Spilt Pieces
2006年10月22日(日)  花火
先週末、地元で大きな花火大会があった。
通常十月の第一土曜日と決まっているが、
今年は珍しく大雨のため、翌週へと延びた。


彼の地元では、毎年恒例のお祭りがある。
十月の第一土曜日。
必ず花火と重なる。
だから、試しに誘ってみた。
「花火、延期になったよ。
見に来ませんか?」


返事はノーだと思った。
でも、「来年からはお祭りとかぶりそうだから、
行ってみようかな」と言って、
すぐさま宿の予約を済ませて愛知から飛んできてくれた。
泊りがけで来たけれど、
別に特別な関係を求めてくるわけでもなく、
一緒に花火に感動したり、
映画を観たり(観るものはちょっと趣味が合わないと思うけれど)、
ランチを食べたり、
買い物をしたり。
何だかとても穏やかな時間を過ごすことができて、
すごくすごく、嬉しかった。
性欲がないわけじゃない。
彼と初めてというわけでもない。
でも、やっぱり今は、
体の関係は怖いし、心と心の触れ合う時間を、
大事にしたいと思っているから。
それを分かっているかのような彼の態度に、
求められること以上に、深い気持ちを感じる。
暗い足元、
気をつけてと言って、
手を引いてくれるその暖かさに、
何よりも安心するよ。


「来年」という言葉に、緊張してしまう。
「今度の七月、市でお祭りがあるよ。
いい仲間ばかりだから、遊びにおいで」
「あ、そうそう、今年の十二月に、その仲間達と一緒に
飲み会するんだ。紹介するよ、ぜひ来て」
以前までと、別の人と付き合っているような錯覚。
それくらい、彼は優しい。
そして、先の予定を嬉しそうに話す。
「今度、ディズニーシーへ行きたい」
まだ来月の富士急に行ってもいないのに、
気が早い。
でも、なんかちょっと、嬉しい。


彼と、毎日寝る前に電話をするのが日課になってきた。
au愛用者の彼が、
私に合わせて一台ボーダフォンを契約。
Love定額にするため…ネーミングがやや恥ずかしい。
「一番安い料金プランにして、定額申し込んだら、
『その方以外とは話さないんですか』って、
店員さんに微笑まれてかなり恥ずかしかった…!」
そう嘆く彼の照れた様子に、
大笑いしながら、やっぱり嬉しいと思った。
「2年契約にしたんだ」
「何で?」
「2年契約にすると、機種かなり安く買えるんだって」
「ふーん…2年以内に別れる可能性だって大いにあるでしょ(笑)」
「…ひどいこと言うなあ。その場合は泣く泣く料金払って解約だな」
「はいはい、泣いて下さい」
「いや、大丈夫だよ、続くから」
「…知らなーい。あ、」
「ん?」
「浮気したら言ってね。遠いし調べようがないから自主申告!」
「え、しないよ」
「は?二股?」
「いや、浮気しないから報告の義務なし!」
「どうだか…」
「俺って信用ない?」
「うん」
「あーもう、いい!」
ばかな会話だなあ、と思う。


昨日今日と、ゴルフ&おじいちゃんの誕生日のため、
地元に帰省中。
だから連絡がつかなくて少し寂しい。
…寂しい?
何だかはめられているような気がしなくもない。
それでも、冷静な自分が目標。
ウダウダ言っていないで、
そろそろ恋愛以外のことに力を出そう。
混乱の時期もそろそろ終了、ということで。


あーカラーの勉強しなくちゃ。
ていうかまだ受験申し込みしてない!
早く来い来い給料日(情けない…)!
2006年10月07日(土)  はじまり
10月1日、彼が東京へ来た。
天気予報を見損ねていた私は、傘を忘れた。
彼の小さな折り畳み傘に入れてもらった。
「半径1m以内に近づかないで」
なんて、事前の約束、
あんな大雨の中では、意味がなかった。
我ながら、意図的ではないボケっぷりに、
内心ちょっとうんざりした。
むしろ、意図的にできるくらいの
余裕がある自分でいたかったのに。


