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華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2003年04月12日(土)

春はまた来ぬ。 〜花散らし〜

<前号より続く>




リコは俺から離れ、足元へと移動した。
そして彼女を求めて勃つ俺自身を指で触れ、徐に口へ含んだ。

敏感な部分をより過敏にするごくソフトな舌での愛撫。
絶妙な感覚が声を漏らすほど心地良かった。

しかし、俺は女を攻めたい。


「ねぇ、69しようよ」
 「お客さんは・・・ダメェ」

「えーっ、何でぇ?」
 「・・・だって、私、絶対に舐められなくなっちゃう」


それでも69になる様に頼むと、リコは照れながらも了承してくれた。
肉付きのよい大きな尻が顔面に覆い被さる。

俺がリコ自身を指と舌で攻める。
彼女が危惧したその通り、リコはその度に口が離れて声を上げ、手が止まる。
俺が攻めるのを止めると健気にまた始め、攻め出すと止まる。
その繰り返しが楽しかった。


リコの反応に満足していた俺は間もなく、リコの口の中で果てた。


全ての処理が終わった後。


「ねぇ、時間まで添い寝してくれるかい?」
 

俺の甘えたい気持ちに、リコは快く応じてくれた。


 「お客さん・・・本当はしたかった?」
「ああ・・・リコちゃんだったら入れたまま抱き締めたかったな」

 「上手ね(笑)・・・でも答えてあげられなくてごめんね」
「そりゃ、嫌われたくないからね」

 「私ね、目標があるの」
「どんな目標?」

 「まずは、この店で売り上げトップになる事」
「ほう」

 「それから名古屋で一番になるの!」
「そりゃ壮大だなぁ(笑)」

 「それも、清々堂々とね」
「清々堂々?」

 「うん。私は卑怯な真似せずに一番になるの」
「なんでそんなに頑ななの?」

 「知ってるもん、本番やって指名勝ち取ってる娘がいる事は・・・」


ここのヘルスでは営業成績で扱いが変わるという。
売れっ娘は手厚くもてなされ、売り上げが落ちれば首を切られる。

大した容姿やテクも無く、客に対する態度も良くないのに次々と
指名を勝ち取る娘がいる。
そういう娘は客の話だと、客に掛け合って、追加料金を取って
『禁じ手』に及ぶそうだ。

