あいにくの曇り空。
プールには行けないし、さてどうしよう?
5人で考えた結果。
・・・また今週もカラオケ。
カラオケ店の近くにDoCoMoショップがあったから、見てもらう。
直そうと思えば直せるけど、保障期間も過ぎちゃっているし、買ったほうが安いと言われ。
結局ご購入。
カラオケに行って、ダイソーに行って、その後家の前でバドミントン大会をして、まだ5時だったけど夕飯を食べに行って、公園に行ってちょっと遊んで、ハルは帰って行った。
子供たちは、私たちが元通りになったものだと思っている。
実は、単なる友達なんだよ、なんてなかなか言えない。
単なる友達にしては、会いすぎているし、密度も濃いし。
私だって、慣れ親しんだハルといるのは楽だ。
それでも、やっぱり一度壊れてしまったものは、なかなか直せなくて。
難しいなぁって思う。
今は、別れたと言う前提があり。
ハルも私もお互いに、色々な面倒な部分を考えないでいるから、仲良くいられるんだろうなぁとも思う。
これがきっと、またよりを戻すとかになっても。
うまく行くはずはない。
元旦那とも、別れた後の方が仲良しのように。
別れるって事は、悲しいけど。
今はこれでよかったと思ってる。
あのまま、ハルと無理に付き合っていたら。
お互いに、こうして笑顔で会うとか、話すとか。
そう言うの出来ない別れ方になっていたんじゃないか、と思う。
仕事から帰ってきて、夕飯も食べ終えて。
明日は天気が良かったら市営プールに行こうね、なんて会話をしながらの家族団らん中。
次女の携帯に、ハルから着信。
「ママの携帯電源入ってないんだけど、ママは仕事?」
「ママいるよ?」
まだ1年3ヶ月しか使ってないのに、携帯がおかしくなったのに気付いたのは、この電話で。
勝手に電源が落ちてしまう。
ちゃんと充電してあっても。
最近、通話中に急に電源が落ちたりしたのは、電池がなくなったからだと思っていたけど、違ったのか・・・。
ハルからの電話の内容は。
「明日休みになったから、今向かっている」
と言うことで。
子供たちは大喜びだけども、私は微妙。
「明日は天気が良かったらプール行く約束してるの。ハル君も一緒に行こうね!」
・・・マジですか。
九時半くらいにハルは着いて。
夕飯の残りを食べて。
子供たちとゲーム。
・・・やっぱりおかしいって。
「りりか、彼氏と約束あるなら、行ってきてもいいよ」
「別にないけど・・・。おかしくない?」
「単なる友達が遊びに来たと思ってくれればいいよ」
結局ライラのベッドにぎゅうぎゅうになりながら、ライラと二人で寝て。
「友達」と言う部分を、ハルは最近よく強調するけど。
結局、これじゃ今までと一緒。
ただ、キスしたり、エッチしたりがなくなっただけで。
何にも変わってないじゃん。
子供たちと遊びたいって思ってくれてる気持ちは、素直に嬉しいけどね。
それでも、やっぱりおかしいって思ってしまうのは、別れたんだから当然。
しかも、子供たちの父親とか言うわけじゃないし。
そういうの、ちゃんと話さなきゃな。
こういうの、楽しいって思うし、嬉しいけど。
やっぱり、おかしいと強く思ってしまうから。
風邪もすっかりよくなって。
昨日から仕事に行って、普通の毎日。
夕方、仕事帰りに、仕事中の栄と少し会った。
「風邪はよくなったの?」っていうような話をした。
「そういえば、あなたに会うの10日ぶりなんだけど」
最後に会ったのは、送別会だったしね。
その後は、お互いに忙しかったし、栄は社員旅行だったり、私は寝込んでいたり。
「メールだけだったし、誘うにも具合悪かったら、と思ったら誘えなかったし。すごく不安だったよ。離れていったら、どうしようって」
「タイミングが悪かったのね」
「りりかは?寂しくなかった?」
「んー。私は遠距離2年半していたから、なかなか会えない事には慣れていますので(笑)」
「そんなの、慣れるなよ」
栄は仕事中だったから、10分くらい話して、帰って来た。
10日会えなくて、寂しかったかどうか。
そんなこと、考えたことも、思ったこともなかった。
近いから、いつでも会えるって言う安心からか。
