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華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2003年03月18日(火)

続・18歳。 〜サヨナラ、少女〜

<前号より続く>



彼女は身体を大き目のバスタオルで拭き、その産まれたままの姿でベッドに倒れこむ。
冷蔵庫から冷えた烏龍茶を取り出し、プルタブを引いて喉を鳴らしながら一気に
飲み干す。


 「・・・生きかえるぅ」
「俺の分は?」

 「冷蔵庫から出せば?」


その冷たい言葉を受けて、俺はスポーツドリンクを取り出して飲んだ。
冷えた液体の塊が喉から胃へと流れ込んでいくのが分かる。


俺はベッドに横たわり、ユキエの濡れた髪に触れた。
手櫛で髪を弄り、その先から背中を指先で撫でる。


「・・・半年前と変わったね」
 「・・・そういえば・・・お客さん、名古屋の人だっけ?」

「そう。いろいろ話を聞いたよ。思い出した?」
 「・・・どんな話?」


若い母親がRIKACO似だって事。
カラオケが大好きで、将来は歌手になることを夢見ていた事。
今後はカラオケで得意な歌を歌ってもらうと約束した事。


「いっぱい聞いたよ(笑)憶えてないだろうけど」
 「・・・わかんない、でも・・・」


彼女はその次の言葉を飲み込んだ。
俺も深くは追求しなかった。


 「・・・こんなお兄さんみたいなお客ばかりだと良いんだけどなぁ」


唐突にこんな事を呟いた。


 「なんでさ・・・男って、みんな同じなんだろうね・・・」


この娘もどこにでもいる普通の女の子だ。

それが風俗嬢だからと客の立場で蔑み、なじり、説教したり小馬鹿にする。
正当な御託を並べるそのくせに、性欲処理だけは妥協無く済ませる。

金を払っていると大きな気分になり、無理難題を押し付ける。

濡れてもいない彼女自身を不潔で乾いた指先で弄り、指を入れてくる。
痛みや不快感で声を上げても、本当は嬉しいんだろう・・・とほくそ笑まれる。


『男』は何も客だけではない。


彼女の入店当時には部外者まで参加してきた「本番講習」。
今では完全に公私混同したオーナーや社長との愛人関係。

客、社長、オーナー・・・
みんな、若い女の肉体で性欲を満たしたいだけなのだ。


ユキエが18歳にして毎日直面している、男という性の汚い縮図。

俺はこういう遊びをしている傍らで、男の性には辟易する事がある。
今宵ほど男という性を見損なった事は無い。
今宵ほど男という性を恨めしく思った事は無い。
そして、自分もまたそんな性の一人だという事実が疎ましく、哀しく思えた。


シーツに包まってる、ユキエを抱き寄せた。
彼女は俺の胸元に顔を埋めた。

俺はふと視線を下げ、彼女の顔を見た。
ユキエは俺の胸元で、力無く目を開いたまま視線を遠くにやっている。
本当に寂しげだった。

右手でシーツの端をきつく掴んでいる。
あの頃と同じ、拭いきれない不安からだろうか。


好きこのんで、男に身体を預けている訳ではない。
彼女が生きるために、生活のために、金銭と引き換えに肉体を差し出す。


こんな表情で客の性欲処理が早く済むのを待っているのか?