当然、客は本番の出来る娘に流れていく。
リコはその禁じ手に頼らないで、指名獲得競争を勝ち取りたいと言った。


人間味の無い言葉を吐いたモデル事務所の社長を見返す意味でも、
彼女は自分の過去を振り切って、自分の価値として結果を求めているのだ。

手段を選ばない輩が多い中、随分と潔い宣言だ。


 「でもね、お客さんは本番したいよね?」
「そりゃ・・・今日の君みたいな娘だとね」

 「悪い気はしないよ・・・だってそれだけ感じてくれたって事だから」
「リコちゃん、そういう風に求められたらどうするの?」

 「しないよ(笑)・・・でも」
「でも?」

 「女だものね・・・私も」


男心を何とも揺さぶる台詞だ。
こういう含みのある言い方も、実は次回の指名獲得の手管であろう。
男に期待を持たせて、次回から自分のもとへ通わせるのだ。

男の下心は、勝算があるからこそ強く疼く。
その疼きを巧妙に利用する小悪魔の仕業。



 「今月、売り上げ一番になれるかなぁ」
「リコちゃんなら大丈夫だと思うがね」

 「なぜ?」 
「小悪魔だからね」

 「うちの店にはもっと上手の悪魔がいるわよ(笑)」


談笑は尽きる事はなかったのだが、部屋を出る時間が来た。


 「天気予報、今夜から雨だって言ってたね」
「そうかぁ・・・じゃもう散っちゃうね」

 「・・・ああ、桜かぁ」
「もう行った?お花見」

 「・・・この仕事始めてから行ってないなぁ」
「そうかぁ、忙しいんだ」

 「だって借金返して貯金しなきゃいけないから」
「貯金かぁ・・・何に遣うの?」

 「保育士の資格が取りたいの」
「保母さんになるの?」

 「うん・・・卵巣取っちゃった時に考えたんだー」


両親が働いている関係で寂しい少女期を過ごしたという彼女は、
その入院で周囲の人々を観察した際に考えたという。


 「母親が入院している子どもの寂しそうな姿が目に焼き付いているの」


手作りのお菓子を食べさせてあげられる保育士となって、
昔の自分と同じような思いをしている子どもの寂しさを癒してあげたい・・・と。


生きていく上で最も辛いのは、飢える事と寂しい事だと聞いた事がある。

自分から行動を起こせない年齢の子どもは、
腹が減っても寂しくてもじっと耐えるしかない。


両親が忙しく、また一人っ子だった俺。
幼い頃から寂しさだけはどうにも我慢できなくて、友達や従兄弟が帰宅した後、
部屋で一人隠れて泣いていた過去がある。

そんな子どもへ、自分の特技を生かした“もてなし”をしてあげたい・・・
パティシエというリコの夢はさらに進化し、具現化した。


新たな夢を話している時の、あの雑誌には写っていなかった瞳の強い輝きが
とても魅力的だった。

そして医療費などの借金は返済できたので、
今はその資金稼ぎのために続けている、と告白してくれた。
だから私は決してこの業界でズルズルと行かない、と言い切った。


 「あくまでそのつもり、なんだけどね(笑)」


きちんと次の世界を見据えているリコ。
近い将来、リコという源氏名を捨て本名の彼女に戻る日が来ても、
きちんと前向きに生きていけるだろう。

そして彼女なら自分の夢を『清々堂々』と叶える事が出来ると信じている。


モデルとしての絶頂期。
病気を経験した絶望期。
風俗へ転身した転換期。

様々な経験が、彼女を人間としても大きく、分厚くさせた。


リコの笑った表情はきっとその人間性が加味されて、
モデル時代の理論的な『見せる笑み』よりももっと魅力的に映っていた。




カーテンの外に出る時。
リコは俺の右頬に軽くkissして別れを告げた。
俺も再会を約束して、分厚いカーテンの外へ出た。








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エレベーターを降りてビルの外へ出た。
ふわっと漂う湿気を感じる。
見上げると、派手なネオンのはるか上空から無数の雨粒か落ちてくる。
足下を見ると水溜りが出来ていた。降り出して時間が経っている。
そしてまだ止む気配は無い。

学校の入学式まであと2〜3日だったのだが、花散らしの雨が容赦なく
街一帯に降り注いていた。

この時期にしては珍しく、夕立のような激しい雨。

桜の樹の下には、おびただしい花びらが水溜りに敷き詰められていた。


今年の桜は、この雨で終わる。
雨に打たれて咲かせた花を落としても、また来年に次の花を咲かせるために、
一年掛けての準備に入る桜の樹。


人生もまた、今の花が散れば次の花を咲かせる準備を始めればいい。
生きている限り、季節は巡りめぐって春は来るのだから。


俺の中で、微妙にリコの生き様と思い重なった。



 ☆ 毎度のご訪問&ご高覧ありがとうございます。
   今回は人生の起伏を若くして味わった風俗嬢のエレヂィです。

   人生にある「三つの坂」という言葉があります。
   「上り坂」、「下り坂」、そして「まさか」というそうです。

   リコは卵巣摘出・肥満と大きな挫折をしましたが、前向きに立ち直り、
   そこから得た経験を自分の夢に繋げるよう努力を怠らない、
   本当に明るい娘でした。

   彼女は今も名古屋地区のどこかのヘルスで働いているでしょう。
   今度、俺も落ち込んだら・・・
   また会いに行ってエナジーを分けてもらおうと思っています。

   お気に召しましたら、投票&My登録をよろしくお願いします。
   次回の「華のエレヂィ。」も楽しみにお待ちください。   

2003年04月10日(木)

