夢から覚めて、ふと気付く。 現実に戻ってきたと。 溜息混じりの深呼吸を一つ。 疲れた躰を引きずって。 いつものようにラムゼイルイスをボリュームを上げ流す。 いつものイントロが聞こえてくる。 いつもの朝が始まる。 きっと毎日ウンザリしながら始めるんだ。 デタラメに。
この瞬間にも、この世に 生まれてくる人もいれば、 息絶えてしまう人もいる。 それはこの瞬間に生きているという 実感すらもてない自分への警告。
今、ここに立っているという証明もできずに、 今、あっちにはいないという証明もできずに、 ただ、ぼんやりと浮遊しているようだ。
リアルさを求めているんだ、きっと。 実感して分かること。 分かろうとして、挫ける。 『分かっていることは、本当は分かっていない』
人は年を取りながら成長して行くもんだろう。 僕は年を取りながら成長しているのだろうか? サッパわかんないからね。 ヤッパわかんないからね。
風が吹いたからチョイト乗ってみた。 ああ、あれだった。 きっとそうだった。
押しやって、取り合って。 サッパわかんないからね。 当然わかんないからね。
二十歳になってから月日が経った。 何のための二十歳かは未だよく分かっていない。 大人、大人、と叫んだあの頃に戻りたい。
何に焦がれていたんだろう? 何を待ちわびていたんだろう?
あの頃に夢見たものは今となっては儚く、 遠くどこかへ行ってしまったような、 もう手の届かない所まで行ってしまった。
それを認めたくなくて、 しがみついていたくて、 今ここにいます。
少しずつ年をとりながら、 風を待つことにしました。
青から赤へ点滅を始めた。 誰かが僕を追い抜かし走って渡っていった。 それほどまでして急ぎの用事があるのだろうか? 僕は赤になった信号を眺めつつもそんなことを思った。 皆先を急ぐ。 行き急ぐ。 生き急ぐ。
ふと立ち止まって周りの風景でも見れば いつもとは違う発見ができるかもしれない。 さっき考えていたコトの続きをまた考えるコトもできる。 アイデアが浮かぶかもしれない。 車が横切り、音だけを残して走り去っていく。 反対側で待つ人は大きな欠伸をした。
何気ない日常の数々。 見逃している瞬間に立ち止まったことを誉めたくなった。
赤から青へと信号は変わり、いつもより少し大股で歩いてみた。 白いところだけを辿りながら。 いつも通りの日常へと戻っていった。
雨上がりの空は綺麗だった。 窓を開けてみるともう、夏だった。 去年と同じ匂いだったっけな? 不意に笑みがこぼれてしまいそうな。 けれど少し寂しい気もするような。 繰り返し、繰り返して・・・。
明日も同じ空が見たいだけなのです。
午後九時頃、 夜風に誘われてふと散歩してみた。 蒸し暑いが通りすがる風のおかげで少し和らぐ。
一戸建ての家を通ったとき、子供の笑い声が聞こえた。 それは幸せに満ちていて、 まるで週末の楽しい、家族との団欒。 それが無性に羨ましかった。 私にも過去に存在した時間かもしれない。 しかし、過去なのだ。 居間に集まって皆で楽しい会話。 幸せにあふれるひととき。
私は違う幸せを手に入れた。 それだけで今はいい。
タバコを吸いながら散歩した。 煙は夜空へと消えていった。 街灯は少し先の未来を映し、明日へと照らしてくれる気がした。 確実に歩き出していた。
一つだけ云わせてもらえますか? 私は何も期待してはいませんよ。 何を云われようが、 あなた達の云うコトなんて聞いてはいませんので。
私は親のことを確信犯的に嫌いだ。 感謝はしているが、ありがとうとは言えない。 どうしてか? 私はずっと飛べない鳥だった。 いや、羽を取られた鳥になってしまった。
そして、我慢しながら生きてきた。 何の意味がある? 後悔はしていない。きっとあなた達も気づいていないはず。
私は確信犯的に親のことを嫌っている。 羽をもぎ取ってしまったくせに、生えているよと嘘をついたから。
多分、きっと私は 「人生に絶望しない平和で穏やかな人生であるように」 と、願われつつこの世に生まれてきたのだろう。 しかし私は生まれて来た瞬間にこの世に嫌気がさして 泣きながら誕生した。 それは、この世に生まれて来たくないから、 母親のお腹の中でずっと、安らかに眠っていたかったのだ。 ・・・・・・・・・・・・・きっと。
それがいつの間にか年を重ねていくと同時に忘れていく。 遠い昔のこと。 思い返してはいけないこと。 記憶の隅にさえ置いてはいけないこと。 歩み寄ることが必要なのかな?
目の前にある景色に少し見惚れてしまった。 目の前にある現実とは無関係にして。 跳びたきゃ跳べばいいと。 なんの気兼ねもなしにして、 どんな不安もちょっと置いておいて、 跳びたいと。
|