遠距離で慣れたせいか。
私の、気持ちの問題か。
なんか、ぐちゃぐちゃ。
今日は、仕事を休んで、病院に行き。
家でおとなしく過ごした。
午後、仕事帰りのハルから電話が来た。
「今日は朝から微熱で、さっきからもう平熱だよ」なんて会話をして。
ハルも、昨日はものすごく心配した、と言った。
「でもね。自分との約束を破ってしまったことが、悲しい」
と言った。
私が大変なときは、絶対にそばにいる。
そう、ハルは別れた後も実行しようとしてくれていたらしい。
でも、昨日それが出来なかった、と言った。
「来てくれようと言う気持ちだけで、十分だよ」
「でも、実際はいけなかった」
「本当に、すごく嬉しかったから、それでいいじゃない」
「でもさ。こんなふうに、仕事帰りに電話したり、何かあったら助けに行くとかって、別れた二人じゃないよね」
「ホントだね」
別れたことは、間違えだったのかな、どう思う?とハルは言った。
私は、どうなんだろう、と言った。
今、そんなこと聞かれても、私は何もいえない。
ただ、分かることは。
別れた今だって、私はハルのこと、特別に思ってるって事。
子供たちとプールに行く約束をしていた。
だから、朝早起きしてお弁当も作った。
でも、喉が痛かった。
熱を計ったら、37度。
・・・。
子供たちは大はしゃぎで支度をしている。
中止になんか、出来ないよね。
ついてから、どんどん具合が悪くなるのが分かって。
しかも昨日と違って天気もすごく良くて。
私は日陰でずっと休んでた。
昼休みのハルからメールが来て。
「あの水着着てるの?」
「着てるけど、水には入ってない。熱っぽいんだよね」
夕方家に着いたときには、すでに限界だった。
子供たちをシャワーに入れて、私は洗濯をして。
熱を恐る恐る計ったら・・・
38度。
寝よう。
そう思って、夕飯はピザを取って寝た。
栄から夕方社員旅行から帰ってきた。お土産渡したいというメールが来た。
とりあえず熱があるからお土産は今度で、と返して。
寝てるのか起きているのか、分からないけど、ぼんやりベッドの中で過ごした。
ハルから「熱はどう?」って電話がかかってきたときは、肺が痛いし、皮膚がチリチリするような、そして浮いているような変な感覚だった。
私の声がおかしい、とハルはしきりに言い。
電話しながら熱を計ったら40度。
「何度?」
「んー・・・40って書いてある」
「お姉ちゃんに替わって」
その後、何かハルがお姉ちゃんに言って、お姉ちゃんは薬局に行き薬を。
次女は近くのコンビニでポカリを買って来てくれた。
そのままやっぱり寝ているのか起きているのか分からないけど、時間が過ぎて行き。
ふわっとするような感じになって。
それが気持ちよかったのを覚えてる。
次に起きたら、病院で点滴中だった。
ハルがこっちに向かってくれようとしたんだけど。
3連休の最終日の夜。
高速も下道も混んでいて。
結局着くのが何時になるか分からないと思い、また私に電話して。
私は寝ていて、お姉ちゃんが出たらしい。
ハルはお姉ちゃんにパパに電話するように言って。
パパが私を病院に運んでくれた。
で、結果が夏風邪だったのと、プールに行って、水にも入らないで炎天下に長時間いたための、熱中症。
「お前は、バカか。プールに連れて行きたかったなら、俺に電話すりゃよかったろ」
って元旦那にも怒られ・・・。
結局その日は点滴だけして、帰宅。
熱はすぐには下がらなくて、やっぱり家に帰っても、寝てるのと起きているのとの、境目の状態だった。
ハルからは何度も何度もメールが来ていて。
私は読むことは出来ても、返す事は出来なくて。
でも、心細いときに、夜中まで一生懸命メールで元気付けてくれていた。
栄からは夜1通。
「寝てたらごめんね。熱はどう?早くよくなってね」
と来てた。
きっと、栄は栄で、心配してくれていて。
寝ていたら悪いと思って、メールをしなかった。
後で栄から聞いたことだけど。
栄は、具合が悪いとき、静かに一人で寝ていたい人で。
メールとかの音とかがだめらしい。
でも、ハルは、何度もメールをしてくれた。
