パンドラの箱
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ここからは立ち入り禁止です。 理由ですか? それはこの立ち入り禁止区域は神聖な場所だからです。 この中に入るには特別な許可証が必要なのです。
え?前は入れたって?
それはあなた、あなたがその許可証を無くされたからではありませんか? もしくはぞんざいに扱ったために許可証としての意味を無くしてしまったからだと思いますよ。
再発行ですか? 残念ですが、その許可証は一生に一度しか発行されないんです。
ええ、ですので、申し訳ないのですが、お引取りを願います。 あ、もちろん、立ち入り禁止区域以外の場所に関しては今までどおり、ご自由に出入りなさってくださって結構ですから。
「もう他に何もいらない」
「無人島にふたりきりなんて最高かも」
欲張りなあたしがただただシンプルに願うのは、 ふたりだけの時間。 ふたりだけの空間。
誰にも何にも邪魔されずにいられたら。
青い地球の上 ポツンと無人島 あなた以外は もう誰もいない
from:松田聖子「パイナップル・アイランド」 作詞:松本隆 作曲:原田真二
治りかけの傷のかさぶたを剥がす。
「あーあ。せっかく治りそうだったのに」
剥がしたあとからは血が滲み、また新たな傷となってしまうのだ。
絶対的な認識の違いを見せつけられて、 自己を正当化しようと躍起になるのは、 おとなげないし、 諦めが悪いのだろう。 形に出来ない想いが、認識されていなかったことを知るのは辛いけれど。
もういいじゃん。 過去に縛られて苦しむのはやめにしよう。
今と言う瞬間に繋がる過去を否定するのではなく、 肯定することが、自分を愛すると言うことなのだから。 そこには一点の曇りもなく紛れもない真実の想いだったのは、 自分自身が知っているから。
伝わっていなかった想いだって、もういまさら届ける必要などないのだから。
日々を笑顔で暮らせることに。
日々をつつがなく暮らせることに。
日々を心穏やかに暮らせることに。
そしてその日々の繰り返しに、アナタがいてくれることに。
二人が出逢うためにアナタがこの世に生まれてきた日に。
2006年11月22日(水) |
キライキライキライ・スキスキスキ。 |
そんなあなたは嫌いだと、 言刃を放つ瞬間の、 そこにある、真の憎しみ。 愛しさの反動から来る憎しみはきっと何物も太刀打ちできない負の感情だ。
好きだからこその嫌い。 好きだからこその憎しみ。 そんなものに縛られていれば辛くなるのは当たり前だ。
だけどあたしはもう、アナタと出逢ってしまったから。 もうそんな面倒な感情を持たなくてすむ。 アナタとなら何の迷いもなく永遠を感じられるから。
これ以上もこれ以下もない。
さあ、どこまでも一緒に歩いていこう。 この手は繋がれている。 今もこれからもいつまでもずっと。 晴れの日も雨の日も暖かい日も寒さに震える日も。 他には何もいらない。 愛している。 アナタを愛している。
「仕事で近くまで来ています」
キミからの便りが届いたのは何ヶ月ぶりだろう。 キミはいつも気まぐれで、話をしたいときにだけ便りをよこす。 キミの想いには応えられないから、いつも手ひどい仕打ちをしてしまう。いつも最後にはそれに耐えかねて、キミはぷっつりと音信不通になる。
そんなキミから便りが届いたから、正直どうしたらいいのか思いあぐねた。 毅然とした態度で、無視を決め込むか、何もなかったように、普通に返答をするのか。
後者を選んだあたしは、結局後悔にも似た苦い想いで、キミを責め、そのことで傷ついたキミはまた、音信不通となるのだろう。
欲しいものはたくさんあるの。
素敵な指輪にお洒落な靴。 可愛い服に綺麗なネックレス。 大きな花束に美味しいケーキ。 エトセトラエトセトラ。
だけど本当に欲しいのは、 たったひとつ。
5分で駆けつけることは出来なくても。 いつもいつもあたしだけを想う気持ち。 それさえあれば何もいらない。
そしてその存在の全てが あたしにとっての幸せのかたち。
inspired:「ひとつだけ」 by 矢野顕子
決して短くはない歳月を、 自身の思い込みだけで過ごしてきたことに、 突然気が付いた。
身体を重ねることでごまかしてきたそのズレは、 身体を合わせないままでは、 決して合わさることなく、 だからどんなに努力しても、互いの間の溝は深まり行くばかりなのだ。
