2007年カンヌ映画祭グランプリに輝いた「殯の森(もがりのもり)」を観た。 チャンネルはNHK−BSHighVision。 カンヌのコンペに出る前から放映は決まっていたという。 幸運だった。
構成はとてもシンプル。ストーリーもシンプル。 ただ「圧倒的な気配」を感じ続けた。 主人公の二人、すなわち認知症の老人シゲキと幼い息子を亡くした介護士マキコが森の中に入ってからは、とにかく感じ続けた。
圧倒的な森の緑。森の精。漂う人の魂。その気配。 河瀬監督は森の選定に徹底的にこだわったという。人工林の混じったものは排除されたそうだけれど、そのことは画面から伝わってくる。 そのことも大きな影響を画面に及ぼしているとおもえた。
目に見えないものをナイーヴに信じたところで、向こう側になにも伝わらないし、こちらになにも届かないかもしれない。 しかし、「繋がった感覚になれるじゃないですか」と河瀬監督は言うのだ。 「あるかないか」よりも重要なのはそのことだとおもう。
そして、目に見えないものとの繋がりを意識しつづけて生きるということは、やはり大事だ、と映画を観ながら、ぼくは確認していたようにおもう。 たとえそれが幻想であっても、生きる質は変わる。 目に見えないものとは何か、端的に言えば人の魂である。
森の「大王」のような巨樹が出現する。その映像が忘れられない。
ちなみに「殯(もがり)」の語源として「喪あがり」が推定されていることを記しておこう。
観ることができて、幸運だった。
|