それは、私が寂しいとか心細いとかに、弱いことを知っているから。
そういう時に、一人でいるのが不安だって、知っているから。
ハルに、そういうことを口に出して言ったことはなかった頃から。
ハルは、私のそういう面を、いつも分かってくれていた。
それだけ、私の事を、ずっと見てくれていたって事。
子供たちは実家に行っていていないし。
お天気もそこそこいいし。
洗濯して掃除して、と思って。
まず洗濯機を回し始めたとき。
ハルから電話が来た。
「何してるの?」
「洗濯してるとこ。あなたはお昼から仕事でしょ?もう帰り道?」
「ううん。実は休みになっちゃった」
「そうなの?よかったねぇ」
「うん、んでさ、買い物付き合ってくれない?」
「ええー。洗濯してるんだってば」
「待つからさー」
「買い物って何よ?」
「夏服とか色々。あ、りりかも水着買いたいとか言ってたじゃん」
そいえば、昨日そんな話を他の子達としてたな。
「だから、今から行くから」
って事で、私が洗濯して掃除している間、ゲームしながら待っていたハル。
なんだか変な光景。
昼前に家を出て、ハルの車に。
ハルが「○○でいい?」って言うから、数回しか行った事ないけど、そこに決定。
うちから1時間。
天気はたまに晴れ間も出てきて。
気温はどんどん上がってる。
今日みたいな日はプールに行きたかったね、なんて話も出たり。
最初にお昼をご馳走になって。
水着を選ぼうって話になり。
私より熱心に選んでくれるところなんかは、やっぱり前と一緒。
結局、ハルが「これにしなよ!」って言ったものを着てみて、自分でも気に入ったし、決めようとしたんだけど。
ちょっとお値段が・・・(笑)
他にも見てみるって言って店内を回っている間に、買ってくれてて。
「昨日、よしよししてくれたお礼ね」
って小さい声で言われた。
でも、受け取り辛いなぁって思っていたら。
「てか、これ着て欲しいんだよね。似合ってたし」
とか、大きい声で言う。
店員さんにも「優しい彼氏ですねー」とか言われちゃうし・・・。
それ聞いて、ハルはニヤニヤしてるし・・・。
とにかく恥ずかしくて、立ち去りたい一心で、ハルの手を引いて店を出たんだけど。
そのまま、いつもみたいに指を絡ませて手を繋いでくるから。
ドキッとしちゃって。
手を離そうとしても、ますます強く握られて。
「ハルー。こう言うのは」
「友達としてのデートだけど、今日だけいいじゃん」
結局ハルの服を買いに行って。
時間がまだ早いからって、カラオケに行って。
ハルが「これ、すごくいいんだよ」って「いいわけ」っていう歌を歌ってくれた。
何か、別れの歌なんだけども。
初めて聞いた。
家に着いたのは6時。
私は実家へ、ハルは自宅へ帰る。
帰り際「またね」ってハルは普通に言った。
私も「うん」って普通に手を振った。
「楽しかったね」って言われたから。
「うん」ってやっぱり言った。
ホントに、すごく、楽しかった。
あいつは、いつだって、こうやって最後に「楽しかった」と言う気持ちをくれる。
ホントに、楽しかった。
あなたといるのは、いつだって楽しい。
実家で子供たちとだらだらしていた夜。
ハルから電話が来た。
「もうすぐりりかのところ」
何にも聞いていなかった私は、びっくり。
「どうしたのよ?」
「○○さん(元バイト)たちと飲むんだよ」
「あー。そう言えば、そんな電話があったわ。保留にしてあったけど」
「りりかは来ないの?彼氏?」
「彼氏は今日から社員旅行よ」
「ならおいでよー」
「今実家だしなぁ。喉もちょっと痛いんだよね」
「待ってるから」
久しぶりに集まったメンツ。
3年ぶりって言う人もいたりして。
みんな、私たちが別れたって事は知らなくて。
だからハルが「俺が振っちゃったの」と言った時、すごく驚かれた。
「この二人は安泰だと思ってたけどなぁ」
とかなんとか。
栄から電話が途中来て。
「元バイトたちって、ハル君もいるの?」
って聞かれて、嘘つくのもどうかな、と思い。
「いるよ」
と言った後、少し沈黙してから。
「飲み過ぎちゃだめだよ」
と言われた。
喉が痛いから、今日は飲んでないんだけど。
