手にしたから、
失うことを知った。
存在に気づいたから、
挫折を知った。
それなら知らなければいい。
何も知らなければいい。 知らなければいい。
死神よ。 明日なんていらないから、 その鎌を少しだけ貸してくれ。 死神よ。 鎌を一振りして、 世界を書き換えたいんだ。
蜘蛛が空を這い、 カラスが地を歩く、 夕闇の世界を。
今、勇者は剣を持った。
盾なんていらないさ。
逃げ道なんて作らない。
あとは、ほんの少しの勇気だけ。
また一つ花が散った。
それを君は哀しまずにいられるかい?
それともこんな僕を嘲笑うかい?
でもね、
この花は青空に恋をしていたんだよ。
だから、
ほんの少し哀しんであげようよ。
ううん、
お願いだから哀しんでください。
三日月でもない、
満月でもない、
そんな月に、
君は僕の名前をつけた。
そんな今を笑える日が来るのだろうか?
月と星が踊る真夜中に、
善と悪を掌る妖精が、
輝く星を一つずつ消し、
鋭い月で僕を刺した。
天使は哀しみを湛え、
悪魔は喜びを浮かべ、
僕は宙を見つめていただけ。
雑巾の水を絞るように、
出した言葉は、
「忘れてしまおう」
もちろん、叩き壊したさ。
あれ? なんで、ここに居るんだっけ?
そうだ、君を忘れるためだ。 この苦しみを、カモメよ。 おまえに運んでもらうためさ。
さぁ、そろそろ帰ろうかな。 君へのお土産は、潮風だよ。 君は笑ってくれるかな。
あれ? なんで、ここに居るんだっけ?
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