完全にユキエを抱く気が失せた俺は、どうにもならない憤りに任せて、
ユキエをさらに強く抱きすくめた。
驚いた風の彼女だったが、俺に身を預ける。


間もなくタイマーが鳴った。


 「・・・まだイッてないじゃん」


ユキエは俺の股間に不意に顔を埋め、口で咥えた。
根元を指先でしごき、唇と舌で亀頭辺りを攻め出す。

あの頃には無かったフェラチオのテクニック。これも成長の証だろう。

くすぐったいし、気持ち良いのだが・・・・


「ゴメン、すぐにイケそうにないから・・・」
 「でも延長は出来ないよ」

「なぜ?」
 「この後予約が3軒入ってる」

「もう日付変わったよ?」
 「・・・朝まで働く。だから、早くイッて!」



俺は股間に顔を埋めるユキエの頭を離した。


もういい。
もういいよ。


俺は声に出せない気持ちを押し殺して、風呂に入った。
後から入って来たユキエは、シャワーで念入りに彼女自身を洗っていた。


 「・・・もうすぐ生理だし、ちゃんとしてないと・・・」
「生理中って仕事はどうするの?」

 「やってるよ」


海綿を膣の奥に詰めて、そのまま出勤するという。


 「本番は難しいけどね・・・奥まで入れられないし」
「休めないの?」

 「・・・だって休んだら居場所が無いもん」
「居場所が無い?」


半年前のユキエの言葉を思い出した。

家に帰りたくないから、と友人の家を泊まり歩いていた、あの頃。
安心できる女友達は実家が多いので長居が出来ないでいた。
独り暮らしの多い男友達には、宿代代わりに自分の身体を預けていた。

男相手に自分の身体を『活用』する事を憶えた。

デタラメな生活を続けていた半年前。
きっと生活は格段に良くなっただろう。

でもあの頃のまま、ユキエには事務所以外に帰る場所・・・
いや帰りたい場所が無いのだ。


 『・・・一番最初に出勤してきて一番最後まで店に居るの。それも休まないし・・・』


ルミは怪訝そうにユキエの事を俺に話していた。

ユキエはわざわざ一番乗りで出勤しているのではない。
彼女には、店しか自分の身を置く場所は無いのだ。

借金に押しつぶされそうなルミの苦しみも理解できる。
しかし自分を受け入れてもらえる場所がないユキエの苦しみの深さは非難できない。



俺は着替えを済ませ、ユキエと308号室を出た。

そして俺とユキエはなぜか無言のままエレベーターに乗り、
1階のエントランスで別れた。
何のお礼も、挨拶も無いままだ。

俺もユキエに振り向かなかった。
前回、わざと元気良く手を振って別れたのに、この落差は滑稽だ。



この世界でしぶとく生き抜くために、愛人の立場を巧妙に利用する術を身につけた。
この世界で生き抜くことを選択したユキエ。

半年前の、あの少女はもういない。








↑エンピツ投票ボタンです。宜しくお願いします。




車のエンジンをかけた。
FMからは洋楽のヒット曲が賑やかに流れてくる。
DJの軽やかな英語交じりのトークで、次のリクエスト曲を紹介している。


午前1時前。
遠くに臨海工業地帯のライトアップされた工場群が浮かび上がっている。

優しく辺りを流れていく潮風。
賑やかなホテルのネオンが周囲の住宅まで照らし出す。

決して健全ではないこの空間。
俺は逃げ出すように、駐車場から車を出した。



次にユキエがデリバリーされるのは、どんな男のもとなのだろうか。

彼女が仕事を終えるのは、夜明け頃になろう。
その後には、どちらかの愛人が待っている。


『今度遊ぶ時に、本番すればいいじゃん』
こんな台詞を吐いていたあの頃。ここまで彼女が成長しているとは思えなかった。


成長という、転落。


男という性に翻弄されながら人生を送る18歳。
どんなに男に囲まれていても、あの寂しげな表情は消えない。


俺は携帯電話に登録しておいた店の番号を躊躇いも無く削除した。

もう二度とあの少女に会うことも無いだろう。

これ以上成長した彼女の姿は、痛々しすぎて見るに耐えないと感じたからだ。




 ☆毎度のご訪問、ご高覧ありがとうございます。
  今回は旧作『18歳。』のユキエ編の続編です。

  身の置き所の無かった孤独な少女は、半年の間に成長していました。
  しかし決して幸せになっていた訳ではなく、むしろ汚れていました。
  全ては周囲の男に翻弄され続けた、無垢な少女の馴れの果て。

  身体を取り巻く男の数が増えても、より孤独になっていく。
  このあまりに不条理な反比例は、
  ユキエを今後どのような女性にしていくのでしょうか。

  お気に召しましたら、投票&My登録をよろしくお願いします。
  

2003年03月17日(月)