今日は、元バイトの子の家に泊まるハル。
私を家まで送るって言ってくれて、二人で歩く帰り道。
「さっきの電話、彼氏?」
って聞かれて。
「そうだよ」
って言ったら。
「何か、嫉妬しちゃうよな。する立場じゃないんだけど(笑)」
って言われた。
私も笑っていたら。
「この間は本当にありがとね。あんなに泣いたりして、みっともないけど」
「仕方ないよ。凹んだりする事は、誰にだってあるんだもん」
「でも、りりかの力はすごいなぁって思う。朝はすっきりしてたもん」
「お役に立てて、良かったです」
もうすぐ家の前って言うとき。
ハルが。
「お願いしていい?」
って言ってきた。
「何?」
「大丈夫だよ、って。よしよししてくれない?」
少しびっくりしたし。
冗談かと思ったけど。
真顔でそんなこと言うんだから、きっとまだまだ凹んでいるんだろうなぁと思った。
「いっぱい、頑張ったね。お疲れ様。ハルは、大丈夫だよ」
私より15センチ以上背の高いハルの頭を撫でるのは、何かおかしな感じがした。
ハルは真顔で私のことをずっと見ていて。
だんだん恥ずかしくなって来て。
「こんなもんで良いかしら?(笑)」
とか笑ってごまかした。
家について栄とメールを少しして。
ハルからもメールが来て。
「ありがと。りりかはやっぱり、俺の最愛の人です」
ありがと。
私の中でも、あなたは特別な人だよ。
朝7時ぴったりに。
「おはよう、起きてた?」
ってハルから電話。
「起きてたよ。これから?」
「うん」
「がんばって。あなたなら、大丈夫よ」
「ありがと。何かちょっと自信がわいたかも」
「そか、よかった。ホントに、がんばってね」
午後の休憩のときにメールが来てた。
「緊張して、失敗しちゃって。きっと落ちちゃった」
「発表はまだ先なんでしょ?そんな弱気にならないで」
って返したらすぐに電話が来た。
「だっていつもやっている簡単なことなのに、緊張しちゃって、だめだったんだよ?もう絶対に落ちたよ」
「あなたが緊張するなんて、珍しいね」
「うん・・・何か緊張しちゃって。手も震えちゃったし」
ものすごくへこんでた。
可哀想になっちゃうくらい。
夜電話していい?って言うハルに。
やっぱり「うん、いいよ」って言ってしまう私。
今日くらいは、ね。
甘やかせても、いいよね。
たくさん、疲れちゃったんだし。
思った通り。
ハルはものすごく酔っ払って、電話をしてきて。
そして、たくさん、泣いた。
たぶん、3年半以上知っているけど、こんな泣き方は初めて。
一緒に、ずっとそばにいてください。
とか。
りりかがいないと、何もうまく行かない。
とか。
結婚して欲しいとか、そういうことも言わないから、お願いします。
とか。
とにかく、泣きながら頼まれた。
私は。
「ハル。それは、もう無理だって知ってるよね」
と、冷たいかもしれないけど、そう言った。
ハルのことは、今だって大好きだし。
一生特別だって思う。
だけど、ハルと元に戻るとか、そういうのは、出来ない。
だから、本当は甘えさせるのも、だめ。
これで、最後だ。
「あなたは、まだまだ若いんだから。これから、きっと素敵な人が、現れるよ。あなたを支えてくれる人が、きっとね」
ホントはね、すごく揺れたの。
だって、大好きなんだもん。
でも、同じことの繰り返しだって、思ったの。
栄のことを、これからはちゃんと見て行こうって決めたんだし。
私なんかが、誰かを幸せに出来る、なんて思っていないけど。
でも、今現在、栄は私といると幸せだって言ってくれている。
そう言ってくれている栄を、大事にして行こうって。
でもやっぱり。
人の気持ちなんか、そう簡単に変わらなかったりするんだよ。
昨日は栄の送別会で。
社員主催なので、当たり前だけど上司もいる手前。
そこまで飲めなかったりする。
飲み会中にハルからメールが来た。
「明日は、試験です」
ハルの実家の仕事で必要な、試験の日だった。
ずいぶん前に聞いていたんだけど、忘れてた。
「だから、明日の朝、試験前に電話をしていいですか?」
「良いけど、どうした?」
「がんばってって、言われたい。・・・ってもうりりかに甘えるのはまずいか」
