台風が太平洋岸を舐めるように進んだため、京都はさいわいなことに、さしたる被害もなかったようだ。 午後には吹き戻しの風が、むしろ湿気を吹き飛ばすほどに気持がよかった。
書くほうはあまり進んでいない。 しかし幸いなことに、毎月、楽しみにしている京都新聞の「詩歌の本棚」詩集編が読めた。河津聖恵さんが書いておられる新刊詩集の紹介である。
以前にもこの日記に書いたけれど、紹介をしつつ、河津さんの詩に対する考え方が書かれていて、それがいつもぼくを奮い立たせてくれる。 詩を書く、ということへの何よりの励ましとなるのだ。
抜粋して、覚え書きとして残しておこうと思う。
抜粋1 『詩は始めるものではなく、ある日ふいに始まるものだ。 いや、それは日々、すでに始まっている。 クラシックで主旋律の前に前奏があるように。 能において、幕の向こうで登場人物がすでに見えない演技をしているように。 詩人は、苦しくともゆたかに日常を生きつつ、詩という主旋律、 ハレの時間が始まる一瞬を忍耐づよく待っているのだ』
抜粋2 『私たちがこの一瞬を生きることができるのは、それが別の、未来をも越えた、より深い一瞬へ繋がるからだ。 詩人は誰も聴かない前奏曲、誰も見ない舞台を生きる。 世界が星座のごとく調律され、たとえようもない未知の弦が、 おのずからふるえるそのときまで』
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