春はまた来ぬ。 〜湿った肌〜

<前号より続く>



ベッドに横になるように促され、俺は仰向けに大の字になった。
大柄なリコは俺に添い寝する。
背の高さがほぼ同じなので、やはり狭かった。

リコの舌が俺の首筋から胸板、乳首へと流れていく。
微妙なタッチでの舌先は、まるで筆先のように俺の性感をくすぐっていく。


 「気持ち良いんだぁ・・・」


リコは俺の反応を見て、くすぐるような声で囁く。
俺は頷く。


そして俺の太腿を掌で撫で、すでに勃っている俺自身に触れる。


 「元気良いねぇ、もう熱く勃ってるよぉ・・・」
「リコちゃんが欲しいて言ってるよ」

 「嬉しい・・・ねぇ、私も可愛がって・・・」


今度は俺がリコを仰向けに寝かせた。
長い濃茶の髪を指で撫で、唇でリコの耳、首筋、そして乳房を軽くなぞっていく。

くすぐったいのか、目を閉じてじっと感覚を受け止めているリコの表情が可愛かった。

俺はリコの小振りな乳首に振れ、軽く摘んで転がす。
途端に熱を帯びた溜息が漏れた。


 「お客さん・・・上手だね」
「そんな事無いよ、リコちゃんが敏感なだけだって・・・ここが弱いんだ?」

 「・・・聞かないで・・・分かるでしょ?」


反応は分かっているのだが、分からない振りをしてみせる。

リコをさらに深く抱き寄せ、耳を舌先で攻める。
そして乳房を大きく揉み、また乳首を軽く摘んで転がす。

いつしかリコは背を反らせて感じていた。


「まだ胸だけだぜ・・・いつもこんなに反応しているの?」
 「・・・いつもは私がしてあげるだけ・・・こんな事滅多にないよ」


軽い喘ぎ声を漏らしつつ、息も絶え絶えに答えた。

上半身を攻めた後、今度はリコの長い足を筋に沿って、指先で軽くなぞる。
その付け根にある、リコ自身にはまだ触れない。

リコは無意識に腰を浮かせ、うねらせていた。


 「焦らさないで・・・声が出ちゃう・・・恥ずかしいの」
「いいじゃん、出しちゃえば」

 「だって、聞こえたら外から覗かれちゃうよぉ?」
「声、我慢してるんだ?」


リコは一度頷いた。


 「ねぇ・・・お願いがあるの・・・」
「何?」

 「私のアソコを触って・・・でね、でね・・・」
「その続きは?」

 「・・・」


聞こえない程のか細い声で、イカせて・・・と言った。

俺は指をリコ自身に滑り入れた。
その囁きや要望が単なる安い芝居ではない事は、彼女自身が何よりも証明していた。

滴るほどに愛液がしみ出していたのだ。

その愛液のぬかるみを指で触れる。
その瞬間に強く腰を反らせた。


「外が良い?中が良い?」
 「・・・外」


俺はリコ自身の突起に指を這わせ、あらゆる角度から擦り上げた。

リコは強く眉間に皺を寄せ、本当に切なげな表情で俺を見つめる。
そして時折目を閉じて、下半身から全身に迫り来る快楽に酔う。

俺はリコの突起を皮の上から指先で擦りあける。
そして奥のぬかるみから愛液を指で拭い、また擦る。
ベッドに敷いてあるシーツ代わりのバスタオルをギュッと掴む。


 「・・・どうして?どうして?」


まるでうわ言のように繰り返す。


「何が?」
 「凄いのぉ・・・もうやだぁ・・・」

「感じすぎて恥ずかしいんだ?」
 「・・・」


自分が感じてしまう姿を愛する男ならまだしも、
一見の男に見られるのがどうしようもなく恥ずかしいらしい。

俺にはリコがとてもいとおしく思えた。


「イキそう?」


強く俺の右肩を掴むリコは、何度も頷いた。
俺は指先の動きを早め、同時にリコの乳首に吸い付いた。

大柄なのでもの凄く強い力だったが、俺はそれ以上の力で組み付いた。
リコは全身の力で身体を反らせ、そして漏れ出す声を押し殺して・・・果てた。

一気に脱力したリコ。
うっすらと甘い香りを放つ汗をかいていた。
そして彼女から抱きついてきた。しっとりと湿った肌が心地良い。


「ねぇ、いつもこんなに感じているの?」
 「・・・こんなんじゃ身体が持たないよぉ・・・」

「俺も凄く興奮したよ・・・本当に入れたい位だよ」
 「・・・ダメだよ(笑)ここはヘルスだから」

「分かってるけど、感じているリコが凄く可愛くて、さ」
 「・・・ダメェ、困らせないでよぉ」

「何で困ってるの?」
 「・・・意地悪な人(笑)」



<以下次号>








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2003年04月07日(月)