「いいよ。何時くらい?」
「7時くらい。ごめんね」
その後は、なんだか一気にテンションが下がって。
早々に帰ることにした。
栄が「送っていくよ」と言ったけど、主役が抜けるわけにはいかない。
ついたらメールする、と約束をして、店を出た。
ハルは、壁を作る人間で。
ホントに、心を許せるなんて言う人は、家族以外には私くらいしかいない。
弱音や愚痴を、めちゃくちゃ私には言って、当り散らしたりするくせに。
外では何も言わない。
そういえば、前にハルのお父さんが。
「こいつは昔から、内弁慶の外幽霊で」
とか言ってたっけ。
明日のテストがんばってね。
朝、電話待ってます。
栄に「着いたよ。お休み」のメールをした後。
ハルにメールした。
甘えられて、愚痴られて、弱音を吐かれて。
そういうの、全然嫌じゃないけど。
でも、いつまでも私が受け持っていたら、ハルはいつまで経ってもそのままだ。
進めないのは、私のせいだ。
私も、ハルの背中を押さなきゃならない。
突き放す、って言う冷たい言い方になってしまうけど。
今の私が出来るのは、寄りかからせてあげる事じゃないと思うから。
2005年07月09日(土) |
それは、肌寒い、大雨の日。 |
夕方から、土砂降りだった。
栄が実家の仕事をするようになって、もうすぐ1週間。
飲食店と違って、時間がきっちり決まっているのが、いいよね、なんて話を聞いた。
夜はどんなに遅くなっても、私みたいに23時とか24時とか、日付を超えちゃうとか、そんなことはない。
「うちで働けば?接客得意でしょ」
「今の仕事が、好きだからねー」
「給料、今以上に出すって言っても?」
「ちょっと揺れるかも(笑)」
「じゃぁ、出すよ」
「うそうそ。冗談だよ」
「悪い話じゃないと思うけどなぁ。りりかなら、仕事熱心だし」
栄の車の中で、こんな話をして。
明日休みの私は。
「飲みに行く?」
と、栄を誘った。
「子供たちは?」
「明日桃狩りに行くんだって。今日から実家」
「じゃ、行くか」
二人きりで飲みに来るのは、久しぶり。
栄が見つけた、駅前の地下のバーに。
栄の家に車を置き、駅まで徒歩5分。
なのに、私も栄も、傘を差してなかったの!?って言うくらいに、びっしょり。
バーのマスターがタオルを貸してくれて。
「こんな土砂降りの日に、来ていただいたんですから」
と、ワインを一杯ずつご馳走してくれた。
2時間くらい飲んで。
家まで送ってもらう途中。
やっぱり二人ともびっしょりになって。
栄が。
「うちに来ればいいのに」
と、ボソッと言った。
ホント、小さい声で、傘に当たる雨音にかき消されそうだったよ。
私が黙ったまま歩いていたら。
「うちに来いよ。シャワーくらい貸してやる」
今度は大きめの声で。
「行かない」
「何で?警戒してるから?」
「それもある」
「それもって他に何?何もしないって」
「家まですぐそこなのに、わざわざ栄の家に寄る意味が分からない」
「・・・無駄に近すぎるよね」
「ホントにね(笑)」
結局、びっしょりになりながら、栄の家を通り越して。
うちまで送ってもらう。
「今度、遊びに行かせて」
「絶対来る?いつ?」
「近いうちに。ちゃんと掃除してよー」
「わかった。約束ね」
お風呂に入ってから携帯をチェックしたら。
ずいぶん前にハルからメールが来てた。
地下に入っていたから、止まってたんだ。
「昨日、友達の奥さんの友達と、酔った勢いもあって、しちゃいました。何か、すごいつまらなかった。あんなんなら、一生自己処理でいいやーって思っちゃいました。りりかとのエッチはいつだって楽しかった。気持ちの入りようで、全然違うものなんだって、自分でもびっくりです」
なんて返そう。
そう思いながら、気付いたら眠っていた。
ショックじゃないって言ったら、嘘になる。
でも、ショックを受ける自分自身が、よく分からなかったりする。
そんな立場じゃ、ないじゃん。
でも、そんな報告は、いらなかったな。
栄との、最終勤務の日。
お酒を飲むの大好きな栄に、みんなでお酒をプレゼントした。
夜、一人で事務仕事をしていたら。
荷物の整理が終わった栄があいさつに来て。