続・18歳。 〜不機嫌の真相〜

<前号より続く>



紛れも無くユキエの声だった。
風呂場でエコーの掛った彼女の声だった。


「・・・何かあったのか?」
 「・・・」


実はユキエは客に八つ当たりしている事を自覚していたようだ。
たまたま相手が俺だった、と言う事らしい。

熱めの湯船の中で俯いたまま、押し黙る。


「いいよ、話せよ」
 「・・・あのね、さっきの客がウザかったの」


俺の直前に就いた客は、こういう世界の遊びの意義を履き違えている中年男だった。
彼女を「売女」呼ばわりして詰り、自分の金で飯が食えることを何かと誇張した。
必死で耐えた彼女も、力ずくでベッドに押し倒され、絡みつく。


 「でさ、無理やり生で本番しようとしてきたから・・・」


俺が悦ばせてやる、と圧し掛かる中年男のみぞおちに下から踵で一撃を加えた。
男がひるんだ隙に、事務所に救援の電話を入れたのだという。


「その男、どうなったの?」
 「・・・知らない。でも無事には帰れないよ、きっと」


すぐさま救援に駆けつけたのは彼女の事務所の社長だったという。
ユキエ専門の運転手としてホテルの駐車場で待機していた。


 「・・・あの人、根っからのヤクザだからさ。血相変えて飛び掛って・・・」


社長が男に制裁を加えている間に、ユキエは服を持って脱出した。
服の中で着替えたものの、自分の気持ちを落ち着かせる間まではなく、
次の客だった俺の元へ駆けつけたのだ。

彼女の不機嫌さには、こんな経緯があった。


 「あたしさ、元レディースだったから喧嘩には自信あるんだよね」
「へぇ、どんな感じだったの?」

 「みぞおちの下に拳を入れるの・・・こうやってね」


俺の胸元に突き入れるように拳を突き出す。

しかしユキエの拳は、箸より重い物が持てないほど小さく、か細い。
これで男を殴ったら、この拳のほうが折れてしまうようだ。

柔らかすぎるほどの白い肌が印象的な腕。
タバコを圧し付けた後もない手の甲。
どうみても一度も人を殴った事も無い拳。

残念ながら、見え透いた嘘を見逃すほど、俺は気が利かない。


「で、事務所の社長とはどういう関係なの?」
 「・・・付き合ってるよ・・・だからあの客、タダじゃ済まない」

「付き合ってる?」
 「・・・うん、愛人」

「相手は結婚は?」
 「・・・してるよ、両方とも」

「両方?」
 「・・・他にオーナーとも、ね」

「それって・・・その二人は三角関係?」 
 「・・・なのかな。でも、互いは知らないよ」


何のためらいも無く、秘密を暴露した。


ユキエは元々オーナーである熟年の暴力団幹部と愛人関係にあったが、
それを知らない社長が彼女を口説いてきた。
オーナーとは違い、容姿端麗で羽振りの良い社長とも関係を結ぶまでには、
長い時間は掛らなかった。