同じものを見ても、 同じに見えていなかったんだね。
そのひと言を贈ったら、 あなたはあの人の元へ行ってしまう。 あなたのおやすみはさよならに等しい。 それが嫌で、拒んだのだ。
そのことがあなたから安らぎを奪ったのだとしても。
隔絶されることを確実にするその言葉を口にして欲しくなかったのだ。 ともに朝を迎えることが出来ないのなら。 せめて、繋がったままでいると思い込みたかったから。
離れているからこそ。 もうこれ以上離したくなかったから。
その想いは伝わってなかったのかな。
間違いないよね。 やっぱり振られたんだよ。
inspired:「ズキズキ」 by 及川光博
2006年11月16日(木) |
Good Night,Darling. |
日々の暮らしは余りにも煩雑すぎて、 心が疲弊してしまうから、 せめてその眠りだけは心穏やかなものであるように。
そっと けれどしっかりと この腕の中に抱き締めて。 いつまでも、 いつまでも、 深く静かな アナタの眠りを守れますように。
雨の夜、ネコを拾った。 びしょ濡れの身体を震わせて、小さく丸まって、抱き上げようとしたら牙を剥き、手を引っ掻いた。
「ッつ・・・」
手の甲に一筋、傷ができ、血が滲んだ。 ネコは怯えた目で、それでも精一杯の強がりでこちらを睨み付けている。
「怖がるなよ。何も悪いことはしないからさ」
血の滲んだ手を差し伸べて、もう一度抱き上げようとしたら、低い唸り声は上げているものの、今度は抵抗しなかった。 すっかりやせ衰えて、ガリガリの身体に、濡れそぼった毛は、あまりにもみすぼらしく、急いで家に帰った。
濡れた毛をタオルで拭きながら、身体中を調べてみたが、特にこれと言った怪我はないようだ。 牛乳を与えたが、びくびくとして落ち着きなく、少し離れて見ていると、恐る恐る舐め始めた。 すっかり平らげてしまうと、少しは落ち着いたのか、毛づくろいを始めた。 脅かさないように、そっとゆっくり近づくと、ネコはびくっと身体を震わせ、威嚇するように唸り声を上げながらこちらを睨んだ。
「大丈夫。何もしない。何も怖がることはないんだ」
そっと声をかけながらゆっくりと手を伸ばし、頭を撫でてみた。 すると、唸り声はやみ、ネコはおとなしくなった。
「よほど怖い目にあったんだな。でも、もう大丈夫だから」
そう言いながら撫で続け、ネコが安心するのを見計らって、そっと抱き上げた。
「怖がることはないよ。な?」
徐々に脱力していくネコを見て、思わず微笑んだ。 ふと、ネコは身を起こし、さっき自分が引っ掻いた手の傷を舐め始めた。ざらついた舌は傷に引っかかり、思わず苦笑いをした。
「ああ、ありがとう。でもさ、お前の舌は痛いんだよな」
それでもネコは丹念に傷を舐め、そのうちひざの上でまるくなったまま静かに眠ってしまった。
ネコは今までどんな風に暮らしてきたのか、心を許したかと思うと、急によそよそしくなったり、突然攻撃的になったり、こちらが何をしたわけでもないのに、警戒心をあらわにしたり、なかなかなつこうとしなかった。 うっかり気に入らないことをすると、態度を豹変させ、初めて会った日のようにその爪を振りかざし傷つけるのだ。
それでも、毎日一緒に過ごすうちに、ネコにはネコなりのルールがあって、そのルールが守られないと機嫌を損ねる、ということや、こちらには悪意はないけれど、ネコにとっては悪意と感じられる何がしかがわかるようになっていった。 日一日とガリガリだった身体もふっくらと肉付いていき、何かに怯えたように、いつもあらわにしていた警戒心もなりを潜め、きつかった顔つきも穏やかになっていった。
そんなある日、ちょっといらいらしていて、ついネコに八つ当たりをしてしまった。 いつものように脚にまとわりついてきたネコに、
「うるさいな。あっちへ行ってろ!」
と邪険に軽く蹴りつけてしまったのだ。 そんなに悪意があったわけでもなく、ほんのわずか、脚を当てるくらいの感覚だったのだが、ネコは見る見る表情を変え、部屋の片隅に逃げ込むとあの日に逆戻りしてしまった。 いくら声をかけても、がたがたと震え、怯えた目でこちらを見るだけで、出て来ない。
「ごめん。本当にごめん。もう2度としないから」
きっとネコは、そんな風に邪険にされ、挙句の果てに捨てられたのかもしれない。