「これからは、先輩と後輩じゃないからね」
と言い、手を差し出してきた。
私が躊躇していたら。
「この間みたいなことは、しませんよ(笑)」
なんて、見透かされてる。
たまには、一緒に歩いて帰るか。
なんて話になった、蒸し暑い夜。
車を置いていくと、翌日困るんだよね、なんて言いながら。
部長に任された嫌な仕事のとき。
栄と一緒にがんばれって言われて。
二人で組まされたんだった。
私は消極的で。
逃げ出したいくらいに、重たい仕事で。
それでも、栄は私の分まで一生懸命になってくれて。
良かったのか、悪かったのか。
部長に褒められる結果を出せて。
マフラーのこともそう。
誕生日の花束のこともそう。
たった半年余りなのに。
色々なことがあったねぇって、言いながら、徒歩25分の距離を歩いた。
途中。
「手を繋いでもいい?」
って聞かれて。
「うーん、まずいでしょ」
って言う私にお構いなしに、手を握ってきて、すぐ離して。
「ごめん、汗ばんでる。変に緊張しちゃって・・・って三十路カップルなのに(笑)」
「中学生の恋愛みたいね」
「それでいいんだよ。そういう人だから、大事にしたいなぁって思えるんだから」
「そういう人?」
「手を出し辛い人ってこと」
栄と一緒にいると、楽だ。
バツ一同士って言うこともあるし。
年齢が近いこともある。
「負い目がなくて、楽な人と付き合うのが、一番なんだよ。負い目なんかあったら、何にもうまくいかない。りりかが気にしないって思わない限り」
お友達のなーちゃんが言ってた言葉。
私は、今回の喧嘩がなくても、負い目がある限り。
ハルとはうまく行かなかったのだろうか。
あの、暖かい手を、離してしまったことを。
後悔するときが、やってくるんだろうか。
今はまだ、分からないまま。
もしかしたら、一生分からないままなのかも、しれない。
「私から言い出しておいて、何だけど。やっぱり無理だわ」
久しぶりの電話は、相変わらず酔っ払いのハルで。
大事じゃない彼女にも、たまには電話位しなきゃね。
とか平気でいい。
私は、がっくりしてしまった。
そして、冒頭の言葉。
なんだよそれ。
とか、結構色々言われて。
「でも、それでいいよ。俺もここ最近何か苦しかった」
ハルは。
変なところ不器用で。
大事じゃないとかしないとか、本気でそう思っていたわけじゃなくて。
そういう事をいえば、私が「じゃぁ結婚しよう」と言うと思ってたと言った。
だけど、私は言わなくて。
どんどん酷いことを言っている自分に気付いていた、とも言った。
「でも、もういいよね。りりかは、やっぱり俺との結婚は嫌だったって事が分かったから」
「俺との、じゃないよ。私は、今は誰ともしたくないんだもの。このまま何年かしたら分からないけど、今は出来ないんだもん」
「そうか。俺は、一緒にいたかっただけ。いつも一緒にいたかっただけなんだよ。りりかと付き合っていると、いつも不安だったから」
「何が?」
「俺はいつも、この人は俺のことを愛しているのかな?と思ってたよ。俺の考えでは、愛している人と一緒になるのは、当たり前のことだったから。」
大事に出来ていなかったのは、私なんだよね。
ハルの中で、大事するって事は。
結婚するって事で。
私がしないと言うと、大事にされてないって感じてたんだ。
「りりか。例の人と、別れてないんでしょ?次こそ、大事にしなきゃだめだよ。相手が望んでいることを、ちゃんと受け止めてあげなきゃ、だめだよ。与えられるだけの恋愛なんて、存在しないんだから」
ハルは。
いざとなったら、いつだって助けに行くし。
誰にも話せない悩み事とか抱えちゃったら、いつだって聞いてやる。
だから、安心して進んで行っていいよ。
何かあったら「あ、あいつに話せばいいか」くらいに思っててくれれば。
とか、久しぶりに。
本当に、ここ最近では久しぶりに。
ものすごく優しい言葉を言ってくれた。
いつだって。
背中を押してくれてるのは、あなただったね。
いつもの日課の電話。
栄の事を何も聞かれないし。
私からも言い出せないし。
そんな変な、感じで。
酔っ払ったハルは。