「大丈夫なの?ばれたら恐ろしそう・・・」
 「・・・わかんない・・・でも互いに関係あるから・・・きっと大丈夫」


力が拮抗する両者の間を、勝手気ままに泳ぐ若い女。
一番偉い者は、金や権力を持つ者ではないのだ。


「凄い人らと愛人関係なんだな」
 「・・・まあね。愛人だから良いんだけど」

「二股の愛人かぁ・・・」
 「良い立場だよ。他の女よりも手当ても多くくれるしさ・・・」


愛人の恩恵にあやかるユキエは、冷めた口調で呟きつづける。


「凄まじいなぁ・・・」
 「いいんだって、どうせ本気の付き合いじゃないんだしさ」

「まあねぇ」
 「もし本気ならさ・・・客と本番までやらせて平気な奴なんていないでしょ?」


この言葉だけは彼女の体温が込められていた気がする。

女にとって、身体の接触は男が考える以上に深い意味を持つ。
こういう仕事上、客とサービスとしての身体の接触があるのは致し方ない。

店の連中の肉体ではなく、そんな『仕事』に対するのいたわりの一言が欲しかった。


ユキエが求めていたものは、愛人としての地位ではなく、人の温もりのある愛。
愛人どもが本音でのいたわりの気持ちや温もりを持たないのを、
すでに見切っているのだ。

社長もオーナーも、確かに他の誰にもばれないように色々な施しをしてくる。
でも、自分への愛情は本気ではない。
ただ18歳の若い肉体を遠慮なく味わいたいだけだ、と。

その代償として、他の娘には無い高額な「手当て」とより厚い「保護」があるのだ。

対するルミはそれを知ってか知らずか、その不公平な扱いに憤っていた。


店の売り上げに貢献する普通の立場の娘。
愛人として身体と引き換えに庇護を受ける娘。


どちらの立場が強いのかは、すでに明白だった。


「もう出ようか?」


話が一段落したとき、俺は風呂から出るよう声を掛けた。
すでに随分な時間が経っていた。

ユキエは少し湯あたり気味だったが、心の中身を話してすっきりとして様子だ。



<次号に続く>

 ☆投票ボタンは最終話にあります。



2003年03月16日(日)

続・18歳。 〜ユキエ再び〜

  この物語は『18歳。』の続編になります。
  未読の方は、旧作を先に読まれることをお勧めします。

    『18歳。』



『たわわに実る水蜜桃』より続く>



一台の黒いミニバンが俺の車の脇に滑り込み、乱暴なブレーキングで停まる。
そこから降りてきた若い女は、俺の車の後ろから助手席側に回り込む。

女はいきなりドアを力強く開け、無言で俺の車に乗り込み、
強くドアを閉め、大きく息をついて無愛想に真っ直ぐ前を向く。


『期待しないで待ってる・・・』
前回の別れ際、俺はユキエの意地悪な台詞を覚えていた。


半年前のたおやかな黒髪のクールな美少女は、あの頃のままだった。

しかしあの黒髪はヘアマニキュアで明るい栗色になっていた。
そして軽くパーマを当てているらしく、緩やかなウェーブを描く。
チラリと覗く耳には、チェーンピアスが揺れている。

