2005年06月05日(日)
どこかの殺し屋組織に 所属しているらしい。 あまり幹部とうまくいっておらず、そのうち組織を抜けようと考えた。
そんなときに仕事で殺した男が自分の恩師であったことに ショックを受け(組織が仕向けたらしい)自分を責め、 殺し屋の道から外れ、廃人同様の生活を送る。
そんな絶望した自分のもとに 一人の若い男が唐突に転がり込んでくる。
無口だがナイフの扱いが得意らしく、 同じ殺し屋だと分かったが、 とくに組織に所属していないらしい。
別に困ることも無いと、 その男と一つ屋根の下に暮らし始めた。
お互い好きな時に起きて、寝る。 たまに顔を合わせれば多少の話す程度。
だが、いままで孤独な殺し屋として 生きてきた者にとって 誰かと一緒に暮らす事の生み出す安心が 着実に弱さとして芽生えていた。
そんな矢先、 外出先で何者かの襲撃を受ける。
元殺し屋とはいっても鈍った体では 応戦しきれず、命からがら逃げ戻る。
重症の私に何も聞かず介抱する男に いつしか自分は好意をいだくようになる。
襲撃された日を境に男は 私のベッドからほとんど離れずに生活し始める。
かといって 愛の言葉を囁いたり、抱き合ったりなどはしない。
目が覚めると彼が側にいる。 何もしゃべらない、ただ 側にいる。
どのくらいこの日々が続くのかは、わからない。 けれど「次に襲撃をうけたなら、もう命はない」 それだけは、痛いほどよくわかっていた。
雨が何日か降り続いたある日のこと。
突然、ドアを蹴破る音に飛び起きる、 ベッドから降りようとする私に スッ、と腕をだして「動くな」、と静止する男。
少しの間があり、コチラへ向かってくる靴音。 かかとを引きづった嫌な足音。
足音は私たちの部屋の前で止まる。 緊張する私。
「○○○・・・・久しぶりだなぁ・・」と、 ドアごしに声をかけられてハッとする。 昔、組織にいた時の仲間だと、すぐにわかった。 しかし、そこに懐かしさや歓迎の雰囲気はない。
それは、その男は自分の最後の仕事をした男。 つまり自分を裏切った男だからだ。
ノブが回り、入ってくる裏切り者。 妙な余裕を持ってゆっくりと歩き 部屋の端のある椅子に座る。
開口いちばん、ターゲットとして 私を殺すと裏切り者は言う。
先日の襲撃は自分が指揮をした仕事であり、 私の応戦でどれだけ損失をうけたかを、 ゆらりゆらりと話す。
殺される覚悟は、とうにできていた。
とくに顔色も変えず、 静かに裏切り者の話を聞いていた。
が、ふぃに裏切りも者が “例”の最後の仕事の話を始めた。
第三者のいる状況に慌てる私。 しかも自分が好意を抱いてる男にだ。
「なんで今そんな話を!」と叫んだつもりだったが 突如、よみがえる記憶。 思い出したくも無い数々の感情が溢れ出し、 私はベッドの中で体を縮め 嗚咽することしかできなかった。
それを楽しそうにみている裏切り者。
枕で必死に嗚咽を抑える。 頭の中で裏切り者を殺したい、憎いと思っても 今の自分は無力でどうしようもない。
話すだけ話して、 裏切り者は「それじゃ、また」と言い置いて 下品な笑い声を響かせながら出て行った。
また静寂がもどる、しかしそこに心地よさはなく。 無口な男との気まずい時間が流れた。
私の過去の話について 無口な男は、何も聞いてくることは無かった。
ただ逆にそれは、 私をどこかしらで軽蔑しているから?と 勝手に推測し続ける要因にもなった。
数日後、
裏切り者は約束を守り 襲撃してきた。
しかも ちょうど無口な男が、私から離れた瞬間(スキ)を狙って。
踊りこんでくる刺客たちに、 フラフラながら応戦する。
最後に、死ぬ前に裏切り者に 一矢報いたい! その思いだけで戦った。
だが体力もない深手を負った体では 到底無理な話。
弾丸が利き腕を貫通した。
さすがに動けない。
ここで終わるのか・・・と考えて座り込んだ。
ふと気がつくと 周りが静かだ。
遠くから足音がする、 裏切り者の足音だとわかった。
力を振り絞りベッドにすがりながら立つ。
「そこを、動くな」
ハッと振り返るとナイフを持った 無口な男が近くにいた。
間近で始めてみた男の顔 「あんた、こんな顔してたの?」と力なくつぶやく。
このあたりで意識が朦朧してくる。
裏切り者が言う 「なぜかばう、そんなやつ!」
風景が回りだし意識を失う、私。
気がつくと、 ナイフが裏切り者の首に刺さっている。
驚いて 「これあんたがやったの?」 と、言おうとする私より早く
男は、 「これからはアンタひとりで生きていける。」 と、言い残し
やってきた時とおんなじ格好で、雨の中消えていく
ベッドの上に 残された私は
とても ひどく 孤独だった。
そこで 目が覚めた。
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