「りりかの事を前みたいに、大事に思えなかったりする」
と言った。
「何で?」
「いつも一緒にいれば、そう思えるんだろうけど」
「いつも?」
「そうだよ。結婚すればだよ」
「どうして?」
「結婚を考えている彼女と、単なる彼女じゃ、重みが違うんだよ」
ハルが言いたいことは、分かった。
結局は、同じことだ。
結婚しようって私が言えばいい。
結婚して、一緒に暮らして、仕事も辞めて、毎日家にいて。
言いたい事は分かったけど、触れなかった。
黙ったままだった。
ハルは。
「日課の電話も、あんまり必要ないと思う。そこまで大事にする必要ないと思う」
と、言った。
あんな、大きな喧嘩して、別れるとか別れないとか。
そういう話ばっかりして、元に戻ったんだもの。
違和感があるのは、仕方ない。
そう思おうと思った。
でも、思えなかった。
ハルじゃなきゃ嫌だと思っていた私は、日に日に、どんどん遠くに行ってしまった。
週末が来て。
「休みだったら、どうします?」
とメールしたら。
「たまには、休みだったら家で漫画でも読むかな」
と返ってきた。
結局仕事だったんだけど。
少しずつ、少しずつ。
私はハルとの距離を感じてた。
前なら休みだったらどうする?なんて聞く前に、ハルから「会いに行くね」と言っていたはずだ。
おはようのメールと。
ただいまのメールと。
お休みのメール。
この3往復だけの日が続いている頃だった。
「この人は私のこと、本当に好きなの?」
ハルと付き合っていて、初めて、思った。
栄と一緒の勤務で。
話があるって言ってあったし。
何の事かも、勘付いているだろうし。
それでも栄は、今日も元気だ。
いつも通り、元気に「おはようございます」って言う。
上がった後二人でファミレスに行き。
何から言おうと、考えていると。
「話って、ハルくんでしょ」
って先に切り出され。
切り出すのは私だと思っていたから、かなり動揺してしまう。
栄は、私がいつもハルのことを考えてるって事を知っていたし。
大好きなんだろうなぁと感じてたといった。
だけど。
だからって。
もう会ったりしないとか、そういう事を言わないで欲しい、といった。
後何回かの同勤だけで。
本当に会う機会も減るんだから、と。
職場では。
みんなに好かれていて。
いつもお兄さんで。
面倒見が良くて。
頼れて、気が強くて、優しくて。
弱音なんか吐かないし。
そんな栄が、ものすごい弱気に言うものだから。
へたれな私は、それ以上何も言えなくなった。
この日、ファミレスの駐車場で。
「明日もまた、よろしくね」
って言われて、手を出されて。
握手を求められてると普通に思い、それに応じ。
そのまま引き寄せられて、抱きしめられた。
すごい強い力で。
息苦しかった。
「いなくならないでください」
耳元で言われて。
なぜだか、泣きそうになった。
さぼりすぎちゃったなぁ。
パソコンにあまり向かわなかったし。
忙しかったし。
いろいろあったしで。
ハルとは、仲良くしてます☆
なんて書きたいんだけど。
現実は、そうではないわけで。
結局、あれ以来一度も会ってない。
結婚って、なんだろう。
しなきゃいけないものなのかな?
一度しているから、どんなものか分かっているから、興味がないのかな。
恋人って、なんだろう。
結婚を意識してなくても、大事に思えるよね。
付き合い始めから結婚意識している人の方が少ないだろうし。
ホント、さぼりすぎちゃったせいで。
ずいぶん話が変わってきちゃったんだけど。
時間があるときにでも、ゆっくり埋めていこうかな。
日記、だもんね。
リアルタイムの事じゃないけど、ちゃんと記録を残しておきたいな。
ただ、私が覚えているかどうかが、微妙だわ。
明日は栄の送別会。(@バイト君達主催)
仕事終わるのかしら?
出席できるのかしら?
でも、社員主催がまだあるしね。
せめてどちらか行けたらいいなぁ。
まぁ、行けなくても、徒歩4分の距離(この間栄が計ったらしい)
いつでも会おうと思えば、会えるんだけどね。
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