あの頃には無かったアクセサリーの類いが、時間の流れを感じさせた。


香水と煙草の悪臭や染み付いた男の体臭らと混ざり合ったようなきつい匂いが
俺の車内にいきなり充満する。
はっきり言って悪臭に近い。


実は当時の懐かしさを彼女と共に味わいたい気持ちだった。


しかし一日に何人も相手をする風俗嬢が、半年前の一度きりの客など覚えている
訳が無い。


俺は懐かしむ気持ちを振り切って車を出した。
球場裏のラブホテル街への、ほんの1分程のドライブ。


重苦しい雰囲気の中、俺は話を切り出す。


「仕事、大変だね」
 「・・・」

「俺ね、実はユキエちゃん初めてじゃないんだ」
 「・・・?」


無言だった彼女は驚いた風に振り向き、俺の横顔をじっと見つめる。


「判らない・・・よね?」
 「・・・(無言で頷く)」

「そりゃ覚えていないだろうね・・・半年以上前に一度相手してもらったんだ」
 「・・・じゃ入りたての頃、かな?」

「それくらいだったね。事務所はまだ2日目だって言ってたもんね」
 「・・・」



何かユキエが言いかけたようだが、車はもうホテルの駐車場に到着した。
サイドブレーキを引き、エンジンを落す。

車を降り、数十分前に出たばかりのホテルのエントランスを再び入る。
他のホテルにしようかとも思ったが、慣れた場所のほうが良いと判断した。

ユキエにとっては何ら関係ない話か。


エントランスの奥にある電光板を眺めると、308号室に空室の表示。
半年前、ユキエと過ごしたあの部屋が偶然空いていた。

運命めいた展開に、俺はその部屋のボタンを押す。
下からキー代わりのカードが出てきた。


俺はそれを引き抜き、ユキエを連れてエレベーターに向かう。


3階に着いたエレベーターから降りて、308号室に入った。

あの狭くて質素な部屋は、やはりあのままだった。


そういえば、半年前のユキエは店のシステムや自分の源氏名さえも覚えていない、
本当にまっさらの新人だった。

乱暴に触れると壊れそうな危うさと、愛に飢えた少女の無垢さ。
切ない記憶が脳裏に次々とよぎる。


彼女は大き目のバッグからコンビニの袋を取り出した。


 「あのさ、晩ご飯食べさせて」


そう言うとユキエは俺が返事する間もなくパンの袋を開け、ペットボトルの蓋を
捻っていた。
ピーナッツバターの小さなコッペパンと、オレンジジュース。

半ば呆れた俺の気持ちを知る由も無く、ユキエは黙々と質素な食事を始めた。


「食事の時間もない程忙しいの?」
 「・・・だって休み時間をくれないんだもん」


客が取った貴重な時間内で身勝手な真似をする。
あの頃と比べて、随分となめた事をするものだ。

しかし無垢で円らな瞳で見つめられると、なぜか強く言えない。


「そういえば、時間やシステムはもう覚えたかい?」
 「・・・」


気を取り直そうとユキエに話しかけるが、ユキエは食事に没頭してか答えない。
気まずい沈黙が308号室の狭い部屋を包み込む。


そんなユキエを見ると、随分と変わった部分がある。

髪の色だけでなく、きっちりと化粧をしていた。
アイラインもしっかり入れ、幼さを消すためか濃い目に仕上げている。

左右の耳たぶには、あの頃には無かったピアス。
両手首には何本ものブランドの違うブレスレット。


 「これね、客が押し付けてくるの」


俺の視線に気付いたのか、ユキエがぶっきらぼうな口調で答えた。


「凄いねぇ。お客さんに人気あるんだ」
 「・・・私のご機嫌取りだって、こんなの」


ユキエを口説き落とそうとプレゼント攻勢を仕掛ける男どもからの貢ぎ物だ。


「でもなぜそんなに何本もしてるの?」
 「・・・だれがどれをくれたのか、覚えてられない。だから全部してる」


贈り手の男からすれば、逢う時には自分のプレゼントを身につけていて欲しいもの。
でも貰った方は誰が誰のものだか憶えているはずもない。

ブレスレッドの中でも、身につけている何本かの中に自分のプレゼントがあると、
客は納得するらしい。
ユキエを問い詰めて嫌われると、元も子もないからだ。

どこかで覚えた、この世界での処世術。



食事が終わり、ユキエは今度は煙草を燻らし一服する。

そうしている間に、時間は刻々と過ぎていく。


俺は気付いていた。
ユキエは時間を明らかに潰している。
いわば、手を抜いているのだ。


「風呂、入ろうよ。時間無いし」
 「そうだ、時間どうする?」

「60分で」
 「・・・」


短い時間に不愉快そうな表情を隠す事無く、
ユキエは携帯を取り出して事務所に電話を入れる。
しかし俺もこんな態度のユキエに対して、長く時間を取る気は無い。
つい30分ほど前まで抱いていたこの娘への懐かしさと温もりは
確実に失せ始めていた。


 「もしもし、ホテルCの308。60」


ぶっきらぼうに言い切るとすぐに二つに折り、バッグに投げ入れる。


「怒ってるの?」
 「・・・ちょっとね」


そういうとユキエは立ち上がり、さっさとその場で服を脱ぎ出した。
下着まで遠慮なく脱ぎ捨て、ためらう事も無く全裸で歩き回る。


風呂場。シャワーを全開で出す。
ユキエは大事な部分だけさっさと洗い、自分から湯船に入った。
あとは自分で洗え、と言う事らしい。

俺も女の態度に不機嫌なまま身体を洗い、湯船に浸かる。


ユキエは俺に背中を向けて、体躯座りをしていた。

その背中は、半年前よりも幾分か肉付きが良くなっていた。
充分な女の色気をかもし出している。

機嫌の悪かった俺でさえ、ついユキエの背中にそそられてしまう。
女の肉体の不思議さだ。


 「・・・ゴメンね、何だか」


唐突に俺に聞こえたあまりに意外な一言は、妄想でも聞き違いでもなかった。



<次号に続く>

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