春はまた来ぬ。 〜手術痕〜


彼女は俺に背中を向けてスリップの紐を肩から滑らせ、真下へ落す。


「身長、本当は幾つなの?」
 「172〜3じゃないかな?」

「でも168って雑誌に書いてあったぞ」
 「・・・そう書かないと、背が高すぎてお客さん来ないもの(笑)」



俺は背の高い女性が好きなのだが、
リコが自らの経験上から話すには、背の高い女が苦手な客が多いのだという。

そのために逆に低くサバを読む苦心を感じる。


風俗に来る客というのは、本当に気の弱い男が多い。
突き詰めて考えると、金を払って人間の本能である性欲を果たすという
行為自体も情け無いのだが。

本来、Sexに必要なのは愛情や快楽であって、金銭など必要ないはずだ。


 「だからね、大柄な私を見た途端にチェンジを申し出るお客もいるの(笑)」


気が弱くとも、男は男。
金を払って買った女にまで見下されるのは我慢ならないのかもしれない。

小柄な女性がもてはやされる、ロリータ系の歌手やタレントが人気がある、
相変わらず減らない少女への犯罪行為・・・
こんな風潮もどこか『男』がさらに弱くなった証拠なのかも知れない。


リコは下着を取り、産まれたままの姿になった。
身体の線は全体的に崩れ、とても『元モデル』とは思えない。
俺も人の事は言えないのだが・・・

狭いシャワー室で向き合って下半身を洗ってもらう。
リコの身体に目をやると、不思議な光景を見てしまう。


「あれ?ヘソ、2個あるじゃん」
 「これ?ああ(苦笑)」


リコの腹部にはヘソのすぐ下辺りにもう一つくぼみがあった。
困った様な顔をしたリコに、俺は軽口を思わず謝った。


 「いいよ、これね・・・取ったの」


昨年の5月。
某人気歌手が卵巣腫瘍で片方の卵巣を摘出したというニュースが流れた。

実は彼女も同じ病気で左側の卵巣を摘出していたのだ。
二つ目のヘソはその手術痕だった。

卵巣・子宮などの女性器系の病気で悩んでいる人は思ったよりも多く、
彼女の周囲にも何人も治療を受けている友達がいるという。
リコはその手術痕の経緯を話してくれた。


まだ本名だった彼女がパティシエを目指して製菓の専門学校へと通っていた頃。
そこのオーナーと知り合いのモデル事務所社長にスカウトされた。

しかしモデル志願ではなかった彼女は断ったものの、社長に熱心に口説かれ、
その専門学校のパンフレットに限ってモデルを勤めることにしたという。

そのパンフレットが広告業界の目に留まり、次々と仕事の依頼が舞い込む。
仕事の面白さを理解し始めた彼女は、間もなく本格的にモデル業を始めた。

勉強熱心な彼女は精力的にモデル業を勤めた。
九州圏中心の雑誌やパンフレット、時にはテレビCMなどにも登場したという。
あっという間にモデル事務所のトップモデルとなった。

決して家庭環境に恵まれた訳ではなかった彼女はモデル料を貯金して、
休学していた製菓学校への月謝に当てる計算をしていた。
親思いの優しい女性でもあった。


20歳になる前の夏頃。
急激な体調不良を訴えた彼女は婦人科で診察を受ける。
診察の結果は「卵巣腫瘍」。
野球ボール以上に腫れ上がった卵巣の摘出手術が必要だといわれた。


   これで赤ちゃんが埋めなくなる?


病床で女性として深刻な状況に人知れず心を痛める。

医師の説得を受けて、心配を掛けまいと親に内緒で入院した。
そして摘出手術を受け、身体に一生消えない傷が残った。
夢だった製菓学校への貯金は治療費に消え、さらに借金が残った。


そして最も辛い現実が待っていた。

投薬やストレスでホルモンバランスが崩れ、太り出した。
最盛期にはモデル時代よりも15kg以上太ったのだという。
その後もなかなか体調が戻らず、ダイエットもままならない。