「ほんと悪かったから。ね?だから出ておいで」
それから何時間も、ネコが出てくるまで、ずっとそこで見つめていたが、ネコは出てこなかった。 気が付くとそのままそこで寝てしまったようだ。寒くて目が覚めたが、腕の中だけが妙に暖かい。 見ると、腕の中に、ネコがまるくなって静かに寝息を立てていた。
そう言えば。 このところ、あれほど酷かった頭痛がしない。 しょっちゅう、鎮痛剤が手放せないほど痛みでのた打ち回っていたのに。
とげとげしい雰囲気も、ささくれ立った心も、今は鳴りを潜めてしまった。
「リラックスできてるから」
確かに、アナタを想うあたしの顔は常にほころび、緩んで、身体中の力が抜けていく。 見失うことも、見捨てられることも、なにひとつ心配しないで、心から安堵して過ごせたことは、今までなかったから。 狂おしいほどの愛しさに、胸を押しつぶされそうにはなるけれど、そんなときは身体中が愛で満たされるから、それはそれで幸せな痛み。
そういうアナタの顔も以前とは全く違っていることに気が付いた。 せっかくのイメージが壊れるほど。 あたしだけに向けられるその笑顔に、つられてあたしも頬が緩む。
ずっと、感情が麻痺したように、涙が出なかった。 苦々しい想いで、胸がいっぱいになり、吐き気ばかりがして、 涙など一滴もこぼれなかった。 悲しいのに、涙が出ない。 これほど苦しいことはない。 だからどんなに前を向いて歩いて行こうとしても、 力が足りず、振り向いてばかりで、立ち止まってしまう。
アナタとの逢瀬で、 お互いを愛で、欲しいままに求め、心を開いたあと、
一筋の涙がこぼれた。
ああ、これで、想いが浄化できるのかもしれない、 そう思ったけれど。
でもそれは、封印していた数多の傷を、掘り起こし、 私は分解されてしまった。
置き去りにされた記憶。 突き放された記憶。 吐かれたウソの数々。
お願いだから。 もう2度と私をひとりにしないで。 あの人も あの人も あの人も みんな約束したのに。 反故にされた約束ばかりが取り残されて。
涙が止まらない。
自分がそうだからと言って、相手もそうだと決め付けるのは愚かなことだ。 自身の到達度と、他者の到達度には常に差異があるのだ。
どんな想いで、その想いをセーブしてきたのか。
膨らみ行く想いに自身の身を苛まれ、 のみならず、相手に向ける刃を育てかねないことを恐れて。 出来るだけ小さな箱に押し込めて、蓋にカギをかけて。
膨らんだ想いが弾け跳んで飛び散ったあとの、 穿たれた穴の深さを気付きもしないのだろうか。
でも。
いまさら言ってみても始まらない。 いまさら言っても届かない。
抱えていた想いが溢れ出して止まらないときに、 書きなぐった言葉たちを拾い上げては、 その言葉の奥に潜む真意を誰よりもいち早く的確に探り当てて、 あたしを引き上げてくれる。
お互いの感情は共鳴しあうから、 負の感情ではなく、正の感情を循環しあうべきなのだ。 決して無理することなく、ありのままの形で、 ネガティブな感情を常に表裏一体であるポジティブな形へと変換する。 見方を変えればひとつの事象はいくらでも形を変え、意味をも変え得るから。
アナタからのたくさんの愛を受けて、 常に見守られ、保護され、何の心配も要らない毎日は、 とても幸せで、 あたしはまるで生まれたての赤ん坊のようだ。 ただ違うのは、 あたしは大人で、 自分で考え、 自分で決定し、 自分で行動を起こす、ということだ。 そのための後ろ盾として常にアナタがいてくれるから、 あたしはきっと高く飛べる。
アナタと出逢ったことで、あたしは生まれ変われる。 今ある苦しみは、 新しいあたしに生まれ変わるための痛みなのだ。きっと。
どんなに言葉を尽くしても。 どんなに想いを込めてみても。
どうしても伝わらないばかりではなく、 ネガティブに取られてしまうなら、 きっと、もう、その関係は発展していくことはないのでしょう。
結局、あなたも、あの人と同じだったのだ。
「そっくりじゃないか」
そう、親友が言ったように。
それでも、信じつづけたのは、いつかあなたが言った言葉に心動かされたから。
「俺を誰だと思ってんの。見くびられるのはごめんだね」
高らかに宣言したその言葉を、信じなければ良かったのかもしれない。
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