週末の夜。六本木。
地下鉄の駅から赤坂に向かって歩く。 店々の前に黒人が何人も立っている。
悪趣味だけど男受けするだろうピンク色の 着物を着た女たちも立って チャイナドレスを着た女たちも立って もちろんロングドレスの女も立って なぜか色がすべてピンクで・・・
その前にスーツ姿で 日本の男たちが群がる相変わらずのいつもの夜・・・
10分ぐらい歩くと そこは視界が薄暗い店内。
ソファーに座りラムコークをオーダー。 禁煙席も喫煙席もない。 タバコの煙でなおさら視界が暗い。
20人ぐらいしか入れないジャズのライブバー。 店全体が小さな音楽箱のようで トリオの音が割れるように響く。
耳に響くというより頭に響く。
というよりも、 音の中にカラダごと入っちゃったかんじ・・・
「枯葉ね?」とわたしの肩に手をおいた彼女。 その美しいヴォーカルが歌う。
”ねぇ、ダーリン アナタがとっても恋しくなるのはね 秋の枯葉が散りはじめる頃なの”
歌い終わった彼女の口元に、ふふふ、と低く薄い微笑み。
それは、女が、
別れた男の面影を思い浮かべるときの あの、哀しみと憎しみをこめた微笑みだった。
その薄い微笑みで、よかった、とおもった。
だって、自己憐憫に震える唇で痛く歌われより ずっと、ずっといいじゃない?
それは、
プライベートも何も区別する必要のない職業。 自分を切り売りして生きる仕事。
だから、
自己憐憫する必要なんてないでしょ?
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