華やかさの陰で、結果だけがもてはやされる世界。
どんな理由があるにせよ、醜く肥えたモデルには二度と仕事依頼が来なかった。


 「そんなに太って・・・君には違約金を貰いたいくらいだ、身体を売ってでも払え」


モデル事務所の社長は人として許せない言葉を残して、彼女と連絡を絶った。


 「どうしたの?こんなに太っちゃってー」
 「モデルだって聞いてたけど・・・嘘だったのか?」
 「見る影無いねー、興ざめしちゃうなぁ」


準備された振袖には袖を通さず、ゆったりしたサイズのスーツを着て出席した成人式。

故郷の成人式で再会した親友からは、冷やかしの言葉を浴びせられた。
自分の一生を掛けた病魔と対決したのだ、と・・・
冷たい言葉を吐きつけた旧友にも本当の理由は言えなかった。

そして彼女は間もなく故郷を捨てた。


彼女は憶えていた。
モデル事務所の社長が吐き付けた、女としてどうしても許せない言葉を。


 『身体を売ってでも(違約金を)払え』


実際に払う事は無い。
第一、社長は彼女と関係を絶ったのだから。

しかし彼女はその言葉にひどく憤慨していたのだ。

モデルは「女らしさ」を魅せる商売だ。
その女として生きることさえ否定されたかのような冷たさを感じていた。


彼女は風俗街という知識と、知人の居ない事を考え合わせて名古屋に降り立った。

そしてその足で即入寮可の風俗店に面接に赴く。
身体の線は崩れているとは言え、元モデルである。

面接での自分の見せ方は、度重なるオーディションで鍛えた。
男を相手にする術は、アルバイトだった水商売でも身につけた。

そして彼女は「リコ」となり、この店に勤めることになったのだ。

それから体調不良などで休んだ時期も含めて3年になるという。


「大変だったねぇ」
 「でもいいよ、もう過去の事だし。二度と戻る事もないから」

「体調は大丈夫なのかい?」
 「おかげさまで(笑)・・・卵巣も片方は生きてるから子どもも産めるし」

「そうか、だったらまだ救われるね」
 「ふふっ・・・だから生でやっちゃマズイのよ(笑)」


煮詰まった話題の中で、リコは悪戯っぽく笑って見せた。



<以下次号>








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2003年04月06日(日)

春はまた来ぬ。 〜個人的趣味〜


風俗誌の広告を飾る言葉の中でも、俺が特に弱いものがある。
この言葉が目に留まると、なぜか心の琴線に触れる。


『長身のモデル体型』という宣伝文句だ。


この「華のエレヂィ。」にも何人かのモデル体型の風俗嬢が登場した。
それは俺がこういう女性が外見上の趣味で、からきし弱いからでもある。

どうせ安くない料金を払うなら、自分好みのいい女に相手してもらいたい。
俺の場合、その基準は「表情」と「スタイル」になる。

美人でも冷たい女性は嫌なので、写真での表情でも明るい女性がいい。
そしてモデル級のスタイルならば最高だ。

当然、実際に付き合う女性にはこういう条件は当てはめたりしないが、
一期一会の風俗嬢を選ぶ基準としての『趣味』は確かに重要だと思う。




南からの桜の便りが連日テレビで紹介されている頃。
名古屋はまだ蕾が膨らみ始めたくらいだった。
暖かい日差しと冷たい風とでまだまだ春になり切れていない時期だ。


営業途中の空き時間。
住宅街の中にある児童公園の駐車場。
うららかな午後の日差しが、俺の眠気を誘う。
いつものように車内で眺めていた風俗情報誌で一人の女性が紹介されていた。