つかず離れずの距離。
一緒に、上野のダリ展に並んだ。
人でごった返していた。
はぐれそうになるたび、
手を伸ばしては、
繋げない手をもどかしそうに握りしめていた。
そんな姿に、胸が痛かった。
絵のことは、よく分からなかった。
たぶん、元々芸術面での教養が足りないせいも、
あると思うけれど。
ダリと、ガラの、深い愛情で結ばれたような、
そんな表情と、絵が、
妙に心に響いた。
私は、何かを探していた。
大事にしてくれる手?
それとも、もっと別の、あったかいもの?


帰る間際、
「そろそろ返事がほしい」という彼に、
「やっぱりやめようか」と、言おうとしていた。
中途半端な気持ち。
自分が、こんな状態では、
何もうまくいかないと思った。
始まる前に失った方が、
ずっとずっと楽なことくらい、
もう私は知っていたから。
傷つけるのもだけど、
自分が傷つきたくなかった。
こんなにも、自分の望んでいることが分からないなんて、
生まれて初めてだった。
たくさんたくさん、考えて、
たくさんたくさん、思い悩んで、
夢にまでみて、
心と相談して、
それでも、結論は出なかった。
私は、何を望んでいるのだろう。
必要なものは、もしかしたら、断る勇気かもしれない、
…そんなことを思っていたけれど。


彼と、付き合うことにした。
もう一度だけ。


不安でたまらなくて、
正直に言った。
好きになれないかもしれない、と。
浮気したらごめん、とも。
だからやめよう…と、言いかけた。
そうしたら、彼は、
「不安を取り除けるように、努力するから」
「最初は、好きになれなくても構わない。チャンスをくれないか」
と、言った。
しばらく沈黙して、
「付き合って、みようか?」
って、すごくすごく、ずるい言い方で、返事。
ふりほどいた手を、もう一度、繋いだ。


結局、
言葉を、信じてみることにした。
過去の彼と話をしても、
今の彼のことは分からないと思ったから。


あなたが、変わらずにいてくれるなら。
今のように、愛し、必要としてくれるなら。
少しずつ気持ちが離れていくのを隣で感じるあの恐怖を、
もう味わわずにすむというのなら。
私は、
たとえあなたと趣味が合わないと思う瞬間があっても、
寂しさで耐えられない夜があっても、
両親を悲しませたとしても、
あの土地へ戻る勇気がまだないとしても、
それでも、
そばにいたいと願えるかもしれない。
そんなことを、思った。
もう、手を離さないでほしいの。
願っているのは、それだけなんだ。
もしそれが叶うなら、
私ももう一度、
あなたと一緒の時間を、
愛せるようになれると思うよ。


あなたが、照れたように私の本名を呼んだ。
私は、もっともっと照れて、沈黙した。
電話の向こうで、吹き出している。
「何でそんなことで、照れているんだか」
ささやかな、ばかみたいに、穏やかな時間。
私が1年前ほしかったのは、
ただそれだけだった。
ねえ、変わらずにいてくれる?
そんなこと、約束できるはずもないこと、
私自身、知っているはずなのだけど。


あなたは、キスが好きです。
私も、好きです。
だけど本当は、
あなたがそっと頬にしてくれる、
触れるだけのキスが一番好きです。
一番、ドキドキして、
胸が痛くなって、
切なさで涙が出そうになる。
手を繋ぐことよりも、
抱きしめ合うことよりも、
ただそれが嬉しいだなんて、
言ったらあなたは、
また「お子様だ」って、笑うかな。


来月、旅行に行くことにした。
初めて。
小さなペンションの、ツインルーム。
ご飯がおいしいんだって。
富士山が見える、静かな時間。
あなたともう一度お付き合いすること、
不安が消えたわけではないけれど。
とても楽しみです。
お互い体に気をつけて、
また来月、
元気にお会いしましょう。
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