へむけて。 ◇ ◇ ◇ 現実とは何か、という問いに対して。 それは「経験」そのものだと私は思う。 この指に触れる世界の固さや、柔らかさではなく。 夏の熱さでも冬の寒さでもなく。 世界の厳しさでも優しさでもなく。 ただ、経験していくこと。 手を繋いで、暖かいと思うその心の動き。 暖かさから、派生する感情。 求める心、拒絶する心、嫉妬、愛情。 それこそが、リアル。 世界が、リアルなのではない。 謎 2002年11月03日(日) 解らなくてごめんさい、と思う。 でも、本当にわかりません。 理由付けをするコトは簡単ですが、それは問題の解決にはなりませんね。 何故なのか、教えてください。 いえ、多分教えられたところで、その半分も理解する事はできないでしょうけれど。でも、知りたい、とは思います。 欠けています。 それは、全ての人が生まれながらにして、欠けているのと同様に。 ──いいえ。 私の欠けは、貴方の欠けとは違う場所にあって、それが、おそらく問題をひきおこしたのでしょう。 私は、自分が「理解できない」のだという事はわかっています。 しかし、「理解できない」その内容は、おそらく、貴方にとっては当然のことで、どうして「理解できない」のか、その事さえが解らないでしょう。 禅問答のように。 貴方は両の目で世界を見、そして私は左の目で世界を見ています。 その二つの景色は、同じようで、決して同じではないのです。 ごめんなさい、と。 とりあえず謝る癖をつけてしまったのも、この世界のずれを埋めるのが、困難であることからです。 とりあえず笑う癖をつけたのも、全く同じ理由からです。 謝罪と、笑顔。 二つの盾があれば、とりあえず、世界の荒波を渡ってゆけるのです。 その気持ちを、少しでも理解していただけたらと、そう願います。 ◇ ◇ ◇ 花を手に入れたと思うたびに 私は失望するのでした それは必ず散ってしまうもので 私の掌には花を育てる養分などなく 体熱は花をしおれさせるばかりなので 花など要らないと 言ってしまうことは簡単でした けれど鳥も獣も人も 花は全ての生き物に必要なのだと責めるのです ◇ ◇ ◇ 星、星、星。 撃ち落しておくれ、あの星を 眩しすぎて、目がやけてしまう 温もりを知らねば掌は 2002年11月02日(土) 野良の猫に屋内の暖かさを知らせてしまえば、冬の戸外は辛い場所となってしまうでしょう。 彼らの全てを家に上げることが出来ないので、私は、窓の外で身を縮めて震える猫を、ただ、見ています。 寒い。当然。 けれど、あそこが、野良の生きる場所なのだ。 独りだった人間が、誰かと過ごす時間の楽しさを知った後に、独りの意味を知るように、彼らに家の中の暖かさを教えて、彼らが生きているのは「寒く厳しい」場所なのだと、そう教えてしまうことになるのは、残酷な気がする。 (いえ。餌を与えた時点で大分失格なのかもしれませんが……。) でも、生きろ、と思う。 どんなに厳しい場所でも、必死にあがいて、生きろ、と思う。 絶滅危惧種も、外来種も、害獣も、人間も、植物も。 ただ、生きるために、生きる。 それが答えだ。 けれど寂しい、とも思う。 手に入らないものを羨む心は、寂しさを増大させる。 目を閉じて、忘れてしまえ。 ※ ※ ※ その人の膝のうえに だいだい色のひだまりは いつでもあるのでした 濡れた髪を拭う 優しい手を望みながら 三和土にぽつりぽつりと 雫が輪を描きました 手を伸ばせば 消えてしまうでしょう ましてや 声を潜めて ひゃくまで数えます ひとつ ふたつ それから 縁側の洗濯物の匂いが みっつめで眩暈を起こして 帰り道で潰された 小さな生命のことを思い出したのです ただ 歩いていただけだったのに 潰されたひかりのことを思い また外へと出たのでした 膝の上のぬくもりは 私のものにはならず あまつぶの数だけが また 増やされてゆくのです |
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