純和風の顔立ちで表情が明るく、手足も長い。
次々と展開されるグラビアのセクシーポーズも決まっていて、動きに無駄が無い。

彼女の源氏名はリコ。
紹介されていた経歴では「元モデル」のヘルス嬢だった。


168センチという身長もさる事ながら、彼女の雰囲気に興味を持ったのだ。

早速店に電話してみた。
この業界にしては珍しく、温和で丁寧な口調の受付が応対してくれる。


 「リコちゃんですか?本日は夜7時からの出勤になっておりますが・・・」


俺は夜9時に予約を入れた。

電話を切った後、車のシートを後ろに倒して身体を預けた。
そしてビニール張りの天井を眺めながら、ぼんやりと思いを馳せていた。

リコの雰囲気は昔好きだった女に似ていた。

思いが全く通じなかった、片思いの苦い思い出。
今でもその苦味は褪せないが、徐々に微笑ましい懐かしさに昇華しつつある。


店の規定で予約の一時間前に一度確認の電話を入れる事になっている。


 「リコをご予約の平良様ですね・・・申し訳ございません」


突如生理が始まったので、本人の申し出で急遽生理休暇を取ったという。


 「今夜は他の女の娘も多数出勤しておりますが・・・」
「結構です」


気分を悪くした俺はぶっきらぼうに電話を切った。

ああいうタイプの女には、どうにも振られる運命にあるらしい。
しかし店の応対から見ても、悪い店では無さそうだ。


10日後。
数日前に桜前線が通過した名古屋市内の桜は見事に満開である。
各所ではお花見に盛り上がる酔いどれ集団を見かける。

俺は再び店に電話を入れ、リコを夜9時に予約した。

8時前に確認の電話を入れた。


 「分かりました。それでは9時にお待ちしております」


今日はきちんとお相手してもらえるらしい。
店の場所を確認すると、栄のビジネス街だった。
大手銀行やビジネスビルと風俗店が混在する、一種異様な地帯だ。

駐車場の心配があったが、幸運にもお花見に赴いているのか空いていた。
路上駐車スペースに縦列駐車し、サイドブレーキを引いた。

早速店の看板を探し出し、ビルに入る。
ビル内の全テナントが風俗店という風俗ビルである。
中の細い通路には、各店舗の広告や系列店のチラシなどが乱貼りしてある。
その通路の突き当たりに小さいエレベーターがある。


俺は4階のボタンを押す。
軋みながらドアが閉まり、やがてゆっくりと上昇し出す。

ドアが開くと、そこはすでに店内だった。


 「いらっしゃいませ!ようこそ!」


元気な・・・というよりも威勢の良い店員の歓迎を受けながら、
俺は靴を脱いで待合室に入る。

そこで靴の番号札を預かり、料金の支払いを済ませてしばらく待つ。

俺以外に数人の客がいたが、場所柄か背広姿のビジネスマンばかり。
今日は土曜日だったが、仕事帰りなのだろうか。
決して互いに他の客と目を合わせようとしない。
その中で俺は落ち着きなく周囲を見回したり、雑誌を手に取ったりしていた。

15分ほど待っただろうか。


 「リコちゃんをご指名のお客様、どうぞカーテンの中にお入りください」


俺はその案内に従って、分厚いカーテンの中に入った。


 「いらっしゃいませ、リコです」


可愛い声の主は、紛れも無くグラビアと同じ微笑みをたたえた彼女だった。
俺と全く目線の位置が変わらない。やはり長身だった。


「こんばんわ」
 「こんばんわ、私、初めてですよね?」

「初めてなのに指名しちゃって、生意気だったかな?」
 「ううん、嬉しい」


リコは笑顔で俺の腕に絡みつき、部屋へと案内してくれた。

部屋はやはり必要最低限の広さしかない。
リコはベッドに腰掛けて、俺に隣りに座るように促す。


 「お客さん、雑誌か何かをみたの?」
「ああ、いつも読む情報誌でね」

 「あの写真ね(笑)実は3年半前の奴だからね・・・見る影無いけど」


メントールのタバコを燻らしながら、あの掲載写真は現役モデル時代の
宣伝写真だったと舌を出した。

その現役時代の写真と比べても、現在のリコは一回り太っている。
スレンダーなあの雑誌の写真と比べても、顔も体型も丸い。


 「だからあの雑誌を読んで来るお客さんには詐欺だ!って怒られるの」
「詐欺とはひどいねぇ(笑)」


姉御系のさばけ方からか、自虐的な言葉にも悲壮感は感じなかった。

でも高い金を払って駆けつける一見の客からすれば、
今のリコでは「期待外れ」と受け取られても仕方ないかも知れない。
風俗の客にとって大事なのは、嬢の人柄ではないからだ。


 「早速シャワー、入ろうか?」


リコはすっと立ち上がった。
背筋の伸びた立ち姿は、さすがに美しい。一種のオーラを感じた。



<以下次号>








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